流動食とは?どんな時に食べる?作り方や種類ごとの特徴を解説
流動食とは、病気の時や手術後などに取り入れられる、胃に負担のかからない食事のことです。本記事では、流動食の種類や作り方、調理の際の注意点などを詳しく解説します。流動食のおすすめレシピも紹介しますので、参考にしてみてください。
流動食とは
流動食とは、固形物を取り除いた流動性のある食事のことです。具なしのスープや重湯のほか、食品を裏ごししたり、ミキサーにかけてペースト状にしたものが流動食として扱われます。ここでは、流動食とはどのような食事なのかを詳しく解説していきます。
流動食の定義
流動食とは「固形物を除去した流動性のある食事」と定義されています。咀しゃくしなくても食べられることに加え、消化がよいこと、刺激が少なく味が淡白であること、口当たりがよいことなども流動食の条件です。
流動食と同じような流動性のある食事に、「ミキサー食」があります。ミキサー食は、消化吸収能力には問題なく、噛んだり飲み込んだりする力が低下した方に適した食事形態です。それに対し流動食は、消化吸収能力の低下にも配慮した食事内容であることがミキサー食との大きな違いとなっています。
流動食の種類
流動食は大きく3種類に分けられます。全種類において、固形の食品を含まないことが前提です。さらに流動性のある食事であることも各種類に共通していますが、それぞれ異なる特徴もあります。ここでは、3種類の流動食について、詳しく解説していきます。
普通流動食とは
普通流動食とは、病院で術後や絶食後の回復期などで通常の食事が食べられない方向けの食事のことです。消化器官を徐々に慣らしていくために必要とされています。主食は重湯で、そのほかに具の入っていないスープや果汁、ポタージュ、牛乳などがあります。通常の食事が摂れない時などに一時的に食べる流動食が、普通流動食です。
また普通流動食は入院中や術後でなくても、咀しゃく機能が低下している場合に家庭で取り入れやすい点も特徴の一つと言えます。
特殊流動食とは
特殊流動食とは、入院中などで病態に合わせて食事療法が必要な方向けに配合された流動食です。大きく分けて3種類の特殊流動食があり、たんぱく質が調整された腎臓病食、脂質が調整された膵炎食、塩分が調整された循環器疾患用があります。
食事療法を目的として作られている特殊流動食は、ドラッグストアやインターネットショップで購入することも可能です。自宅で手作りする場合、ミキサーにかける前の料理でたんぱく質や脂質、塩分量を調整することで、目的となる栄養素のコントロールができます。
特殊流動食を食べる際は、かかりつけの医師や管理栄養士に相談の上、食べる人に合った商品を選びましょう。
濃厚流動食とは
濃厚流動食とは、1mlあたり1kcal以上のエネルギー補給が可能な流動食です。少量で高エネルギーが補給できることに加え、たんぱく質、ビタミン、ミネラルもバランスよく含まれています。病気や介護が必要で、食事から十分な栄養摂取ができない場合に使うことを想定して作られた流動食です。
ただし、濃厚流動食にもデメリットがあります。濃厚流動食は濃度が濃いため、下痢を引き起こす可能性があるのです。。入院中はもちろんですが、自宅で使用する際も医師や管理栄養士に相談のうえ、正しい利用方法を守って使用しましょう。
流動食の作り方
ここでは、流動食の基本的な作り方を主食とおかずに分けて紹介します。
主食の作り方
流動食の主食は、お粥の上澄みである重湯を使うのが一般的です。用意する際には、米粒が入らないよう網でこすと安全な重湯に仕上がります。重湯は水分が少ないと粘度が濃くなって口の中にまとわりつき、誤嚥の危険性があるため、出来上がったらとろみ具合を確認しましょう。
おかずの作り方
流動食のおかずは、健康な方と同じメニューにすることができます。軟らかく煮た野菜に加え、白身魚、卵、豆腐、ゼラチンなどのたんぱく質源も積極的に取り入れるのがおすすめです。脂質の多い料理や肉類は消化吸収に時間がかかり、胃腸への負担となるため控えましょう。
さらに、野菜の皮や繊維、食材を細かくした際に生じる残渣などは網でこして取り除きます。粒が残ると口の中に残り、誤嚥や口内環境の悪化の原因になる場合があるためです。取り除くひと手間が、安全な食事につながります。
流動食を作る際のポイントと注意点
流動食は消化がよく、刺激の少ない料理であることがポイントです。さらに安全に食べるために、流動食を作る際にはいくつかの注意点があります。ここで紹介するポイントを、流動食作りにぜひ役立ててみてください。
栄養バランスを考慮する
流動食では、1食当たりのカロリーやたんぱく質が少なくなりがちです。特に自宅で作る場合、1日3食しっかり食べても必要な栄養素を摂取するのは不可能に近いといえます。そのため、できる限り栄養バランスを整えた食事内容にするよう考慮することが大切です。
また、必要な栄養素を補給するために間食を取り入れたり、補食として市販の流動食を利用するのも健康維持に効果的です。
誤嚥を防ぐ工夫をする
流動食は、嚥下機能が低下した高齢者や病院に入院中の方にとって食べやすい食事ですが、誤嚥の危険がないわけではありません。流動性が強くサラサラした食べ物は口に入れた際に素早く流れ、誤嚥につながる場合があります。流動食でも水溶き片栗粉や市販のとろみ調整剤を使ってある程度の粘度をつけ、誤嚥を防ぐ工夫をするようにしましょう。
盛り付けの工夫で食欲のわくメニューにする
流動食は、すべての食材がミキサーやブレンダーにかけられているため、料理や食材そのものの形を見ることができません。そのため、食べる人は自分が何を食べているのかわからないまま口に運ぶこともあります。
しかし、食事は目で見て楽しむことからも食欲を増進させ、美味しいと感じる効果があります。流動食を作る際には見た目を美しく盛りつけたり、食材の色を残して何を食べているのかイメージできるような工夫をすることも大切です。盛り付けの手間をかけられない場合は、簡単なお品書きなどを添えるのもおすすめの方法です。
市販品も取り入れてマンネリ化を防ぐ
流動食では使用する食材も偏ってくるため、食事のマンネリ化が懸念されます。食事内容に飽きると食欲がわかず食べる量が減り、健康に悪影響です。市販の流動食も上手く活用して、食事内容のマンネリ化を防ぎましょう。
普通流動食のおすすめレシピ
普通流動食は使用する食品に制限がないため、さまざまな料理を楽しむことができます。ここでは、自宅で簡単に作れる普通流動食のレシピを紹介します。
野菜スープ
野菜スープは野菜から出る栄養素がスープに溶けだすため、栄養素をしっかり摂ることができます。裏ごしすることで野菜の繊維を取り除き、適度なとろみつけをすることで誤嚥を予防できます。どのような野菜でも作れるため、作りやすいレシピです。
材料(2人分)
- にんじん 1/4本
- 玉ねぎ 1/4玉
- キャベツ 2枚
- かつお節(だし) 15g
- 水 300ml
- 塩 適量
作り方
- 野菜を一口大に切る
- だし汁に野菜を入れて軟らかくなるまで煮込む
- 野菜を裏ごししてから、スープと一緒にミキサーにかける
- 必要に応じてとろみ剤で粘度を調整する
ブロッコリーの冷製ポタージュスープ
ポタージュスープは牛乳を使うことで手軽にたんぱく質も摂取できるメニューです。冷製スープにすると口当たりも良く、食欲のない時でも食べやすくなります。ブロッコリーの代わりに、カボチャやトウモロコシなどの食品でも作れます。
材料(2人)
- ブロッコリー 1/2個
- 玉ねぎ 1/2玉
- 塩こしょう 適量
- A)牛乳 400ml
- A)固形コンソメ 2個
- A)バター 小さじ2
- A)はちみつ 小さじ2
- 生クリーム お好みで
作り方
- 野菜を一口大に切る
- バターを炒めたフライパンでブロッコリーと玉ねぎを炒める
- しんなりしてきたら(A)を加える
- かき混ぜながら中火で20分程度加熱する
- よく冷ましてからミキサーにかける
マグロ丼
病院食のイメージが強い流動食ですが、健康な方と同じようにマグロ丼も食べることができます。マグロをサーモンに変えることも可能です。丼ものの作り方でポイントは、盛り付けを美しく見せることです。
材料(1人分)
- マグロの刺身 100g
- A)醤油 大さじ1/2
- A)みりん 大さじ1
- A)酒 大さじ1
- だし汁 200ml
作り方
- (A)の調味料とだし汁を鍋に入れ、一煮立ちさせて冷ます
- マグロをミキサーにかけて潰す
- ②に①の調味液を加え、さらにミキサーにかける
- 網でこして固形物を取り除く
- 必要に応じてとろみ剤で粘度を調整する
- 重湯の上にきれいにのせて完成
白桃スムージー
流動食にはデザートもあります。特に、フルーツと牛乳を使ったスムージーは栄養補給にもなるため補食にもおすすめです。バナナやイチゴなど、どのような種類のフルーツでも代用可能です。
材料(1人分)
- 白桃 1個(缶詰の桃2切れでも可)
- 牛乳 100ml
- 水 100ml
- 砂糖 お好みで
作り方
- 白桃を一口大にカットし、冷凍庫で凍らせる
- 凍らせた白桃、牛乳、水、砂糖をミキサーにかける
- 必要に応じてとろみ剤で粘度を調整する
体調に合った流動食を上手く取り入れて、食事を楽しみましょう
この記事のまとめ
- 流動食とは、咀しゃく機能が低下した方向けの流動性のある食事で、消化吸収もよい
- 一般的な普通流動食のほかに、食事療法を兼ねた特殊流動食や効率的な栄養補給ができる濃厚流動食などがある
- 流動食を作る際は、食品の粒や残渣が残らないよう十分注意する必要がある
- 手作り流動食だけでは栄養不足になる場合が多く、補食や市販品の利用と合わせて栄養を補給する
- 流動食でも、誤嚥予防には十分に配慮して提供する
咀しゃく機能が低下しても、口から食事を摂ることは健康維持のために重要な役割を果たします。流動食を上手に利用して、食べる喜びを感じながら食事を楽しみましょう。