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お金・お家のこと

不動産で相続税対策が可能!具体的な評価や主な方法、注意したいリスクについて解説

不動産で相続税対策が可能!具体的な評価や主な方法、注意したいリスクについて解説

相続税の負担は大きいものです。財産を保有しているなら、将来の相続に備え、相続税対策をしておきましょう。相続税を軽減するためにはいろいろな方法がありますが、特に有効なのが不動産を使った節税対策です。本記事では不動産で行う相続税対策について、方法や注意点を説明します。

監修者 SUPERVISOR
AFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、行政書士 森本 由紀

神戸大学法学部卒業。鉄鋼メーカー、特許事務所、法律事務所で勤務した後、2012年に行政書士ゆらこ事務所を設立し独立。メインは離婚業務。離婚を考える人に手続きの仕方やお金のことまで幅広いサポートを提供。法律・マネー系サイトでの執筆・監修業務も幅広く担当。

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不動産で相続税対策ができる理由

財産を相続したときに課される相続税は、10~55%と高率です。相続人の税負担が大きくならないよう、相続税対策をしておきましょう。相続税対策には不動産を活用するのが効果的です。まずは不動産で相続税対策ができる理由を説明します。

相続税評価額が時価よりも下がる

相続税は、亡くなった人(被相続人)が亡くなった時点で所有していた財産額をもとに計算します。現金や預金はそのままの金額で計算しますが、他の財産は評価額を出さなければなりません。相続税評価額の出し方は、国税庁の定める「財産評価基本通達」で定められています。

不動産を購入すれば相続税を抑えられる

不動産の評価方法は、土地・建物の区別や用途などの条件によって変わります。いずれにしろ、不動産の相続税評価額は時価よりも低くなります。たとえば、1億円で購入した不動産は、7000~8000万円程度で評価されます。現金を不動産に換えるだけでも、相続税対策になるのです。

借入金も有効活用できる

不動産を購入するときにローンを組んだとしても、相続税対策としては有効です。相続税を計算するときには、相続時に残っている借入金を相続財産から控除します。借入により課税される財産額を少なくできるため、節税対策になるのです。

不動産の相続税評価方法

現金を不動産に換えれば、相続税評価額が下がり、相続税対策になることを説明しました。ここからは、相続税を計算するときに、土地や建物をどのように評価するかを具体的に説明します。

建物の相続税評価額

建物(家屋)の評価額は、固定資産税評価額と同じです。固定資産税評価額とは、固定資産税や都市計画税、登録免許税などの計算の基準となる金額です。役所から届く納税通知書や、役所で取得する固定資産税評価証明書で確認できます。固定資産税評価額は、時価の7割程度です。

収益用建物の場合

アパートなどの収益用建物については、賃借人の借家権が発生するため、借家権を考慮しなければなりません。収益用建物の評価額は、自用家屋評価額(他人の権利が付いていない場合の評価額)から借家権の価額を控除して算出するため、次のようになります。

その際には、他人の権利がついている(貸している)部分として物件の入居率を乗じる必要があります。

収益用建物の評価額

収益用建物の評価額=自用家屋評価額×(1-0.3×賃貸割合)

これにより、1億円の評価額を有するマンションが入居率100%の状態であった場合、評価額は7千万円となります。

土地の相続税評価額

土地(宅地)の相続税評価額の算出方法には、路線価方式と倍率方式の二つの方法があります。人口が密集している市街地エリアでは路線価が設定されているため、路線価方式を使います。路線価が設定されていないエリアでは、倍率方式で評価額を計算します。

路線価方式

国税庁が定める路線価をもとに評価額を算出する方法です。路線価に土地の面積をかけて評価額を求めます。

路線価を元にした評価額

土地の相続税評価額=路線価(/㎡)×土地の面積(㎡)

路線価は時価の80%で、国税庁ホームページの「路線価図・評価倍率表」で確認できます。

路線価図・評価倍率表

倍率方式

固定資産税評価額に土地の形状を加味した一定の倍率をかけて評価額を算出する方法です。その倍率は国税庁の「路線価図・評価倍率表」で確認できます。

土地の相続税評価額(倍率方式)

土地の相続税評価額=固定資産税評価額×倍率

土地を貸している場合

宅地を賃貸している場合、その宅地に借地権が発生するため、借地権の価額を控除しなければなりません。借地権の価格は、借地権割合を使って計算します。借地権割合は地域によって異なり、国税庁の「路線価図・評価倍率表」で確認できます。他人に貸している宅地(貸宅地)の評価額の計算式は、次のとおりです。

貸宅地の評価額

貸宅地の評価額=自用地評価額×(1-借地権割合)

土地の上に貸家を建てている場合

所有する土地の上に収益用建物(貸家)を建てている場合、その土地は貸家建付地と呼ばれます。貸家建付地は、借家人の権利を控除する必要があります。借家人の権利の価額は、次の計算式で算出します。

借家人の権利価額

借家人の権利=自用地評価額×借地権割合×借家権割合(※一律30%)×賃貸割合

貸家建付地の評価額は、自用地評価額から上記の借家人の権利を控除して算出するため、次のようになります。

貸家建付地の評価額

貸家建付地の評価額=自用地評価額×(1-借地権割合×0.3×賃貸割合)

不動産を活用した相続税対策①アパート経営

アパート経営は、不動産を活用した代表的な相続税対策です。アパート経営が相続税対策に有効な理由を以下にまとめています。

収益物件の相続税評価額は下がる

土地や建物に他人の権利が付いていれば、相続税評価額が下がります。現金を不動産に換えるだけでも相続税対策になりますが、その不動産を他人に貸せばさらに節税効果を大きくできるのです。所有している土地が更地の場合にも、アパートを建てれば節税対策になります。

ローンを組んでもメリットがある

アパートを建てる際には、アパートローンなどで借入することもあるでしょう。ローンを組むことも、相続税の節税対策になります。相続開始時に残っている借入金は、相続財産から控除できるからです。

不動産を活用した相続税対策②生前贈与

生前贈与とは、相続開始前に他人に無償で財産を譲ることです。生前贈与をすれば相続財産が減って相続税は抑えられます。しかし、年間110万円を超える贈与には、原則として贈与税が課税されてしまいます。ここでは、不動産に関連した生前贈与で、節税対策になる方法を説明します。

相続時精算課税制度を利用

相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への生前贈与に利用できる制度です。

相続時精算課税制度の仕組み

相続時精算課税制度を選択した相手からの贈与は合計2500万円まで贈与税が課税されず、2500万円を超えた部分に一律20%の贈与税が課税されます。相続時精算課税により贈与された財産は、相続時に相続財産に加算され、相続税の課税対象となります。

不動産が値上がりすれば節税できる

相続時精算課税制度は贈与時の課税を相続時に遅らせるものなため、直接的な節税効果はありません。ただし、財産は贈与時点の評価額で評価されるため、将来的に値上がりが予想される不動産を贈与すれば、相続税対策になります。

住宅取得資金贈与をする

父母や祖父母から18歳以上の子・孫へ住宅取得資金を贈与する場合、一定金額までが非課税になる特例があります。自らが不動産を購入するのではなく、子や孫に不動産の購入資金を贈与すれば、相続税対策ができます。住宅取得資金贈与の特例は、2023年(令和5年)12月31日まで利用可能です。

住宅取得資金贈与の非課税限度額

住宅取得資金贈与の非課税特例の非課税限度額は、省エネや耐震などに優れた住宅の場合1000万円、それ以外の住宅の場合500万円です。非課税限度額までの贈与なら、贈与税も相続税も課税されません。

不動産を活用した相続税対策③小規模宅地等の特例を利用

相続財産である自宅の土地の評価額が高額である場合、相続人は相続税納税のために自宅を売却しなければならない可能性があります。こうした事態を回避するため、生活に必要な自宅の敷地や事業用店舗の敷地については、評価額が軽減される特例が設けられています。

小規模宅地等の特例とは

小規模宅地等の特例は、被相続人が自宅用や事業用に使っていた土地(宅地)について、一定面積まで評価額を最大80%減額できる特例です。小規模宅地等の特例を適用できれば、相続税の負担を大幅に軽減できます。

相続する人の条件

小規模宅地等の特例には、宅地を相続する人の条件があります。自宅の敷地を相続する場合、次の人であれば特例の適用が可能です。

小規模宅地等の特例の対象となる相続人

  1. 配偶者
  2. 被相続人と同居していた親族
  3. 被相続人に配偶者や同居人がいない場合、相続前の3年間借家住まいの親族
  4. 被相続人と同一生計・別居で被相続人名義の家に住んでいた親族

減額割合・限度面積

小規模宅地等の特例では、自宅か事業用かなど宅地の種類によって、減額割合や限度面積が異なります。自宅用の場合には、特例の条件をみたせば、330平方メートルまでの部分の評価額が80%減額されます。

土地の評価額が5分の1になる

小規模宅地等の特例が適用できれば、土地の評価額を大きく下げられます。たとえば、200平方メートルの自宅の敷地の相続税評価額が5000万円の場合、特例により5分の1の1000万円になります。特例により土地の評価額が下がれば、相続税が発生しなくなる場合もあります。

生前に準備しておくべきこと

相続の際に小規模宅地等の特例が使えれば、相続税の計算において有利になります。小規模宅地等の特例は、生前贈与では使えません。所有している土地が特例の対象なら、生前贈与をせず相続まで待つことで相続税対策になります。

不動産を活用した相続税対策のリスクや注意点

不動産は高価な財産であるため、取引や処分には慎重にならなければなりません。不動産で相続税対策するときには、リスクや注意点も知っておきましょう。ここからは、不動産による相続税対策のリスクと注意点を説明します。

賃貸経営には空室リスクがある

賃貸アパートの経営は、収益を上げながら相続税対策もできる方法として人気です。しかし、賃貸経営は順調に進むとは限りません。節税対策だけを考えて始めると、失敗する危険性があります。

収益プランをよく考えて実行する

賃貸物件には、空室リスクがあります。アパートに空室ができれば、思ったように収益が上がりません。相続時に空室が多ければ、相続税評価額もあまり下がらないでしょう。賃貸経営を始めるなら、空室リスクや注意点を考慮した収益計画を立て、対策を考えておく必要があります。

認知症になってからでは遅い

高齢になると認知症になるリスクが高まります。認知症になったら、不動産の売買や贈与、賃貸借契約などができません。契約などの法律行為を行うには、意思能力が必要なためです。意思能力とは、自分の権利や義務がどのように変動するかを認識できる能力をいいます。

認知症になると財産が「デッドロック」状態に

認知症になった場合、意思能力に問題が生じてしまいます。「デッドロック」と言って財産を動かせない状態になってしまうのです。せっかく不動産を所有していても、不動産を活用して収益を得ることも相続税対策を行うこともできなくなります。相続税対策は早めに検討しておくことが大切です。

税金回避がメインなら否認されることも

節税対策は重要とはいえ、明らかに税金逃れと思われる不動産取引は、税務署に認めてもらえません。税務署に否認されれば、相続税評価額ではなく、時価で不動産を評価しなければならなくなる可能性があります。注意点をよく確認し、専門家に相談しながら判断するのがおすすめです。

不動産は自分の意思で購入しなければならない

相続税対策のために不動産を購入する場合、被相続人本人の意思で購入する必要があります。相続人が勝手に契約を行った場合、その契約は無効です。また、契約時に被相続人本人が意思決定できる状態でなかった場合にも、税務署で否認される可能性があります。

遺産分割がスムーズにできなくなるかも

相続人が複数いる場合、遺産分割のことも考えて対策する必要があります。財産を不動産に換えると、分割しにくくなってしまいます。相続発生後の遺産分割協議でトラブルになる可能性も考慮しておかなければなりません。

不動産を共有にすると問題が起こりやすい

遺産分割協議の際、不動産を特定の相続人が取得するのではなく、複数の相続人で所有することも可能です。しかし、不動産を共有にすると、共有者の間で意見が分かれ、管理や処分がスムーズに行えない可能性がでてきます。不動産を共有する事態は、なるべく避けた方が無難です。

遺言書を作成しておくのがおすすめ

遺言書を書いておけば遺産分割協議は不要になります。遺言書で不動産を相続する人を指定すると同時に、他の相続人にも資産が行き渡るようにしておくと安心です。節税対策だけでなく、相続人間で不公平感が出ないような工夫も考えましょう。

不動産を活用して上手に相続税対策を

この記事のまとめ

  • 不動産の相続税評価額は時価よりも低くなることから、現金を不動産に換えれば、相続税評価額が下がり、相続税対策になる
  • 不動産を活用した相続税対策には、アパート経営、生前贈与、小規模宅地等の特例を利用する方法がある
  • 賃貸経営には空室リスクがあり、空室の場合は収益が上がらず、相続税相続時に空室が多いと、相続税評価額もあまり下がらない
  • 認知症になってしまうと、意思能力に問題が生じるため、不動産の売買や贈与、賃貸借契約などができなくなる

相続税の節税対策に、不動産は有効活用できます。将来の相続のことも考え、アパート経営や生前贈与など、状況に応じた対策をしておきましょう。不動産を利用した相続税対策にはデメリットや注意点もあります。税理士等の専門家に相談しながら、リスクを回避した節税対策を実行しましょう。

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