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お金・お家のこと

退職金はどう運用する?おすすめの投資方法や失敗しないためのリスク管理を詳しく説明

退職金はどう運用する?おすすめの投資方法や失敗しないためのリスク管理を詳しく説明

長く勤めた会社を退職すると、まとまった金額の退職金を受け取れる場合があります。この退職金を老後の資金のために運用したいという方も多いでしょう。退職金を運用する場合は、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。今回は、退職金運用の考え方やおすすめの投資方法、リスク管理について解説します。

監修者 SUPERVISOR
公認会計士/税理士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士 岸田 康雄

平成28年度経済産業省中小企業省「事業継承ガイドライン」委員、令和2年度日本公認会計士協会中小企業施作研究調査会「事業継承支援専門部会」委員、東京中小企業診断士委員会「事業継承支援研究会」代表幹事。
一橋大学大学院修了。中央青山監査法人にて会計監査及び財務デュー・デリジェンス業務に従事。その後、三菱UFJ銀行ウェルネスマネジメント営業部、みずほ証券投資銀行部M&Aアドバイザリーグループ、メリルリンチ日本証券プリンパル・インベストメント部不動産投資グループなどに在籍し、中小企業の事業継承から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業継承とM&A業務を遂行した。現在は、相続税申告と相続・事業継承コンサルタント業務を提供している。

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退職金の運用が必要な理由

近年では、退職金運用の必要性が高まっています。退職金の運用が必要な理由は以下の三つです。

1. 老後の生活費が不足する恐れがある

基本的に、定年退職後に働かなければ収入は年金のみとなります。年金だけで生活できない場合は、預貯金などを切り崩して生活費に充てなくてはなりません。また、平均寿命が延びたことで、必要な老後資金も増えています。

日本年金機構によると、厚生年金の場合、夫婦2人分の標準的な年金額は月額約22万円です。それに対して、総務省統計局の調査によれば、夫婦高齢者無職世帯の平均支出額は月額約25.5万円となっています。年金だけでは、生活費が毎月約3.5万円不足します。不足額は10年で420万円、20年で840万円、30年で1,260万円です。

さらに、将来年金が減額されるリスクもあります。少子高齢化によって保険料を支払う現役世代の人口が減り、年金原資の目減りが懸念されるためです。

趣味や旅行などを楽しみたい場合は、さらにお金が必要になるでしょう。

2.退職金の額は減少傾向にある

「老後の生活費が足りなければ退職金で補えばいい」と考える人もいるでしょう。しかし、退職金の支給額は減少傾向にあります。厚生労働省の「就労条件総合調査」によれば、平均退職給付額は以下の通りです。

退職者1人あたりの平均退職給付額(勤続年数20年以上かつ45歳以上の定年退職者)

大学・大学院卒

(管理・事務・技術職)

高校卒

(管理・事務・技術職)

2018年(平成30年)

1,788万円

1,396万円

2013年(平成25年)

1,941万円

1,673万円

2008年(平成20年)

2,280万円

1,970万円

2008年から2018年までの10年間で、定年退職者の退職金は大学・大学院卒が492万円、高校卒は574万円減少しています。退職金の額が減っているため、老後の生活費の不足分を退職金だけでカバーするのは難しいかもしれません。

3.預貯金だけではインフレに備えられない

インフレとは、物価が上昇することです。物価が上がると、同じものを買うのに今までより多くのお金が必要になるため、預貯金の価値は目減りしてしまいます。

物価上昇にあわせて収入も増加すれば、家計への影響は少ないでしょう。しかし、老後に年金収入のみとなった場合、大幅な収入アップは期待できません。預貯金しか持っていないと、インフレが発生した場合に生活が苦しくなる恐れがあります。

株式や不動産などの資産は、インフレ時に価格が上昇する傾向にあるため、インフレに強いと言われています。退職金を株式や不動産などの運用に回せばインフレに備えることができます。

退職金運用の考え方

退職金で資産運用を始める場合は、どのように取り組めばよいのでしょうか。ここでは、退職金運用の考え方を紹介します。

退職金を含めて保有資産を整理する

まずは退職金を含めて保有資産を整理し、資産運用にいくら回すかを決めます。

銀行口座の残高や自宅の資産価値などを調べ、どのような資産をいくら保有しているかを書き出しましょう。保有資産を把握できたら、「当面の生活費」「将来使う予定のお金」「しばらく使う予定がないお金」の三つに分けます。

当面の生活費と将来使う予定のお金は、すぐに使えるように預貯金にしておくと安心です。しばらく使う予定がないお金は、無理のない範囲で資産運用に回すといいでしょう。

長期的な視点で取り組む

退職金で資産運用を始めるなら、長期的な視点で取り組むことが大切です。資産を分散した積立投資を長く続けることで、結果的に元本割れの可能性が低くなる傾向にあります。

また、投資で得た利益を元本に組み入れて運用を続けることで、投資期間が長くなるほど資産の増え方が大きくなっていく「複利効果」も期待できます。

資産運用で安定した利益を得るためにも、短期の値動きに一喜一憂することなく、長期間投資を続けることを心掛けましょう。

お金を大きく増やそうとしない

退職金運用では、お金を大きく増やそうとしないこともポイントです。リスクをとりすぎて大きな損失が生じると、老後の生活に影響する恐れがあります。

資産運用では、高いリターンが期待できる商品ほど、リスクも高くなります。たとえば、株式は大きな利益が期待できますが、株価が値下がりして損失が生じる可能性もあります。

債券は定期的に利子が支払われ、満期まで保有すれば元本が返還されますが、期待リターンはあまり高くありません。

退職金を運用する場合は、「預貯金を多めに確保する」「株式と債券を組み合わせる」など、リスクを抑える工夫をすることが大切です。

リスクを受け入れる

退職金運用はリスクを抑えることが大事ですが、投資である以上、元本割れリスクがゼロになることはありません。リスクがなく、リターンが高い商品は存在しないため、ある程度のリスクは受け入れる必要があります。損失が発生しても生活に支障が出ることがないように、資産運用は余裕資金で取り組みましょう。

住宅ローンが残っている場合は一括返済を検討する

住宅ローンが残っている場合は、退職金で一括返済するのも選択肢です。

資産運用は元本保証ではないため、利益を得られるとは限りません。

しかし、住宅ローンの一括繰上返済を行えば、利息負担の軽減によって当初よりも支払金額を減らせます。

一括繰上返済手数料や当面の生活費を考慮する必要はありますが、状況によっては資産運用よりも住宅ローンの完済を優先しましょう。

退職金の運用におすすめの投資方法

退職金はどのような商品で運用すればよいのでしょうか。ここでは、退職金の運用におすすめの投資方法を紹介します。

投資信託

投資信託とは、不特定多数の投資家から集めた資金を一つにまとめ、専門家が株式や債券などで運用する金融商品です。運用で得られた利益は、投資金額に応じて投資家に分配されます。どのような資産・銘柄に投資するかは、投資信託ごとに定められた運用方針に基づいて、運用のプロである専門家が決定します。

投資信託は、1,000円程度の少額から購入可能です。投資家から集めた資金でさまざまな資産・銘柄に分散投資を行うため、リスクの軽減が期待できます。積立投資に対応しており、手間をかけずに運用できるのも魅力です。 一方で、投資信託は購入時や保有中、売却時に手数料がかかります。複数の商品を比較して、費用が安い投資信託を選ぶといいでしょう。

定期預金

退職金を安全に運用したい場合は、定期預金がおすすめです。「1年」「3年」など、あらかじめ預入期間を決めて利用することで、普通預金よりも高い金利が期待できます。

定期預金は預金保護制度(ペイオフ)の対象で、取扱金融機関が破綻しても元本1,000万円とその利息までは保護されます。

中途解約すると通常より低い利率が適用されますが、元本割れすることはありません。元本保証で少しでも有利に運用したい場合は、定期預金を検討しましょう。

個人向け国債

個人向け国債とは、国が発行する債券の一つです。保有中は定期的に利子が支払われ、満期を迎えると元本が返済されます。個人でも1万円から購入でき、元本割れがないのが魅力です。国が発行している債券のため、安全性は高いといえるでしょう。発行後1年以上経過すれば、中途換金も可能です。

個人向け国債は、「変動10年」「固定5年」「固定3年」の3種類があります。変動10年は、実勢金利に応じて半年ごとに適用利率が変わるのが特徴です。固定5年と固定3年は、満期まで利率が変わりません。いずれも、0.05%の最低金利が保証されています。

貯蓄型の生命保険

相続を視野に入れる場合は、貯蓄型の生命保険を利用する方法もあります。死亡保険金には相続税の非課税枠があり、「500万円×法定相続人の数」までは相続税がかかりません。そのため、生命保険を活用することで、相続税の節税効果が期待できます。

貯蓄型の生命保険は、保険料を毎月支払うことで死亡保障を確保でき、解約時には解約返戻金を受け取ることが可能です。ただし、早期に解約すると解約返戻金が払込保険料を下回り、元本割れする可能性があるため注意しましょう。

退職金の運用で失敗しないためのリスク管理

退職金の運用で失敗しないように、次の四つを意識してリスク管理を行いましょう。

1,投資は少額から始める

まとまった退職金を受け取っても、投資は少額から始めることが大切です。金融商品の価格は、さまざまな要因で変動します。一度に多額の投資を行うと、その直後に大きく値下がりして損失が生じる可能性もゼロではありません。

最初は積み立てを活用して、少しずつ投資金額を増やしていきましょう。積立投資で購入タイミングを分散させることで、価格変動の影響を和らげる効果が期待できます。

2.ハイリスクな投資には手を出さない

退職金の運用では、ハイリスクな投資に手を出さないことも重要です。ハイリスクな投資方法には、「個別株投資」「FX」「不動産投資」「仮想通貨」などがあります。

資産運用に失敗して退職金を大きく減らしてしまうと、老後の生活費が不足する恐れがあります。お金を増やすことよりも、減らさないことを重視して安定したリターンを目指しましょう。

3.仕組みが分からない商品に投資はしない

資産運用では、仕組みが分からない商品への投資はしないことも意識しましょう。「友人におすすめされた」「人気が高い」という理由で、よく分からない商品に投資するのは危険です。適切な投資判断ができず、失敗につながりやすくなります。大切な退職金を失わないためにも、商品の中身(リスク、期待リターンなど)を理解した上で投資を行いましょう。

4.金融機関の担当者に丸投げしない

金融機関の店舗に訪問すれば、おすすめの商品を教えてくれるでしょう。しかし、金融機関の担当者に丸投げするのは避けるべきです。親身になってアドバイスをしてくれるかもしれませんが、金融機関もボランティアではないため、手数料が高い商品を提案される可能性もあります。担当者任せにせず、基礎知識を身につけた上で、自分で投資先を決めることが大切です。

退職金を運用して老後のお金の不安を解消しよう

この記事のまとめ

  • 退職金支給額は減少傾向にあり、老後の生活費の不足分を退職金だけで補うのは難しい
  • 退職金をすべて預貯金にしておくと、インフレ時に資産が目減りしてしまう
  • 退職金の運用では、お金を大きく増やそうとせず、長期的な視点で取り組むことが大切
  • お金を増やしたいなら「投資信託」、安全に運用したい場合は「定期預金」「個人向け国債」がおすすめ
  • 退職金運用のリスク管理では、「少額から投資を始める」「ハイリスクな投資・仕組みが分からない商品は避ける」「担当者に丸投げしない」を意識する

高齢化や退職金支給額の減少により、退職金を運用する必要性は高まっています。ただし、資産を大きく減らすと、老後の生活費が不足する恐れがあります。投資信託や個人向け国債などでリスクを抑えながら、無理のない範囲で資産運用に取り組みましょう。

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