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再雇用で給与が下がる理由は?定年退職後と前の待遇の違いや活用できる給付金制度を紹介

再雇用で給与が下がる理由は?定年退職後と前の待遇の違いや活用できる給付金制度を紹介

定年後も引き続き会社に再雇用された際、給与が下がってしまうのではないかと不安に思っている方もいるでしょう。実際に再雇用後に給与が下がってしまった事例は、珍しくありません。本記事では、再雇用で給与が下がる理由や下がった分を補填できる制度について解説します。

監修者 SUPERVISOR
AFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、行政書士 森本 由紀

神戸大学法学部卒業。鉄鋼メーカー、特許事務所、法律事務所で勤務した後、2012年に行政書士ゆらこ事務所を設立し独立。メインは離婚業務。離婚を考える人に手続きの仕方やお金のことまで幅広いサポートを提供。法律・マネー系サイトでの執筆・監修業務も幅広く担当。

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定年後の再雇用では給与が下がる傾向にある

高年齢者雇用安定法により、60歳で定年になった後も、希望すれば65歳まで再雇用制度を利用して働くことができます。ところで、定年後に再雇用制度を利用した場合、多くの方が直面するのは定年前よりも給与が下がる問題です。

「独立行政法人労働政策研究・研修機構 「高年齢者の雇用に関する調査」 (企業調査)」(2019年) 【速報値】」によると、60歳直前の給与を100とした場合、61歳時点の給与水準は78.7(平均値)に下がると発表されています。つまり、再雇用後は約20%給与が下がる計算になります。

定年後に給与が下がることは決して珍しいことではないため、下がることを想定して対策する必要があります。

高年齢者の雇用に関する調査(企業調査)|独立行政法人労働政策研究・研修機構

再雇用された場合の給与の相場

厚生労働省が調査した「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、60~64歳の平均賃金は約29.5万円で、65〜69歳までが約25.7万円です。55〜59歳までの平均賃金が37万円だったことを考慮すると、60歳以降で給与が下がることが分かります。

調査結果は平均賃金のため実際の給与と差がありますが、月額25~30万円が相場と考えておくとよいでしょう。

令和4年賃金構造基本統計調査の概況

大幅の給与減は違法の可能性も

再雇用後は非正規雇用となり、給与が下がることが多くなります。正社員と比べて不相当に低い給与となる場合は「同一労働同一賃金の原則」により違法に当たる可能性があります。

定年後に給与が大きく引き下げられた社員が、企業を訴える裁判を起こしている例もあります。合理的な理由がないのに大幅に給与が下がる場合は、企業側と交渉してみる余地があるといえるでしょう。

再雇用前後での待遇の違い

定年前と再雇用後では、雇用形態や仕事内容などの待遇に違いが生じる場合があります。ここからは、再雇用後に起こりがちな待遇の違いを解説します。

雇用形態

定年前は正社員で働いていた場合でも、再雇用された際には雇用形態が変更される可能性があります。よくある事例としては、契約社員やパートに変わることです。

再雇用制度では「定年前と同じ雇用形態でなければならない」といったルールはありません。そのため、会社都合で雇用形態を変えられます。定年後の雇用形態を知りたい方は、お勤めの会社の就業規則を確認してみましょう。

仕事内容

再雇用後は仕事内容が変わる可能性があります。責任の重い業務から離れたり、業務量が少なくなったりすることも珍しくありません。これは定年後に役職から降りることも影響しています。

とはいえ、定年前と大幅に仕事内容が変わり、経験や知識がまったく活かせないという事例は稀です。そのため、ある程度は定年前と近い働き方ができると考えてよいでしょう。

有給休暇

再雇用後は定年前からの勤務年数を通算した有給休暇が付与されます。

また、定年前に付与された未消化の年次有給休暇についても、再雇用後に繰り越すことができます。これは正社員からパートになった場合でも同様です。

ただし、定年退職日と再雇用日との間に相当期間が存在し、客観的に労働関係が切れている状態があったと認められる場合は、有給休暇は繰り越せません。

再雇用で給与が下がる理由

再雇用後に給与が下がる理由は、いくつか存在します。納得した働き方を選択するためにも、よくある事例を確認しましょう。

給与形態が変わるため

再雇用後に給与が下がる理由の一つは、雇用形態が変わり、それに伴い給与形態が変わることです。

たとえば、再雇用をきっかけに正社員からパートに雇用形態が変動した場合、給与形態が月給制から時給制に変わることは珍しくありません。時給制になると働いた時間分の給与しか支払われないため、勤務日数や時間によっては給与が下がる可能性があります。

ボーナスの支給対象外になるため

再雇用後はボーナスの支給対象外になることも珍しくありません。多くの企業ではボーナスの支給対象者は正規雇用の社員のみであるため、雇用形態が代わって非正規雇用になるとボーナスが支給されなくなります。

その結果、100万円単位で年収が下がることもあります。定年退職前のボーナスの支給額が多かった方ほど、ボーナスがなくなった時の影響は大きいでしょう。再雇用後のボーナスの有無は年収が下がる大きな要因につながるため、あらかじめ確認しておきましょう。

役職手当が支給されなくなるため

再雇用で役職を外れた場合は、役職手当が支給されなくなります。その結果、役職手当分の給与が減ってしまうのです。役職手当は、企業の給与規定や役職のランクによって異なりますが、定年前のベテラン社員であれば、給与が大きく減る要因となることも珍しくありません。

定年退職後に役職から降りることが分かっている場合は、役職手当が付かない手取りの金額で収入を計算しましょう。

再雇用後に下がった給与を補填する給付金制度

再雇用後に給与が下がる場合の救済措置として、給付金制度があります。下がった分の給与を補填できる制度には「高年齢雇用継続給付」が存在します。ここでは、支給条件や給付額などを紹介していきます。

高年齢雇用継続給付

高年齢雇用継続給付は、定年前と比べて賃金が75%未満に低下した人に対し、雇用保険から給付金が支給される制度です。60歳以上65歳未満で、雇用保険に加入していた期間が5年以上ある方が対象となります。給付金の支給額は、上限で賃金の15%です。

高年齢雇用継続給付には、再雇用の場合に利用できる「高年齢雇用継続基本給付金 」と再就職の場合に利用できる「高年齢再就職給付金」の2種類があります。ここでは、違いを簡単に比較していきます。

再雇用の場合は「高年齢雇用継続基本給付金 」

定年後にもとの企業に再雇用された場合に利用できるのが「高年齢雇用継続基本給付金 」です。こちらは、60歳以降の給与が60歳前の給与の75%未満になっている方が対象となります。

「高年齢雇用継続基本給付金 」の支給期間は、60歳に達する月から65歳に達する月までです。

再就職の場合は「高年齢再就職給付金」

もとの会社を定年退職して60歳以降に失業保険を受給し、再就職した場合に利用できるのが「高年齢再就職給付金」です。こちらは再就職後の給与が75%未満に下がる場合に適用されます。再就職先は1年以上継続して雇用されることが見込まれる、安定した職に限ります。

「高年齢再就職給付金」の給付期間は、再就職の前日時点の失業保険の支給残日数に応じて決定します。失業保険の支給残日数が200日以上の場合は受給資格発生から2年、100日以上200日未満の場合は受給資格発生から1年です。

再就職した場合、雇用保険から再就職手当をもらうこともできます。再就職手当と高年齢再就職給付金は併給できないため、どちらかを選ぶ必要があります。

高年齢雇用継続給付の支給要件

高年齢雇用継続給付の支給要件は「高年齢雇用継続基本給付金 」と「高年齢再就職給付金」で異なります。高年齢雇用継続給付を受給するには、原則的に会社を通じてハローワークに申請する必要があります。以下に該当する方は、会社に相談しましょう。

高年齢雇用継続基本給付金の支給条件

  • 基本手当(失業保険)や再就職手当を受給していない
  • 60歳以上65歳未満で雇用保険の一般被保険者である
  • 雇用保険の被保険者期間が5年以上ある
  • 60歳時点と60歳以降の給与を比較した時に75%未満に下がる

高年齢再就職給付金の支給条件

  • 基本手当(失業保険)を受給していた
  • 60歳以上65歳未満で雇用保険の一般被保険者である
  • 60歳以降に再就職した
  • 基本手当の算定基礎期間が5年以上ある
  • 再就職した日の前日における基本手当の支給残日数が100日以上ある
  • 1年以上継続して雇用されることが見込まれる安定した職に就いた
  • 同一の就職について再就職手当の支給を受けていない
  • 再就職後の月額賃金が、基本手当の基準となった賃金日額を30倍した金額の75%未満になる

高年齢雇用継続給付の給付額

高年齢雇用継続給付の支給額は、支給対象月に支払われた賃金に支給率をかけて計算します。支給率は賃金の低下率によって決定します。低下率は「支給対象月に支払われた賃金額/60歳到達時の賃金月額×100」で算出されます。低下率に対応する支給率は、厚生労働省の早見表を見ると計算しやすいでしょう。

早見表によると、低下率が61%以下の場合は15%、70%の場合は4.67%、74.5%の場合は0.44%となっています。低下率が75%以上の場合は支給対象外です。

高年齢雇用継続給付支給率・支給額早見表

高年齢雇用継続給付は廃止になる

高年齢雇用継続給付は段階的に縮小し、最終的には廃止されることが決定しています。理由としては、企業に65歳までの雇用確保が義務付けられたことと、同一労働同一賃金の法整備が強化されて、高齢労働者を含めすべての労働者に公正な待遇が期待できるようになったことなどが挙げられます。

高年齢雇用継続給付の縮小開始時期は2025年4月です。2025年度に60歳に到達する人から支給率の上限が10%に縮小され、以降段階的に廃止される予定です。

再雇用で給与が下がる場合の対処法

再雇用で給与が下がることを避けられない場合は、あらかじめ対応策を考える必要があります。給与が下がった場合でも豊かに暮らせるように、働き方や暮らし方を見直しましょう。

転職を検討する

再雇用で手取りが下がる場合は、転職するのも一つの方法です。ハローワークやシルバー人材サービスでは、60歳以降の高齢者向けの求人を紹介しています。再雇用の場合は給与や働き方を従業員側が決定するのは難しいですが、転職であれば給与や働き方などは自分の意思で選択できます。

転職を視野に入れている場合は、定年後も働く目的や希望の働き方を明確にしておくと求人案件を選びやすくなるでしょう。

副業を始める

副業が許可されている企業に勤めている場合は、再雇用で給与が下がる分を副業で補填する方法があります。本業の合間に副業を始めれば、手取りを増やすことができます。

近年では、クラウドソーシングサービスで副業案件を見つけられるため、身近に仕事を紹介してくれる人がいなくても簡単に副業案件を受注可能です。ライティングや入力作業など未経験でも取り組みやすい案件もあります。給与が下がることが想定される方は副業を始めてみてはいかがでしょうか。

資産運用を行う

定年後は資産運用を行うことも一つの方法です。資産運用のみで手取りが下がる分全てを補填するのは難しいですが、適切に運用できれば貯蓄の切り崩しを減らせるでしょう。

資産運用には、NISAや投資信託などさまざまな種類があります。高齢者が始めるならリスクが小さく、効率的に増やせる方法がおすすめです。ただし、高齢者を狙った投資詐欺なども横行しています。プロに全部任せるだけでなく、自分でも投資先を調べながら運用することが大切です。

固定費を見直す

定年後に給与が下がる場合は、支出を減らすために固定費を見直すことがおすすめです。具体的には、家賃の低いアパートに引っ越す、スマートフォンの料金や車の保険料を見直すといった方法があります。

月々の固定費を見直してみると、無駄に支払っていたものがあったと気付くこともあります。無理なく節約するためにも、固定費を見直してみましょう。

再雇用後に給与が下がることも想定して対策をしましょう

この記事のまとめ

  • 定年後の再雇用は給与が下がる傾向にある
  • 60歳以降の平均賃金から算出した再雇用後の給与は月額25~30万円
  • 雇用形態の変更に伴い給与形態が変わり、給与が下がる場合がある
  • ボーナスや役職手当の支給対象外になることも給与が下がる原因になる
  • 再雇用で給与が下がる場合は、給付金制度で補填できることがある
  • 給与が下がる場合の対処法として、転職・副業・資産運用などが挙げられる

定年後に再雇用制度により継続して勤務する場合には、定年前よりも給与が下がることは珍しくありません。そのため再雇用後に焦らないよう、あらかじめ給与が下がることを想定した対策を考えておくとよいでしょう。

給与が下がる分を補填できる給付金制度を活用しつつ、納得できる働き方を実現させましょう。

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