線香をあげる意味とは?作法・マナー・香りの種類・宗派による違いも紹介
仏壇やお墓にあげることで馴染みのある線香ですが、線香にはどのような意味があるのかご存知ですか?本記事では、線香をあげる意味を中心に、作法やマナー、香りの種類などを詳しく紹介します。線香をあげる意味を深く知り、法要やお墓参りの際に参考にしてください。
線香の由来
線香は本来、お香として誕生し、後に線香として定着しました。お香は、紀元前や古代エジプトの時代から神事で用いられてきたといわれています。
また仏教誕生の地であるインドは多くの香木の産地で、高温による腐敗臭を和らげるために線香を活用していました。また香りは心身ともに落ちつかせてくれることも、お供えする理由の一つでした。そして仏教の伝来とともに、日本にも線香が広まりました。
線香をあげる4つの意味
線香には明確な意味が込められているものです。仏教の教えではどのような役割があるのか、線香をあげる4つの意味を解説します。
①線香の香りが浄土への道しるべとなるため
線香の香りは、故人が浄土へ旅する際の道しるべとなるといわれています。宗派によって考えが異なりますが、故人は亡くなってから四十九日までは冥土を旅して、審判を経て仏になるとされています。線香を焚いて香りを送ることで、故人が無事に浄土へ辿りつくよう手助けをする意味があると考えてよいでしょう。
四十九日までの間に仏壇に向かう機会がある際は、故人の冥福を願う意味も込めて線香をあげることを意識してみてください。
②穢れを清める役割があるため
線香の香りや煙には、故人の俗世での穢れを清める役割があると考えられています。俗世でまとった邪気や穢れを落とすことで、清らかな状態で浄土へ向かえるのです。
線香に身を清める意味があるのは、現世でも共通しています。お寺での参拝の前に線香をあげる場合、香りや煙によって穢れを落とすという意味があります。
③仏様との繋がりを保つため
煙が空に向かっていく姿から、仏様との繋がりを保つことも線香の役割の一つです。煙によって仏様と心を通わせたり、仏様との対話の助けとなったりします。また、仏教を信仰する信者の願いが、煙によって仏様に届けられるともいわれています。
線香の香りによって心身が整い、より仏様と向き合いやすくなるという意味もあります。
④線香の香りが仏様や故人の食べ物となるため
香食(こうじき)といって、線香の香りは仏様や故人の食べ物となる点も重要な意味の一つといえます。仏教の宗派によって細かな違いはありますが、故人は亡くなってから四十九日まで冥土を旅します。旅路で食べ物に困らないよう、線香の香りを届けて故人が浄土へ辿り着けるよう願う教えがあるのです。
宗派によっては四十九日までの間は線香を絶やさず焚く場合もあり、仏具の中でもひときわ重要な役割を果たしています。
線香をあげる時の作法
葬儀や仏壇、お墓参りなど、線香をあげる機会は多いでしょう。ここでは、場面別に線香のあげ方を紹介します。
弔問先での線香のあげ方の流れ
一弔問先の仏壇への線香のあげ方は、以下の手順です。
弔問先での線香のあげ方の流れ
- 仏壇の正面に正座する
- ご遺族と仏壇の仏様に一礼
- ろうそくに火を灯し、線香に移す
- 手で仰いで線香の火を消す
- 線香を香炉に立てる
- 合掌して一礼
- 仏壇に一礼
仏教の多くの宗派に共通する点として、線香の火はろうそくから取るのがマナーといわれています。宗派によって線香を寝かせたり本数が異なったりするため、気になる方はご喪家に確認してから線香をあげるとよいでしょう。
仏壇への線香のあげ方
自宅の仏壇へ線香をあげる場合は、以下の手順で行うのが一般的です。
仏壇への線香のあげ方の流れ
- 仏壇の正面に正座する
- 仏壇の仏様に一礼
- ろうそくに火を灯し、線香に移す
- 手で仰いで線香の火を消す
- 線香を香炉に立てる
- 合掌して一礼
- 遺影に向かって一礼
自宅で仏壇へ線香をあげる場合も、弔問先での焼香方法と流れは似ています。弔問先ではご遺族にも一礼しますが、自宅では不要です。故人の遺影に向かって一礼し、弔いの気持ちを伝えてください。
お墓参りでの線香のあげ方
お墓参りで線香をあげる際は、以下の手順を参考にしてください。
お墓参りでの線香のあげ方の流れ
- ろうそくに火を灯し、線香に移す
- 手で仰いで線香の火を消す
- 線香を立てる
- 合掌して一礼
お墓参りでは水で墓石を清めたのち、お供えをしてから線香をあげます。複数人で出向く場合は、遺族、親族、友人と故人との関係が深い順に線香をあげましょう。
お墓参りでの線香のあげ方も、宗派や地域によって細かく違いがあります。一般的な流れを踏まえつつ、各家庭で作法を確認してから線香をあげてください。
仏壇で線香をあげる時の注意点やマナー
線香のあげ方には、守っておきたい注意点やマナーがあります。ご遺族や故人へ丁寧に弔意を伝えられるよう、線香に関する一般的な作法を踏まえて弔問しましょう。
火はろうそくから取る
線香をあげる際の火は、ろうそくから取るのが仏教の作法です。仏壇に供えるろうそくの火は、仏様の慈悲と智慧を表しています。多くの宗派に共通して仏様との繋がりがあるろうそくから線香の火を取る決まりがあるため、マッチやライターでら直接火を付けないよう注意しましょう。
線香の火は手で仰いで消す
仏教では息は不浄なものとする教えがあるため、線香の火は手で仰いで消すのが一般的です。
仰いでも線香の火が消えない場合は、線香を振って消してもマナー違反とはなりません。線香の火を消す仏具が用意してあれば、状況に応じて使用しましょう。
宗派によって作法が異なる
線香の本数や立てる位置などは、宗派によって異なる場合があるため注意してください。
宗派による線香の作法の違い
- 浄土真宗本願寺派・大谷派:1~2本の線香を真ん中で折り、火を灯して香炉へ寝かせる
- 天台宗と真言宗:線香を3本持ち、香炉の手前側に1本、仏壇側に2本と逆三角形の形に線香を立てる
各宗派の作法に添った焼香方法を知っておくと、よりご遺族への配慮となるため学んでおいてもよいでしょう。
線香の香りの種類と選び方
ここでは、線香の香りの種類と、仏壇に使用する場合の選び方を紹介します。
線香の香りは2種類
線香の香りの種類は、主に2種類に分けられます。
杉線香
杉線香とは、杉を原料に作られている線香を指します。煙の量が多い燃え方が特徴で、主にお墓参りなどの屋外で使用されることが多いです。自然な杉の香りで、リラックスグッズとしても人気です。
匂い線香
匂い線香は、樹木の一種である椨(たぶ)の樹の粉末を基材として各種の香木・香料を混ぜて作ります。匂い線香は炭や香木や白檀などの調合によってさまざまな香りを楽しめるのが特徴です。杉線香に比べて煙の量が少なく、弔事用からリラックスグッズまで幅広く使用されています。
仏壇にあげる線香の選び方
仏壇にあげる用途の線香は、以下3つのポイントで選びましょう。
①匂い線香を選ぶ
仏壇にあげる線香は、匂い線香を選ぶのが一般的です。匂い線香は煙の量が少ないため、室内での使用に向いています。仏壇用の匂い線香は商品数が多く、香りのバリエーションが豊富です。
②短寸を選ぶ
仏壇に線香をあげる際は、短寸のものを選ぶのがおすすめです。短寸とは、長さが15センチ前後の短い線香のことです。家庭の仏壇に合うサイズで、30分ほどで消える長さで作られています。日常では短寸の線香を使用し、お墓参りでは長寸の線香を使用するなど使い分けるとよいでしょう。
③煙が少ないものを選ぶ
必要以上に家の中に煙が充満しないよう、仏壇には煙が少ない線香が適しています。匂い線香の中でも、炭を多く配合したものは煙の量が抑えられており、仏壇用として適しているといえるでしょう。仏壇用の線香はメーカーによってさまざまな種類があるため、特徴をよく見て選んでください。
線香をあげる意味や作法を理解して故人を弔いましょう
この記事のまとめ
- 線香には、仏様との繋がりを保ったり穢れを清める意味がある
- 線香の香りは故人の食べ物であり、浄土への道しるべの意味もある
- 線香をあげる際の作法は、宗派によって異なる
- 線香の火はろうそくから取り、手で仰いで消すのがマナーとされている
- 線香の種類は、杉線香と匂い線香の2種類がある
- 仏壇用の線香は短寸で煙が少ない匂い線香がよい
仏教での線香には仏様との繋がりを保ったり、故人が浄土に行くための手助けをしたりと大切な意味や役割があります。宗派によって線香をあげる際の作法に違いがありますが、故人を弔うための目的や意味合いは共通です。
線香のあげ方が分からなくても最低限のマナーを守り、故人への弔いの気持ちがあれば問題ありません。線香をあげる意味を正しく理解し、故人の冥福を願いましょう。