「無縁仏」になってしまう理由とは?未然に防ぐための方法や手続き、費用を解説
供養してくれる人がいなくなったお墓や故人は「無縁仏」と呼ばれます。いったいどのような人が、どういった理由で無縁仏になってしまうのでしょうか?本記事では、無縁仏になる理由、未然に防ぐ方法、そのために必要な費用などを詳しく解説します。
無縁仏とは?
先祖のお墓参りをしたとき、墓石がボロボロになっていたり周りに草が生い茂っていたりと、管理が不十分なお墓を見たことはありませんか?このような、供養してくれる人がおらず管理が行き届いていないお墓を「無縁仏」と呼びます。また、供養してくれる人がいない故人も無縁仏と呼ばれます。
近年、親戚付き合いが希薄化していることや少子高齢化が進んでいることにより、お墓を継承する人がどんどん減ってきています。その結果、無縁仏が増加しているとされています。
引き取り手がなく無縁仏となってしまった遺体は、身内の代わりに地方自治体が葬儀を行います。お通夜や葬式などは行われず、火葬後に他人の遺骨と無縁墓地に合祀されるのが一般的です。
お墓に入った遺骨が無縁仏となってしまった場合は、霊園や寺院などの管理者が遺骨を取り出し、無縁墓や無縁仏を祀る施設で合祀されます。一度合祀されると、合祀した後に引き取り手が現れたとしても、遺骨を渡すことはできません。
無縁仏になってしまう理由
誰もが望んで無縁仏になっているわけではなく、さまざまな事情があって無縁仏になる方がほとんどです。ここからは、無縁仏になってしまう理由について解説していきます。
お墓の継承者がいなくなった
無縁仏になってしまう理由として、お墓の継承者がいなくなることが挙げられます。一般的なお墓は子孫に継承されていきますが、近年は少子高齢化の影響で後継がおらず途絶えてしまうお墓が増えています。そのため、死後にお墓を継ぐ人がいなくなり、無縁仏になることが増えているのです。
霊園や寺院の廃業
無縁仏になってしまう理由として、霊園や寺院の廃業も挙げられます。廃業したからといって、勝手に遺骨が処分されることはありません。しかし、霊園や寺院が廃業を通達した際に連絡がつかなかった場合は、無縁塚や無縁墓などに遺骨が埋葬されます。
お墓の管理料を支払えなくなった
お墓の管理料を支払えなくなり、無縁仏になることもあります。お墓を建てた場合、墓地を購入したのではなく「墓地を借りた」という形になります。そのため、永代供養に切り替えない限り、毎年管理料を霊園や寺院に払わなくてはいけません。管理料は墓地や霊園によって異なりますが、金額によっては滞納してしまうこともあるでしょう。
管理料を払えず滞納が続いた場合、お墓は撤去されてしまいます。遺骨は無縁塚や無縁墓地などに移され、最終的に無縁仏になってしまうのです。
孤独死
孤独死も、無縁仏になってしまう理由の一つです。天涯孤独だったり子息がいない方は、遺体の引き取り手がおらず無縁仏になってしまいます。また、身寄りがいても家族や親戚から遺体の引き取りを拒まれ、そのまま無縁仏になる場合もあります。
無縁仏になるのを防ぐ方法
供養してもらえない無縁仏は「極楽浄土に行けない不吉な存在」とされているため、無縁仏になるのは避けたいと考える方がほとんどでしょう。そこでここからは、無縁仏になるのを防ぐ方法について解説していきます。
永代供養墓を選択する
無縁仏になるのを防ぎたいのなら、永代供養墓を選んではいかがでしょうか。永代供養墓とは、故人の身内の代わりに寺院や霊園がお墓の管理・供養を行ってくれます。契約手続きの際に永代供養料を支払った後は追加費用はかからず、管理料も必要ありません。
ただし、永代供養墓は「半永久的にお墓を管理してもらえる」という訳ではありません。一定の年月が経過したのちは、最終的には合祀されるため注意してください。
墓じまいをする
無縁仏になってしまう前に、墓じまいをするという手段もあります。墓じまいとは墓地から墓石を撤去し、霊園や寺院に土地を返却することです。あらかじめ墓じまいをしておけば、「墓の継承者が不在で無縁仏になる」という事態を防げます。墓じまいを行う前には家族や親戚と話し合い、承諾を得ておきましょう。
合葬墓
合葬墓とは、血縁がない他人の遺骨と一緒に納められるお墓のことです。合葬墓であれば、家族や親戚による管理が不要であるため、無縁仏になるのを防げるでしょう。合葬墓には一定期間が過ぎた後に合葬するものや、納骨した時点で合葬されるものなど、さまざまな種類があります。
散骨を選ぶ
お墓の継承者がいない方や、残される家族に負担をかけたくない方は、散骨を選ぶことで無縁仏になるのを防げます。散骨とは、火葬後の遺骨をパウダー状に砕いて海や山などに撒く供養方法です。一般的なお墓のような継承者が必要ないため、頼れる人がいない方も無縁仏になるのを防げます。
ただし、一度散骨してしまうと遺骨は二度と元に戻りません。家族や親族がいる方は、前もって散骨を希望している旨を伝えて了承を得ておきましょう。
お墓の引っ越しを行う
お墓の引っ越しをすることで、無縁仏になるのを予防できます。お墓が遠方にあるとどうしてもお墓参りや管理がしづらくなり、無縁仏になる確率が高まります。近くの墓地や霊園などにお墓を移設すれば、お墓を管理しやすくなるでしょう。
お墓の引っ越しには、現在建っているお墓を完全に撤去する方法や、現状の墓石をそのまま新しい墓地へ移動させる方法など、さまざまな手段があります。
生前にお墓の契約をしておく
無縁仏になるのを防ぐ方法として、生前にお墓の契約をしておくことが挙げられます。身寄りがいない方や、家族や親戚にお墓の管理を任せられない場合、そのままだと自分が無縁仏になってしまいます。前もってお墓や供養サービスを契約しておけば、無縁仏になるのを予防できるでしょう。
無縁仏を避けるために必要な費用
ここからは、無縁仏を避けるために必要な費用について解説します。無縁仏になりそうなお墓がある方や、自身が無縁仏になる可能性が高い方は、参考にしてみてください。
永代供養墓
永代供養墓は、供養方法や納骨の仕方によって費用が異なります。納骨スペースは個別に分かれており、礼拝対象になるシンボルのみを共有する「集合墓」の場合、相場は20万円〜30万円ほどとされています。一定期間、個別に遺骨が安置された後に遺骨は合葬されます。合葬されるまでは管理費を負担しなくてはいけない場合もあるため、前もって費用を確認しておきましょう。
個別に礼拝の対象となるシンボルがあり、その下に遺骨を納める個別墓の場合、費用相場は50万円〜150万円ほどとなります。形式としては一般的なお墓に近いですが、一定期間を過ぎると遺骨は合葬されます。
墓じまい
墓じまいを行う場合、30万円〜300万円ほどの費用がかかるとされています。墓石の撤去費用や、閉眼供養を依頼する寺院へのお布施の金額などによって、必要な費用が大きく変動します。予算に合わせて、どのように墓じまいをするか検討しましょう。
合葬墓
血縁関係に関わらず、遺骨を同じ場所に納める「合葬墓」の相場は、2万5千円〜30万円ほどとされています。個別に遺骨を納めるスペースが必要ないため、他の方法に比べて金銭的な負担を減らせます。合葬墓にかかる費用の内訳は、永代供養料と墓地使用料です。
散骨
散骨にはさまざまな種類があり、それぞれ費用が異なります。海に遺骨を撒く海洋散骨の場合、依頼主が船に乗って自分で散骨するか、業者に任せるかによって金額が変わります。散骨を業者に代行してもらう場合、相場は5万円〜15万円ほどです。他の依頼主と同じ船に乗船して散骨する場合は15万円〜20万円ほど、船を貸し切って散骨する場合は20万円〜30万円ほどが相場となっています。
山へ散骨する場合の相場は、5万円〜15万円ほどとなります。山への散骨を依頼できる業者はかなり少ない上、散骨場所の指定ができないことが多いため注意しましょう。
小型飛行機やヘリコプターなどを使って空中から散骨する場合、相場は35万円〜40万円ほどとされています。航空機に乗り込む人数が多くなればなるほど、高額になるため注意が必要です。
お墓の引っ越し
お墓を引っ越しさせる場合、現在あるお墓の撤去費用や閉眼供養・開眼供養のお布施、新しく遺骨を納める場所に支払う費用などがかかります。状況によって費用は大きく異なりますが、相場は50万円〜300万円ほどとされています。また、お墓を別の場所に移す場合は、自治体のルールに従う必要があるため事前に確認しておきましょう。
生前墓の契約
生前にお墓を契約しておく場合、選択するお墓の種類によって大きく費用が変わります。例えば、個別のお墓を作らずに他の遺骨を祀られる合祀タイプのお墓の場合、相場は10万円〜30万円となります。契約期間中は個別供養をしてもらい、その後合祀されるタイプのお墓を選んだ場合の相場は、100万円〜200万円ほどと高額になります。
また、生前にお墓を建てた場合、納骨予定の人が生きている間にも管理料の支払いを求められる場合があります。仮に納骨予定の方が亡くなるまでに15年、年間管理料が2万円とした場合、納骨までに30万円を支払わなくていけません。生前にお墓を契約しようと考えている方は、複数業者のサービス内容や費用を比較した上で契約を検討してください。
無縁仏になる理由を踏まえて対策を行いましょう
この記事のまとめ
- 無縁仏とは、供養をしてくれる身内がいない故人やお墓のこと
- 無縁仏になってしまう原因として、お墓の継承者がいなくなったこと、霊園や寺院の廃業、孤独死したことなどが挙げられる
- 無縁仏になるのを防ぐには、永代供養墓や合葬墓・散骨を選ぶ、墓じまいをする、お墓を引っ越す、生前墓の契約などの方法がある
- 無縁仏を避けるために必要な費用は、どの方法を選ぶかによって大きく異なる
仏教において「無縁仏は極楽浄土へ辿り着けない」とされているため、極力、無縁仏になるのは避けたいところです。無縁仏になってしまう理由はさまざまですが、事前に対策をしておけば無縁仏になるのを避けられます。本記事で紹介した無縁仏になるのを防ぐ方法を参考にして、対策を行いましょう。