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【世界の葬祭文化08】Google出身の起業家による“デス・コンシェルジュ” 葬儀のビフォア&アフターを完全DXに!

【世界の葬祭文化08】Google出身の起業家による“デス・コンシェルジュ” 葬儀のビフォア&アフターを完全DXに!

今後死者数が大きく増加するのは日本のみならず他の先進国も同様です。葬儀を取り仕切る世代の多くはミレニアル世代(2000年以降に成人した世代)です。欧米では葬祭ビジネスのスタートアップもPCやスマートフォンに慣れ親しんでいるこの世代の人たちが担うケースが増えています。彼らは葬儀前後のケア、サービスにもデジタル技術を取り入れた事業を展開しています。今回はその最先端とも言えるアメリカの事例を紹介します。

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前回の記事はこちらからご覧いただけます。ぜひ合わせてご一読ください。

「デス・コンシェルジュ」とは?

今から半世紀前の1970年代、アメリカでの火葬率はわずか5%でしたが、2019年には55%に増加し、過半数を占めるようになりました。北アメリカ火葬協会は2030年までに火葬率が7割を超えると試算しています。

また、SDGs思想の広がりに伴い、地球環境の保全を意識した「堆肥葬(還元葬)」「水火葬」「宇宙葬」など、伝統的な埋葬(土葬)に代わる新しい葬送も認められてきており、エンディング産業全体が大きな転換点を迎えています。

こうした葬送の多様化を背景に、ミレニアル世代の人たちが始めたのが、葬儀のビフォア&アフターをケアすることで顧客満足度を高め、エンディング全般をサポートするビジネスです。一般的に「デス・コンシェルジュ」と呼ばれるこのビジネスにおいて、強力な武器となるのがデジタル技術なのです。

葬儀プランと人生の整理を高度なITリテラシーで解決

デス・コンシェルジュは本人・遺族の相談相手になり、彼らの要望に応じて様々な葬儀プランを実現します。

たとえば、葬儀社の専門スタッフを使わず、各種の手続き・オペレーションのすべてを家族自身の手で行う「(セルフ)家族葬」。たとえ遠方でも、故人との思い出が残る場所まで出向き、その場で葬儀を執り行う「ロケーション葬」。あるいは、「パーティー葬」と呼ばれるプランは、故人が愛した場所・ゆかりの深いスポット(たとえばよくサーフィンを楽しんだビーチとか、行きつけだったカフェやレストラン)などに遺族や友人・関係者が一堂に集合し、みんなで故人の人生がゴールを迎えたことをお祝いするという、明るさを強調した葬儀などが登場しています。

こうした柔軟でユニークな葬儀を行うだけでなく、デス・コンシェルジュは住宅の売買や遺品・家具の整理、葬儀に使用する写真や動画の編集、故人の携帯電話をはじめ、各種オンラインサービスの契約の解約、銀行口座の閉鎖なども行います。大切な人を亡くして精神的なダメージを受けている家族にとって、悼む間もなくこれらの諸手続きを自ら行うことは大変な作業だからです。

個性を重んじた葬儀プランと、その前後に発生する煩雑な仕事(故人の人生の整理)を、高度なITリテラシーで解決し、エンディング関連のトータルサービスを、安くスピーディーに提供する職業——それがデス・コンシェルジュと言えるでしょう。

葬儀用クラウドファンディングツール

デス・コンシェルジュの代表的なスタートアップ企業が、カリフォルニア州サンフランシスコで2017年に創業した「エヴァ―・ラヴド (Ever Loved)」です。

同社は元Google社員だった女性アリソン・ジョンストン氏がエリック・ザロニー氏と共同で創業しました。同社の事業が画期的だったのは、葬儀費用の高騰に悩む人々に向けて「葬儀用クラウドファンディングツール」を開発し、提供したことです。

これは公的なクラウドファンディングとは異なり、主催者である遺族が、故人の友人・知人・縁のある人たちに対して葬儀費用の援助協力をお願いするものです。

また、このツールは家族が招待状を配ったり、さまざまな方面から故人の写真や動画・コメントなどの思い出コンテンツを集める追悼サイトも組み合わせて活用できます。そのため、遠方や海外在住の友人らも気軽にアクセスして寄付(日本で言えば香典)をし、故人にお別れを告げたり、偲んだり、遺族や他の縁者と交流できるようになっています。

希望に叶ったユニークなプランを実現

同社の葬儀プラン・サービスページでは、利用者が宗教・文化・伝統・予算規模・日程など、順次出てくる質問に答えることで、希望に叶った最適な葬儀プランを作ることができます。

これらすべての質問に答え終わると、献体・火葬・土葬、さらに還元葬・水火葬・宇宙葬などから希望するものを選び、葬儀を行う場所や日時を選択すると、おすすめの葬儀業者が表示されるという仕組みになっています。

フェアウェル専門のECショップ!?

近年アメリカでは個人が自分や家族の棺などを買い求めるケースが増えており、アマゾンのような大手ネット通販をはじめ、日本でもおなじみのコストコやウォルマートといった巨大スーパーマーケットが実店舗で「フェアウェルコーナー」を設けて葬儀用品を販売しています。

こうした現状を踏まえ、エヴァ―・ラヴドでも埋葬に必要な棺、骨壷、墓石、記念ジュエリーなどのフェアウェル専門のECショップを開設。全米葬儀社協会によると、ここで販売される棺の価格は、同じ素材・品質・デザインの製品であるにも関わらず、通常、葬儀社が提供するものの半額程度だといいます。

利用者(遺族)はオンラインショッピングで葬儀・埋葬・供養に必要な物品を自身で見つけて調達した上で、地元の葬儀社に依頼して従来通りの伝統的な葬儀を、より安価に行うことも可能になっているのです。

エンディングこそ、デジタル技術は必須に

従来の葬儀の在り方に疑問を抱いている、画一的・形式的な葬儀を好まない、故人らしさを大切にした最期にしてあげたい、できる限り葬儀費用を抑えたい。そうした人々の潜在的な要望に応える、そして、多様な人種・宗教が入り混じった社会のニーズを満たす——明確な目的でエンディングサービスを提供するエヴァ―・ラヴドは、創業から3年あまりで毎月数千件の葬儀プランをサポートするまでに成長。収益を大きく伸ばしています。

従業員10人ほどの小規模な企業でありながら短期間これだけ事業を拡大できたのは、やはりデジタル技術をフルに活用しているからでしょう。コストを抑えて葬儀ができる、時間・空間を超えて人間関係を作れる・保てるというメリットは、各種デバイス、インターネット、さらにAIが人々の間に普及した今後、必須になるのかもしれません。

若い起業家のビジネスチャンス

業界を問わず、DXは日本でも盛んに推奨・提唱されていますが、アナログ時代からの歴史がある企業にとって、従来のビジネススタイルを切り替えるのはなかなか難しいようです。その点では若いスタートアップは有利な条件を持っており、チャンスも多いと言えるでしょう。

多死社会を迎えるアメリカ社会において、デジタル技術を駆使することで手頃な葬儀費用・価格を実現し、地域を問わずいつでも顧客をサポートするサービスを展開する若い企業が次々登場しています。エヴァー・ラヴドのような企業をはじめ、ミレニアル世代の起業家たちは「葬儀・エンディングのDX」を掲げ、各国の葬儀業界が持つ古い常識・ビジネス慣習の壁に挑戦しているのです。

参考資料・サイト

葬研「アメリカの葬儀系スタートアップ紹介」

AMP「変わる葬式市場の今「デス・コンシェルジュ」やミレニアル世代プロデュースの新葬式など」

Ever Loved

Tech Crunch

Hospice News

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