追悼とは?哀悼との違いや使い方、書き方などを紹介

亡くなった方を偲ぶための式典などで使われることが多い「追悼」という言葉は、どのような意味を持っているかご存知でしょうか。本記事では、追悼の意味や使い方について、ほかの似た言葉との違いを踏まえて紹介します。追悼文の書き方のポイントも解説しているため、ぜひ参考にしてみてください。
追悼とは

そもそも追悼とは、故人の生前を偲び悲しみにひたることを意味する言葉です。追悼の「追」という字には「過去をさかのぼる」という意味があり、そこに人の死を嘆き悲しむという意味の「悼む」という字が組み合わさっています。
故人を知る方々との会話や交流を通して故人の生前の姿や思い出、人生そのものをさかのぼりながら、故人の死を悲しむという行為の意味が含まれています。
また、お悔やみの手紙や弔電を通して故人とのエピソードを思い返すことも追悼の一つです。
追悼の使い方

故人の生前を偲び悲しみにひたる行為を意味する追悼ですが、実際にはどのような使い方をするのでしょうか。ここからは、追悼という言葉の使い方について解説します。
追悼式
故人に関する生前の思い出や亡くなった悲しみの気持ちを共有する式典として「追悼式」というものがあります。「偲ぶ会」や「お別れ会」と呼ばれることもあり、葬儀やお通夜とは別に、主に故人の友人や同僚などの有志が中心となって執り行われるものです。
追悼式をどんな内容にするかは自由であり、ミュージシャンなどの追悼式ではライブ・コンサート形式で行われる場合もあります。
追悼文
追悼文は、故人と過去に交友があった人が、故人の生前のエピソードや思い出などを交えながら故人の死に対する悲しみの感情を表すためのものです。
また近年はSNSにて追悼アカウントを作成し、故人を偲び、生前の功績や追悼文を投稿することも少なくありません。追悼文における追悼の意味は、故人の死を悲しむだけでなく生前の功績を讃えるという側面もあるといえます。
追悼の意
亡くなった人に対して公にお悔やみの気持ちを伝えるという意味で「追悼の意」という使い方もあります。特にニュースなどで使われる表現であり、主に災害や事故などによって大勢の人が亡くなったときや、著名人の訃報に対して使われることが一般的です。
ゆえに、「追悼の意」という使い方は、身近な人が亡くなったときや、葬儀・お通夜における挨拶としてご遺族へ使うのは間違いであるため注意しましょう。
追悼と哀悼・慰霊の使い方の違い

お悔やみの場で使われる言葉は追悼以外にも「哀悼」や「慰霊」などが挙げられますが、それぞれどのような使い方の違いがあるのでしょうか。ここからは、追悼とよく似た言葉である哀悼・慰霊の使い方の違いについて解説します。
追悼は「行動」哀悼・慰霊は「感情」に対して使う言葉
追悼と哀悼・慰霊では、言葉の意味の焦点が違います。追悼は故人の死を悼むとともに、生前の姿を思い出したり功績を讃えたりといった「行動」に焦点が当てられている言葉です。そのため追悼式のように、集団で執り行う儀式に対しても使われます。
対して、哀悼は故人に対する悲しみの感情そのものを表すものです。慰霊についても、故人の死後の平穏や幸運を祈る気持ちを表現する言葉であり、どちらも故人の死を悲しむ人の「感情」に焦点が当てられています。
哀悼は文語的表現で会話では使わない
哀悼は追悼に比べて悲しみの感情を表現する言葉ですが、文語的表現の一つであるため、会話では一般的に使われません。主に弔電や手紙などの文章において、故人に対する悲しみの気持ちを伝えるために「哀悼の意を表します」といったような書き方で使います。
葬儀やお通夜において、ご遺族へ挨拶する際などに哀悼を使うと違和感を与えてしまう可能性があるため注意しましょう。
慰霊は人・動物を問わず使われる
人の死に対する行動や気持ちを表す追悼や哀悼とは違い、慰霊についてはペットなどの動物が亡くなったときにも使えます。また、不特定多数の人や動物の死に対して使われることもあり、災害や事故などで多くの人や動物が亡くなった際には「慰霊碑」や「慰霊祭」によって、死後の魂を慰める場合があります。
追悼文の書き方・例文

故人の生前に思いを馳せ、亡くなったことへの悲しみの気持ちを表すための追悼文ですが、実際に書くとなると書き方が分からない人も多いでしょう。ここからは、追悼文の書き方について、故人との関係別にまとめた例文とともに解説します。
故人が友人の場合
故人の友人や知人など、生前に親しい間柄にあった人が書く追悼文の場合、以下の例文のように学生時代や直近のエピソードなどを交えるのが書き方のポイントです。明るい雰囲気で執り行われる場であれば、故人に話しかけるような文体にするのもよいでしょう。
また、追悼文全般のマナーとして、文章を区切るときは句読点ではなく使わずスペースを使います。
故人が友人の場合の追悼文の書き方・例文
- ○○さんはいつも周囲に心を配り 思いやりにあふれた優しい方でした 学生時代から今日まで私も何度も励まされ 助けていただきました その温かな人柄は多くの人の記憶に残ることでしょう ○○さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます
- ○○さんがもういないということが今でも信じられません 子供の頃から何度もお互いの家に泊まり 夜が更けるのも忘れて語り合った毎日が思い出されます あなたと過ごした時間は私にとってかけがえのない宝物です 心よりご冥福をお祈りいたします
- ○○くんは学生時代からの親友で後輩思いの優しい人でした 社会人になっても変わらないその優しさは きっと多くの後輩や部下へ伝わっていることでしょう ○○くんへ心からの敬意と哀悼の意を表します
故人が会社関係の人の場合
故人が勤務先の上司や取引先の人などといった会社関係の人の場合、くだけた印象の文にならないように注意しましょう。以下の例文のように、生前の仕事ぶりをエピソードを交えて書いたり、指導や取引の際の印象的な一言を取り上げたりするのが書き方のポイントです。
取引先の人の場合、これまで携わってきた仕事への姿勢などを踏まえて文章を考えるとよいでしょう。
故人が会社関係の人の場合の追悼文の書き方・例文
- ○○様は 常に仕事に対して誠実でありながらも 周囲への温かな気配りを忘れない方でした その背中から私たちは 多くのことを学ばせていただきました 厳しさの中にある優しさ 真摯に取り組む姿勢は 今も私たちの記憶に深く残っております ○○様のご功績とともに その人柄を心より偲び 哀悼の意を表します
- ○○様とご一緒した時間の中で私たちは数え切れない学びを得ました ときに厳しく ときにユーモアを交えながら 若い社員にも丁寧に声をかけてくださいました あの温かい笑顔と柔らかな語り口が今も思い出されます ○○様から受け取った教えと励ましを胸に これからも歩んでまいります
- 在りし日の○○様を思うとき 私たちはそのまっすぐな志と飾らない人柄を思い出します ××プロジェクトをともに進めた日々の中で そのご判断と導きには幾度も助けられました ○○様の残してくださった道筋をたどりながら 私たちはこれからも前を向いてまいります ○○様のご冥福を心よりお祈り申し上げるとともに 深く感謝の思いを捧げます
故人がキリスト教徒の場合
故人がキリスト教徒である場合の追悼文は、「ご冥福をお祈りします」などの仏教用語を使わないように注意してください。以下の例文のように「神の御許に召される」「天国で安らかな眠りにつく」などといった表現を使うとよいでしょう。
故人がキリスト教徒の場合の追悼文の書き方・例文
- ○○様が天に召されてから その存在の大きさをあらためて感じています いつも穏やかで誠実だったお姿が 今も心に残っています 神の御許で安らかに過ごされていることを信じ 感謝と祈りの気持ちを込めて ○○様を偲びます
- ○○様と出会い ともに過ごした日々に あらためて深い感謝の思いを抱いております その温かな人柄と 信仰に支えられた生き方は 今も私たちの心に残っております 主の御許で変わらぬ安らぎがありますように 心よりお祈り申し上げます
- 神の御許に召された故人を偲び 心から哀悼の意を捧げます ご家族皆様の上に 主イエス様の慰めが豊かに注がれますようお祈り申し上げます
追悼文を書く際のポイント

追悼文は場の雰囲気や宗派などに合わせて書き方を変える必要があるため、書くのが難しく感じる人も多いでしょう。ここからは、追悼文を書く際のポイントを解説します。
追悼の言葉に代わる表現を入れるのが望ましい
追悼文に「追悼」という言葉を使うと違和感が出てしまうことから、追悼の代わりとなる表現を入れるのが望ましいです。例えば「お悔やみ申し上げます」や「謹んで哀悼の意を表します」などといった簡潔な一言を添えるだけで問題ありません。
故人との思い出・ご遺族への配慮の言葉を入れる
お悔やみの一言に加えて、故人との思い出やご遺族への配慮の言葉を入れることで、より思いやりを感じられる追悼文になります。文章にて故人の思い出や功績に触れ、故人が生前どのような人柄だったのかをほかの参列者に伝えることで、思い出の共有ができるでしょう。
また、文章の最後に「ご遺族の皆様におかれましては、どうかご自愛ください」といった一言を添えれば、突然の不幸で悲しみに暮れているご遺族に寄り添える丁寧な文章にまとまります。
できるだけ簡潔な文にする
追悼文を書く際には、できるだけ簡潔な文章にしましょう。文章が長すぎるとその後の式典のタイムスケジュールを圧迫してしまう可能性があります。ひとりあたり3分程度で読める文章量にまとめることが望ましいでしょう。
縁起が悪い言葉は使わない
お悔やみの場で読む追悼文を書く際には、縁起が悪い言葉が入っていないかチェックしてください。特に死や苦しみ、不幸が繰り返されることを連想させる「忌み言葉」はうっかり使ってしまう表現も多いため、以下の例を参考に確認しておきましょう。
忌み言葉の一例 | |||
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死を連想させる言葉 |
死や不幸を連想させる言葉 例)「死ぬ」「生きていた」「終わる」「別れる」など |
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重ね言葉 |
不幸が重なることを連想させる言葉 例)「重ね重ね」「いろいろ」「度々」など |
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続き言葉 |
不幸が続くことを連想させる言葉 例)「再び」「また」「引き続き」など |
追悼の使い方を理解して、失礼のないように弔意を伝えましょう

この記事のまとめ
- 追悼とは、故人の生前を偲び悲しみにひたること行為を意味する
- 追悼は悲しみを共有する行動、哀悼や慰霊は悲しむ感情の意味が強い
- 追悼文を書くときは、生前のエピソードやご遺族への配慮の言葉を入れる
追悼という言葉には故人の死を悲しむとともに、生前の姿を思い返すという意味がありますが、会話や文章などで使うシーンは限られています。本記事で紹介した追悼の使い方や追悼文の書き方などを参考にしながら、故人やご遺族に失礼がないように弔意を伝えましょう。