直葬とは?葬儀の内容・流れから必要な費用や選ばれる理由などを解説

葬儀形式はさまざまな種類があり、それぞれの故人やご遺族に合わせた葬儀を送れるようになっていますが、火葬のみを行う直葬を選択することもできます。しかし、「直葬について聞いたことはあるけれど、詳しく分からない」という方も多いのではないでしょうか?そこでこの記事では、直葬の内容や流れ、費用を詳しく解説します。
直葬とは?

直葬とは、お通夜・葬儀式・告別式のすべてを執り行わず、火葬のみを行うことを言います。一般的な葬儀と同様、直葬の場合も葬儀社に依頼して執り行うのが一般的です。
ただし、葬儀の準備を減らしたい場合や、宗教的儀式を一切執り行わない場合は、葬儀社に依頼せずご遺族のみで直葬を行う場合もあります。
直葬の参列者は、基本的にご遺族や親族、故人と親しい友人ですが、ご遺族のみで行うことも少なくありません。
直葬が選ばれる理由

一般的な葬儀を執り行わない直葬は、どのような理由で選ばれるのでしょうか?
故人の意向
残された遺族に負担をかけたくないことから、故人が亡くなる前に「直葬にして欲しい」と意向を示されている場合があります。葬儀の費用は高額になることが多いため、遺族の金銭的な負担を軽減したい配慮からでしょう。
また、直葬は、葬儀の準備や参列者への挨拶、葬儀後の香典返しなどの手間を省けるため、遺族の精神的な負担も軽減できます。
遺族や参列者の高齢化により身体に負担をかけないため
近年、高齢化が進んでいることから、ご遺族や参列者も高齢である場合が多いです。そのため、長い時間を要する葬儀式・告別式に参列することが体力的に辛いと感じる方も少なくありません。その結果、一般的な葬儀と比べて短時間で終わる直葬が選ばれるのでしょう。
核家族化や地域の人との関係性の希薄化で参列者が少ない
核家族化によって離れて暮らす家族が増え、親戚付き合いが減りつつあることや、地域の方との関わりも少なくなっているなどの理由で、葬儀の参列者は減少傾向にあります。このようなことから、葬儀を簡略化した直葬を選ぶ方が増えているようです。
無宗教で僧侶を依頼する必要がない
直葬は火葬場で僧侶に読経してもらう場合も多いですが、必ずしも僧侶の手配をしなければならないものではありません。そのため、無宗教の場合は宗教的儀式を執り行う必要性がないと考える方もおり、僧侶を依頼しなくてもよい直葬を希望する方がいらっしゃいます。
直葬のメリット・デメリット

直葬は一般的な葬儀を執り行わないため、先述した直葬が選ばれる理由を踏まえた上で、メリット・デメリットについて理解しておいた方がよいでしょう。
メリット
経済的負担を最小限に抑えられる
直葬は葬儀にかかる費用が少ないため、経済的負担を最小限に抑えられるでしょう。葬儀場利用費や葬祭用品の一部、飲食接待費などの費用が必要ないため、いくつかある葬儀形式の中でも直葬は最も金額を抑えられる葬儀です。
手間や時間が少なくすむ
一般的な葬儀は2日間に渡って執り行われるのに対して、直葬は1日で終わります。また、葬儀のための準備が少ないため、手間と時間の両方を減らせるでしょう。さらに、参列者への挨拶や対応も少なくすむため、忙しい方には大きなメリットになります。
香典返しやお手伝いくださった人への挨拶回りが不要
直葬は、お通夜や葬儀式・告別式を執り行わないため、香典をいただいたり葬儀の手伝いをしていただくことがありません。
そのため、一般的な葬儀後の香典返しやお手伝いくださった方への挨拶回りなど不要になることが多いです。
デメリット
故人とのお別れの時間が短い
直葬は、一般的な葬儀と比べて故人とのお別れの時間が短いです。一般的な葬儀では、お通夜や葬儀式・告別式の間に、故人に焼香をして冥福を祈る機会があります。
しかし、直葬ではこのような葬儀の儀式を省くため、故人とのお別れの時間が短いと感じるかもしれません。
親族の理解を得にくい場合がある
お通夜や葬儀式・告別式を一切執り行わない直葬は、親族の理解を得にくい場合があります。地域によっては、宗教的儀式を全く執り行わないことが故人に対して失礼にあたると思う方がいるかもしれません。
そのため、直葬を執り行う前に親族への相談が必要になるでしょう。その後のトラブルに発展しないように、きちんとした理解を得ることが大切です。
自宅への弔問客が増える場合がある
直葬はごく少人数の近親者のみで執り行われるため、一般参列者は基本的には直葬に出席することはありません。そのため、直葬が終わってからご不幸を知った方が自宅へ弔問に訪れる場合があります。
直葬で葬儀の手間を軽減したつもりでも、一般葬を執り行うより弔問客への対応で手間が増えてしまうかもしれません。
直葬の内容・日程の流れ

ここまで、直葬はお通夜や葬儀式・告別式を執り行わないことを説明してきましたが、直葬の内容は実際にどのようなものなのでしょうか?ここからは、直葬の内容や日程の流れを詳しく解説します。
直葬の日程の流れ
- ご臨終
- 安置場所へ搬送
- 葬儀社と打ち合わせ
- 訃報連絡
- 納棺・出棺
- 読経・焼香・火葬
- 骨上げ
①ご臨終
病院でご臨終を迎えた場合、担当医師に「死亡診断書」の発行を依頼します。基本的な手続きは病院が行ってくれるため、病院スタッフの指示に従うようにしましょう。
亡くなった後は、病室にいるご遺族と医師や看護師で、割り箸に挟んだガーゼや脱脂綿に茶碗の水を含ませ、故人の唇を潤す儀式の「末期の水(まつごのみず)」を行います。その後、病院のスタッフによってエンゼルケアというご遺体に施す死後処理が行われます。この間に遺族は葬儀社へ連絡し、ご遺体の搬送を依頼するようにしましょう。エンゼルケアが終わると霊安室に移されますが、スペースに限りがあるため、早めに安置場所へ搬送しなければなりません。
一方、自宅で亡くなった場合は、主治医を呼ぶか救急車でご遺体を搬送し、死因を判断して療養中の病気であると分かれば「死亡診断書」が発行されます。突然倒れた場合や事故が起こって亡くなった場合は、警察に連絡して事件性を調べなければなりません。問題ないと分かれば、警察医や監察医が検案して「死体検案書」が発行されます。
自宅に安置できない場合、葬儀社の安置場所へと搬送する必要があります。また、自宅に安置できる場合でも、直葬を行うための相談や専門スタッフによるエンゼルケアをしてもらうため、葬儀社に依頼した方がよいでしょう。
②安置場所へ搬送
病院での手続きが終わったら、ご遺体を安置場所へ搬送します。お通夜や葬儀式・告別式を執り行わないとしても、火葬は亡くなってから24時間以上経ってからと法律で決まっているため、安置場所が必要です。一般的に、斎場の安置室または自宅に安置することが多いでしょう。
③葬儀社と打ち合わせ
安置場所が決まったら、葬儀社と打ち合わせをして葬儀形式を決めます。菩提寺がある場合、直葬を執り行うことについての相談が必要になるでしょう。無宗教の場合は、火葬場での読経を行わない場合もあります。
直葬についての理解を得られたら、火葬場を決定して予約をします。火葬場の予約状況によっては、直葬を執り行う日が延期することもあるでしょう。
葬儀社との打ち合わせでは、棺や骨壷、仏衣などの葬祭用品も決める必要があります。これは、お通夜や葬儀式・告別式を執り行わなくても、棺に納めてから火葬されるためです。遺影は、直葬では用意しないことが多いですが、祭壇を設けている場合は飾ることもあります。
また、亡くなってから7日以内に「死亡届」を提出する必要があります。その際に、「火葬許可証」の申請も併せて行いましょう。遺族は直葬を執り行うための準備や対応に追われているため、必要な場合は葬儀社に手続きの代行を依頼することも可能です。
④訃報連絡
直葬の日程が決定したら、遺族以外の関係者や故人の勤務先などに訃報連絡をします。参列していただきたい方には、日時や場所を伝えます。
直葬で会社関係者などに参列を遠慮していただく場合は、家族のみで執り行うため参列は不要であることや、香典や供物を辞退することなどを伝える必要があります。
また、訃報を知った方が火葬場へ直接来てしまうのを防ぐためにも、急を要さない友人や知人に対しては、直葬が終わってから訃報連絡するのがよいでしょう。
⑤納棺・出棺
直葬の準備と手続きが終わったら、「納棺の儀」を執り行います。葬儀社に直葬を依頼した場合は、専門のスタッフが故人の旅支度を整えてから納棺するのが一般的です。納棺の儀は故人との最期の時間となる大切な儀式であるため、ご遺族や親族のみで行い、基本的にそれ以外の人は参加しません。
旅支度を終えたら、自宅または安置場所から出棺します。一般的に、火葬場までは霊柩車で搬送し、ご遺族の代表者が同乗することになるでしょう。他のご遺族や親族は、別の車やタクシーなどで移動します。
⑥読経・焼香・火葬
火葬場に到着したら、始めに「納めの式」が執り行われます。僧侶の読経と参列者の焼香を行い、故人を見送る儀式です。ただし、無宗教の場合はこの儀式を行わない場合もあります。
納めの式が終わると、棺が火葬炉へ運ばれて火葬されます。火葬にかかる時間は、故人の年齢や体型、副葬品などによって異なりますが、1~2時間程になるでしょう。その間、参列者は別室で静かに待つようにします。
⑦骨上げ
「骨上げ(こつあげ)」は、火葬されたご遺骨を骨壷に納めることです。ふたり一組になり、長い箸を使用してご遺骨を一緒に拾い上げ、骨壷に納めます。このときに長い箸を使うのは、この世からあの世への「箸渡し(橋渡し)」という意味があるためです。
一般的に、足の骨から順に上半身へ向かって拾い、最後にのど仏を骨壷の一番上に置きます。ただし、骨上げは地域によって納め方が異なるため、この通りとは限りません。火葬場の担当者の指示に従って行い、骨壷と火葬済印が押された「火葬許可証」を受け取ると終了です。
直葬にかかる費用と内訳

一般的な葬儀では、葬儀の基本料金、飲食接待費、僧侶へのお布施などがかかります。しかし、葬儀の儀式を執り行わない直葬では飲食接待費がかからないため、その他の費用の相場をご紹介します。
費用相場
葬儀費用の相場は20万円~50万円程度
直葬の葬儀費用の相場は、20万円~50万円程度です。飲食接待費は必要なく、葬儀場利用費や祭壇などの費用もかからないため、葬儀形式の中で最も金額を抑えられる形式と言えます。
お布施の相場は10~30万円程度
直葬は、宗教的儀式を一切執り行わない場合もありますが、一般的には火葬場で読経していただくことが多いです。お通夜や葬儀式を行わずに火葬場で読経をお願いする場合は、戒名を依頼することもあるでしょう。このときのお布施の相場は、10万円~30万円程度です。
葬儀費用の内訳
葬儀社で直葬のプランを提案している場合がありますが、それぞれ内容は異なるため、しっかりと確認する必要があります。安置場所を葬儀社にする場合は、安置費用やドライアイスが約3日分必要になることもあります。また、葬祭用品は、セットではなく一つずつ選ぶことも可能です。
葬儀費用の内訳
- 安置費用・ドライアイス
- 搬送費(寝台車・霊柩車)
- 葬祭用品(棺・棺用布団・骨壷・仏衣一式・枕飾り一式)
- 運営費
- 火葬費用
直葬へ参列するとき(参列者)のマナー

直葬は一般葬と葬儀の形式が異なるため、参列する際の立ち居振る舞いに迷う方が多いのではないでしょうか?そこでここからは、直葬へ参列するときの参列者のマナーを解説します。
案内状に服装の記載がなければ準礼装にする
直葬はお通夜や告別式がないため、どのような服装がよいか迷うこともあると思います。この場合、案内状に服装についての記載がなければ準礼装にするのがよいでしょう。直葬の参列者は近親者のみの場合が多いため、一般的な葬儀ほど服装マナーにこだわる必要はありません。
ただし、常識の範囲内で弔事に適切な服装にされたほうがよいでしょう。「平服でお越しください」と記載されていた場合、普段着は相応しくありませんが、喪服でなくても構いません。基本的には、略礼装が服装マナーとして適しています。
服装の記載なし(男性)
- ブラックスーツ
- 黒色のネクタイ・靴下・靴
- 白色のワイシャツ
服装の記載なし(女性)
- ブラックスーツ
- 黒色のインナー・パンプス・ストッキング
- アクセサリーはなるべく身に着けない(真珠・黒曜石のみ可)
平服と記載あり
- 男性:ダークグレーのような黒に近い色のスーツも可
- 女性:グレー・ネイビーの服装も可
食事をすませてから向かうようにする
直葬では、通夜振る舞いや精進落としのような会食の場を設けないのが一般的です。また、火葬している間の待ち時間は、一般的な葬儀ではお茶やお菓子を用意しますが、直葬では用意しないことが多いです。
そのため、直葬に参列する際は事前に食事をすませてから向かいましょう。
香典は原則不要
直葬では、香典は原則的に不要です。ご遺族からの訃報連絡の際に、香典を辞退する旨が伝えられることがあります。その際は、ご遺族の意向に従って香典を持参しなくても問題ありません。香典辞退の旨があったのにもかかわらず渡してしまうと、お返しなどでご遺族の負担になる場合があります。
どちらか分からない場合は香典を用意しておき、受付またはご遺族に手渡ししましょう。その際に、香典を辞退する旨を伝えられることがありますが、その場合は素直に受け入れましょう。
直葬を執り行うとき(ご遺族)のマナー

直葬に参列する際のマナーを紹介しましたが、直葬を選択する場合はご遺族側にもマナーがあります。ここからは、直葬を執り行う場合のご遺族のマナーをご紹介します。
菩提寺がある場合は許可を取る
菩提寺がある場合は、直葬を決める前に相談しましょう。菩提寺の許可なく直葬を行った場合、納骨を断られる可能性があります。
直葬では、必ずしも読経を行わなければならないという決まりはありませんが、菩提寺がある場合はきちんと許可を取り、読経していただいた方がよいでしょう。
また、菩提寺に相談する際は「直葬に決まりました」という報告ではなく、直葬にしたい事情をきちんと説明し、それについての対応を尋ねましょう。
喪主代わりの代表者を立てる
一般的な葬儀と異なり、直葬では葬儀を取り仕切る喪主を立てる必要がありません。直葬に参列するのはご遺族のみの場合が多く、参列者への挨拶や対応がないためです。ただし、葬儀社との打ち合わせやさまざまな決めごとがあるため、喪主代わりとなる代表者を立てた方がよいでしょう。
香典を受け取った場合は返礼品が必要
直葬で香典をお断りしても、どうしても受け取って欲しいという方がいる場合は受け入れるようにしましょう。その際には、返礼品が必要となります。事前に返礼品を用意していた場合は、その場ですぐに渡しましょう。用意していなかった場合、「四十九日」の忌明け後に渡すのが一般的です。
直葬における注意点

ここまで、直葬の概要やマナーなどを紹介してきましたが、一般葬とは異なる部分があるため注意しなければならないこともあります。直葬を執り行う前に、確認しておきましょう。
安置場所を考えておく必要がある
直葬は、お通夜や葬儀式・告別式は執り行いませんが、亡くなった後すぐに火葬できるわけではありません。亡くなった後24時間以内に火葬するのは法律で禁止されているため、ご遺体の安置場所が必要です。
自宅で安置する場合、故人を布団に寝かせて枕飾りをします。火葬場の予約まで日数が空く場合は、ドライアイスでご遺体の状態を維持する必要があり、自宅での安置に限界があるでしょう。そのため、葬儀社や火葬場の安置室を利用することをおすすめします。
補助金が支給されない場合がある
葬儀を執り行った際は葬儀費用の補助制度がありますが、直葬では支給されない場合があります。一般的な葬儀では、国民健康保険に加入していた方が亡くなった場合は各自治体から「葬祭費」、社会保険や共済組合などに加入していた方が亡くなった場合は「埋葬料」が受け取れる制度があります。
しかし、直葬は葬儀を執り行っていないという理由から、申請しても支払われないケースがあります。そのため、直葬を執り行う前に確認した方がよいでしょう。
補助制度
故人の保険の種類 |
申請先・補助金 |
申請者 |
---|---|---|
国民健康保険 |
各自治体・葬祭費 |
葬儀を執り行った人 |
社会保険・共済組合 |
故人の勤務先・埋葬料 |
扶養家族 |
直葬は親族や寺院と相談してから決めましょう

この記事のまとめ
- 直葬は火葬のみの葬儀
- 葬儀社に依頼して行う場合が多い
- 直葬にかかる葬儀費用の相場は、20万円~50万円程度
- 読経を依頼した場合、お布施の相場は10万円~30万円程度
- 直葬は、逝去から24時間以上経ってから執り行う
- 菩提寺がある場合に直葬を執り行うときは、菩提寺の許可が必要
- 親族の理解を得る必要もある
- 葬儀の補助金が支給されない場合がある
直葬は一般的な葬儀の儀式を執り行わないため、周囲に理解されない場合があります。相談なく執り行ってしまうとトラブルが生じる可能性があるため、親族や寺院とよく相談してから決めましょう。

2006年に葬儀の仕事をスタート。「安定している業界だから」と飛び込んだが、働くうちに、お客さまの大切なセレモニーをサポートする仕事へのやりがいを強く感じるように。以来、年間100件以上の葬儀に携わる。長年の経験を活かし、「東京博善のお葬式」葬祭プランナーに着任。2023年2月代表取締役へ就任。