要介護認定を受けるには?手続きの流れや申請方法について徹底解説

要介護認定を受けるには、お住まいの自治体へ申請が必要です。主治医の受診と認定調査を受ける必要があり、要介護認定を受けるまでには手間や時間がかかります。実際に申請が必要になったときに困らないよう、実際の流れを確認しておくと安心です。本記事では、要介護認定手続きの流れや申請方法について紹介します。

東北公益文科大学卒業。その後、介護保険や障害者総合支援法に関する様々な在宅サービスや資格講座の講師を担当した。現在は社会福祉法人が運営する特別養護老人ホームの生活相談員として、入居に関する相談に対応している。在宅・施設双方の業務に加えて実際に家族を介護した経験もある。高齢者介護分野のみならず、障がい者支援に関する制度にも明るい。
要介護認定とは

要介護認定は、介護保険サービスを受ける際に必須となる手続きです。認定を受けるには申請が必要で、介護の手間を「要支援1〜2」「要介護1~5」の全7段階で評価します。「要支援1」が最も軽度であり、数字が大きいほど重度です。「要支援1」にも該当しない人は「非該当」と判定されます。
例えば、要支援の人がデイサービスやヘルパーのサービスを受けるには、利用回数の制限を守る必要があります。電動ベッドや車椅子は、原則要介護2以上の人でないと介護保険でレンタルができません。入所できる施設も、要介護度に応じて施設種別ごとに入所要件が定められています。
このように、希望する介護保険サービスを受けるには要介護認定が必要です。要介護度が重度判定であれば使えるサービスの種類が増えるものの、一部のサービスでは料金単価が上がるというデメリットもあります。正しい介護認定を受けるには、要介護認定の仕組みを事前に理解しておくようにしましょう。
要介護認定の申請方法

要介護認定を受けるには申請が必要です。手続きは、住民票のある市区町村の介護保険担当窓口で行います。まずは申請の方法について確認しておきましょう。
要介護認定を申請できる人
要介護認定を申請できるのは、以下のいずれかの条件を満たす人です。
要介護認定を申請できる人
- 65歳以上の高齢者(第1号被保険者)
- 40~64歳の公的健康保険に加入している人で、介護が必要になった原因が「厚生労働省が定める16の特定疾病」である場合(第2号被保険者)
厚生労働省が定める16の特定疾病
要介護認定を受けるには、高齢者本人が申請する方法と本人以外の者が代理で申請する方法があります。代理で申請できるのは、以下のいずれかに当てはまる人(団体)です。
要介護認定の代行申請ができる人(団体)
- 家族や親族
- 成年後見人
- 民生委員、介護相談員など
- 地域包括支援センター
- 居宅介護支援事業所
- 介護保険施設
自身で申請に行けない人が認定を受けるには、代行申請が便利です。最寄りの地域包括支援センターや居宅介護支援事業所に代行を依頼すれば、その後のケアプランの相談や介護相談もあわせて行えます。
申請時の必要書類
要介護認定を受けるには、以下の申請書類が必要です。
要介護認定申請書添付書類
- 認定申請書
- マイナンバーカード(または通知カード)
- 介護保険被保険者証
- 健康保険証
申請書は、市区町村のWebサイトから入手するか、窓口で入手する方法があります。介護保険被保険者証を紛失している場合は、紛失届を一緒に提出するようにしましょう。
なお、40~64歳の人(第2号被保険者)が介護認定を受けるには、健康保険証の提出が義務となっています。「厚生労働省が定める16の特定疾病」の中からどの疾病に該当するのかも求められるため、病名を確認しておくとスムーズです。
要介護認定の申請の流れ

介護認定を受けるには、以下の手順で手続きを行います。判定は市区町村単位で実施されますが、全国一律の基準で行われます。
要介護認定の流れ
- 要介護認定の申請
- 認定調査
- 主治医意見書の作成
- 一次判定(コンピューター判定)
- 二次判定(審査会による判定)
- 結果の通知
ここでは、要介護認定制度の流れを手順ごとに解説していきます。
①要介護認定の申請
認定を受けるには、まず市区町村の担当窓口に申請書を提出します。手続きから結果が届くまでは、1~1.5ヶ月ほどかかります。認定結果は申請日に遡って有効になります。
②認定調査
認定調査とは、市区町村から派遣された調査員が申請者の自宅を訪問して心身状況の確認を行うことを指します。適切な認定を受けるために、この認定調査で調査員へ介護の必要性をしっかりと説明しましょう。
調査内容は、全74項目の基本調査とそれぞれの特記事項があり全国一律です。基本調査の構成は以下の通りです。
認定調査(基本調査)の構成
- 身体機能・起居動作
- 生活機能
- 認知機能
- 精神・行動障害
- 社会生活への適応
- 過去14日間に受けた特別な医療について
厚生労働省 認定調査員テキスト2009改訂版(平成30年4月改訂)
引用元 | 厚生労働省Webサイト 要介護認定
正しい介護認定を受けるには、認定調査にて調査員に心身状態の現状と介護の大変さを実際の出来事とともに具体的に伝えることがポイントです。
③主治医意見書の作成
主治医意見書は、申請者本人の疾病や障害の状況、介護に関する意見について記載した書類で、全国どこでも同じ様式で作成します。意見書を作成いただく医師は、介護が必要となった疾病や障害について診療している医師を選ぶのが正しい要介護認定を受けるポイントとなります。
また、作成は市区町村が直接主治医へ依頼します。要介護認定を受けるには必要な書類であり、例え医者にかかったことがない人でも受診拒否がある人でも例外ではありません。主治医や診療してもらっている病院がない人は、市区町村が指定した診療所の中から選んで受診しましょう。
④一次判定(コンピューター判定)
認定調査と主治医意見書が提出されたのち、二つの書類を専用のコンピューターに入力して仮判定を出すことを一次判定といいます。この判定は、介護の手間を五つに分類して「要介護認定等基準時間」という尺度に変換して数値化することで算出されます。
一次判定の結果は、次の手順で行われる二次判定の重要な資料です。
⑤二次判定(審査会による判定)
二次判定とは、主に市区町村が設置している「介護認定審査会」と呼ばれる会議で申請者の要介護度について最終決定をすることです。介護認定審査会は、医療(医師、薬剤師など)・保険(保健師、看護師など)・福祉(介護福祉士、社会福祉士など)の専門家や学識経験者の中から、市区町村が任命したメンバーで構成されています。
二次判定では、機械的に算出された一次判定の結果をもとに、認定調査の特記事項や審査会委員の意見をまとめます。審査で得られた結果で「要介護認定等基準時間」を調整し、最終的な介護度を決定します。
⑥結果の通知
二次判定後、結果は速やかに申請者へ通知されます。封書が届いたら速やかに結果の内容を確認し、結果が適切ではないと感じる場合は再審査を検討しましょう。
身体機能の状態にあった要介護認定を受けるには

要介護認定を受けても意図せず軽い(重い)結果になった場合、その後のサービス利用に影響が出てしまいます。正しい要介護認定を受けるには、以下の四つのポイントを意識することが大切です。ここからは、正しい調査結果を得るための方法や手順について紹介します。
⒈認定調査のポイントを確認しておく
適切な認定結果を受けるには、認定調査員に対して的確に本人の情報を伝えるようにしましょう。高齢者は、見ず知らずの人から根掘り葉掘り聞かれたとき「恥ずかしいところを見せたくない」という気持ちから、普段できていないことをできると答えることがあります。これにより予想外に軽い判定がでる場合があります。
効果的に認定調査を受けるには、日ごろからどのような介護の手間が発生しているのかを具体的に説明できるようにしておきましょう。また、認知症状を本人の目の前で話すと自尊心を傷つけてしまうため、本人のいないところで説明したりメモに書いて渡すのも有効です。
正しい認定を受けるには、実際の状況を認定調査員に理解してもらうことが重要です。そのためにも、調査員に伝えたいことを事前に確認しておきましょう。なお、認定調査の内容や調査項目の定義などについては、一般の人でも厚生労働省のWEBサイトで確認できます。調査前に目を通しておくとよいでしょう。
⒉主治医に介護相談をしておく
正しい介護認定を受けるために、主治医へ事前に相談しておくことも大切です。これは、介護認定制度の流れの二次判定において主治医意見書が重要になるためです。主治医意見書に介護認定の必要性が記載されていれば、審査会の委員がしっかり評価してくれるでしょう。
定期受診の際に介護の大変さを伝えておくのはもちろんですが、介護認定を受ける際にはその旨を主治医へ報告するようにしましょう。例えば「足腰が弱くなってきて、転びやすくなった」「物忘れが激しく、一日に何回も貴重品を紛失するようになって被害妄想を訴える」など、具体的に説明することが重要です。
正しい認定を受けるには、主治医とのコミュニケーションを欠かさないようにしてください。もし、主治医に直接言うのは気が引けるのであれば、看護師に伝えるなどして主治医意見書に反映してもらえるようにしておきましょう。
⒊認知症の場合は専門医を主治医に指名する
認知症でお困りの人が介護認定を受けるには、専門医を主治医に指名しましょう。正確な介護認定を受けるには、認知症の症状が的確に審査会に伝えられなければいけません。審査会で認知症による介護の手間が正しく評価されないと、軽度に認定されてしまう可能性があります。
内科や整形外科を主治医にしての申請では限界があります。これは、認知症の種類や特性から生じる介護の困難さにまで言及してもらえない可能性があるためです。身体状態だけでは「非該当」だとしても、認知症の診断があると有利になります。そのため、認知症の診断を受けるには認知症の専門医(精神科、心療内科、脳外科、物忘れ外来など)に相談してみるとよいでしょう。
そして、医師に介護の困難さを具体的な言動や困りごとと一緒に伝え、主治医意見書の作成をお願いすることがおすすめです。申請書類には、専門医の名前を主治医の欄に記載することも忘れないようにしてください。
⒋再審査を受けるには
認定結果に不満な場合の再審査制度には、「区分変更申請」と「不服申し立て」の2種類があります。再審査を受けるには、実施前に市区町村や担当のケアマネジャーとよく相談しましょう。
「区分変更申請」は、現在の要介護認定が実態にそぐわない、介護サービスの量が足りないと感じたときに利用できる制度です。
一方、「不服申し立て」は介護認定が妥当なものであったかを確認するものとなります。再審査は、正しい認定を受ける際に有効です。結果が出るまで時間や手間を要しますが、正しい結果が得られなかったために「サービス量が足りない」「介護度に見合った料金ではない」と感じた場合には、再審査を検討しましょう。
正確に要介護認定を受けるには、実態把握と情報の伝達が大切

この記事のまとめ
- 要介護認定を受けるまでの流れは、①要介護認定の申請②認定調査③主治医意見書の作成④一次判定(コンピューター判定)⑤二次判定(審査会による判定)⑥結果の通知
- 正しい介護認定を受けるためには、認定調査の際に認定調査員に実態を正確に理解してもらうことが重要
- 加えて、主治医や看護師に相談をして介護の実態を主治医意見書に反映してもらうことが大切
- 認知症の人が認定を受けたい場合は、精神科、心療内科、脳外科、物忘れ外来といった認知症専門の医師を主治医として指名することが大切
- 認定結果に不都合がある場合、再審査制度として「区分変更申請」と「不服申し立て」の2種類の方法がある
要介護認定は認定調査の結果と主治医意見書を基に、コンピューター判定された後に有識者が集まる「認定審査会」によって最終決定されます。
正しい要介護認定を受けるには、手続きの流れや認定調査の内容をしっかり把握しておくことが大切です。認定調査には必ず立ち合い、日ごろの様子や困りごとを伝えるようにしてください。本人の自尊心に配慮し、メモを渡したり電話で伝えたりする工夫も有効です。介護の手間や頻度を具体的に整理して伝えるようにしましょう。
また、申請時に申告する主治医は、「介護が必要になった原因」となる主な疾病の担当医に依頼しましょう。特に、認知症の人が正しい認定を受けるには、事前に専門医を受診した上で主治医意見書の作成を依頼することがおすすめです。
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