「密葬」とは何か?家族葬との違いから葬儀の流れ、注意点までまとめて解説

「密葬」は昔から執り行われてきた葬儀形式ですが、詳しい意味を知らない方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、密葬の意味や家族葬との違いを解説していきます。密葬の流れや注意点も紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
密葬とは?

近親者のみで執り行われ、葬儀後に本葬を行うことが多い
密葬とは一般の方を呼ばず、家族や近親者のみで執り行う葬儀の形式を指します。お通夜から葬儀、火葬までを限られた参列者のみで行い、その後に本葬やお別れ会などを行うのが特徴です。
密葬には「葬儀を秘密にする」という意味合いがあり、著名人や芸能人、大企業の経営者などが亡くなった場合などに執り行われることが多いです。特に有名人の場合、本葬にはファンやマスコミが訪れることがあり、ゆっくりとお別れができない可能性が高いです。そのため、本葬の前に近親者のみでお別れをするために密葬が行われるのです。
密葬と他の葬儀の違い
一般葬との違い
密葬と一般葬は、基本的な葬儀の流れは変わりません。大きく違うのは、訃報を知らせる範囲です。一般葬は親族だけでなく故人の友人など、できる限り多くの人に訃報を知らせるのが一般的です。一方、密葬はごく親しい近親者のみで行われるため、訃報を知らせる範囲がかなり限られています。
家族葬との違い
家族葬と密葬は、ごく近しい人のみで執り行われる点は同じです。この二つの違いは、葬儀後に本葬やお別れ会が行われるかどうかにあります。家族葬は単体で成立する葬儀であるため、葬儀の後に改めてお別れ会などを行うことはありません。一方、密葬は葬儀の後にお別れ会や本葬を行うことが前提となることが多いため、密葬のみを行うことはあまりありません。
密葬の流れ

密葬の流れや手順は、一般葬や家族葬と大きな違いはありません。ここからは、仏式の密葬の流れを順番に解説していきます。
1日目
葬儀社に連絡する
故人が亡くなったら、まずは葬儀社に連絡をします。故人の臨終後はさまざまな手続きに追われるため、前もって葬儀社をピックアップしておきましょう。
ご遺体を搬送する
故人が病院で亡くなった場合、ご遺体を安置場所へ搬送する必要があります。葬儀社のスタッフが搬送の手配を行ってくれるため、自宅や斎場の安置所などにご遺体を運びましょう。自宅にご遺体を安置する場合は、故人を寝かせておく布団などを準備しておきます。
葬儀社と打ち合わせを行う
ご遺体を安置したら、喪主と施主を中心に葬儀社のスタッフと打ち合わせを行います。この打ち合わせでは、密葬の日程や内容、僧侶の手配、会場の場所などを相談します。葬儀内容や費用に関する不安がある場合は、トラブルにならないよう打ち合わせの段階で質問しておきましょう。
葬儀に参列してほしい人に連絡する
葬儀の内容が決まったら、密葬に参列してほしい人へ訃報の連絡をします。参列してほしい人をあらかじめ決めておき、リストを作成しておけば、迷わず連絡ができるでしょう。また、訃報を連絡する際は情報が広く伝わらないよう、密葬であることを必ず伝えるようにしてください。
2日目
納棺
納棺とは故人を仏衣で包み、故人の好きだったものやお花などと一緒に棺へ納めることです。金属やプラスチックなどの燃えないものや、爆発の恐れがあるものは棺に入れられません。何を棺に納めるべきか迷ったら、火葬場や葬儀社のスタッフに確認をとりましょう。
お通夜
お通夜とは、葬儀や告別式が行われる前夜に故人と関係のある人が集まり、別れを惜しんだり冥福を祈ったりする儀式のことです。お通夜では僧侶による読経や焼香が行われ、その後通夜振る舞いをするのが一般的です。
3日目
葬儀・出棺
お通夜を執り行った翌日は、葬儀・告別式を執り行います。葬儀では喪主の挨拶や僧侶による読経、参列者の焼香などが行われます。葬儀が終わった後はご遺体を出棺し、火葬場へと移動します。
お別れの儀式を行う
火葬場に到着したら、喪主は火葬場のスタッフに火葬許可証を提出します。火葬許可証がないと火葬が行えないため、忘れずに持参しましょう。その後、火葬炉の前で「お別れの儀式」を行い、故人と最後のお別れをします。お別れの儀式では僧侶による読経が行われますが、何か特別なことをしたい場合は、前もって葬儀社のスタッフに相談しておきましょう。
火葬
お別れの儀式が終わった後は、棺を火葬炉に入れて火葬が始まります。火葬は故人の体格や火葬炉の種類によって異なりますが、40分から1時間30分ほどで終わります。
お骨上げ
火葬が終わった後は、故人の遺骨を骨壷に納める「骨上げ」という儀式を行います。骨上げは2人1組となって行い、故人との関係が深い人から順番に骨を拾って壷に納めます。最後に喪主が喉仏の骨を骨壷に入れたら、骨揚げは終了です。その後、火葬場のスタッフが納骨の際に必要な「埋葬許可証」を発行してくれます。
密葬にかかる費用

密葬そのものにかかる費用は葬儀の内容によって異なりますが、相場は数10万〜100万円ほどとされています。一般的な葬儀の相場は140万円ほどなので、ここだけを見ると、密葬は費用を抑えて葬儀を執り行えると言えます。これは、密葬が身内のみで執り行う小規模な葬儀であり、返礼品や会食などにかかる費用を抑えられるためです。
ただし、密葬の後にはお別れ会や本葬が行われるため、これらの費用も準備しておく必要があります。故人の社会的地位や知名度が高ければ高いほど、その分お別れ会や本葬の規模も大きくなるでしょう。密葬から本葬までを含めると、一般的な葬儀よりも費用が高額になることも多いです。
密葬を行う際の注意点

密葬は、一般葬や家族葬にはない注意点があります。トラブルを防ぐためにも、密葬を検討している場合は以下の注意点に目を通しておきましょう。
密葬に慣れた葬儀社を選ぶ
密葬を執り行う場合は、密葬に慣れている葬儀社を選ぶようにしましょう。密葬に不慣れな葬儀社だと、故人の情報が外部に漏れてしまったり、準備に手間取ったりといったトラブルが起こる恐れがあるためです。
親族の了承を得る
密葬を行う場合、親族には前もって了承を取っておきましょう。勝手に決めてしまうと後々トラブルになる可能性があるため、必ず密葬を執り行う旨を相談し了承を得ておきましょう。
情報が漏れないよう注意する
ご遺体の安置場所を自宅にした場合、故人が亡くなったことがご近所の方に知られてしまう恐れがあります。密葬を執り行う場合は、情報が漏れないようご遺体の安置場所には注意しましょう。なるべく自宅にご遺体を安置するのは避け、葬儀社や斎場の安置所を利用するのがおすすめです。
また、密葬を執り行う際は、情報が漏洩しないよう十分に注意しましょう。参列者にも葬儀を秘密にしてもらう必要があるため、必ず密葬であることを伝えましょう。
密葬のマナー

喪主・遺族側のマナー
案内は最小限にする
密葬を執り行う場合、案内は最小限に留めましょう。広く案内をしてしまうと、「少人数で静かに故人を見送る」という密葬の目的が達成できなくなるためです。訃報連絡は家族や交流があった親族、故人の親友などに留めておき、必ず密葬である旨を伝えてください。
参列者以外には後日挨拶状を送る
密葬の案内をしない人には、挨拶状を送るのがマナーです。密葬は限られた近親者しか参列できないため、参列できなかったことを残念に感じる方もいるでしょう。そのような方のために、生前のお礼や訃報連絡が遅れてしまったことへのお詫びを込めて、密葬を終えてから挨拶状を送るようにしましょう。
弔辞は依頼しない
一般葬では故人と親しかった友人に弔辞を依頼するのが一般的です。しかし、密葬は故人と親しかった人のみで執り行われるため、弔辞を依頼することはあまりありません。
参列者のマナー
供花は送らない
密葬に参列する場合、供花を贈らないのがマナーです。密葬は、故人を静かに見送るために行われる葬儀の形式です。供花を贈ると、ご遺族が対応に追われたり余計な気遣いをさせてしまったりする恐れがあります。
案内されていない場合は参列を控える
直接案内されていなくても、もしかすると人づてに密葬が行われると知ることがあるかもしれません。しかし、案内がされていないのに葬儀に参列するのは失礼にあたるため、密葬があることを知っても参列は控えるのがマナーです。また、密葬のことを知っても、そのことを周囲に広めるのは避けましょう。
弔電は送らない
密葬の場合、弔電を送るのは避けましょう。密葬は周囲に知らせずに行われるものであるため、弔電を送ることがご遺族に対して失礼になる可能性が高いためです。
喪服を着用する
一般葬と同じく、密葬でも喪服を着用するのがマナーです。男性はブラックのフォーマルスーツと白いシャツ、黒のネクタイ、黒の革靴を身に付けます。女性は黒いワンピースかアンサンブル、ストッキング、黒いパンプスを着用しましょう。
マナーや注意点を踏まえて、密葬を執り行いましょう

この記事のまとめ
- 密葬は本葬の前に近親者のみでお別れをするための葬儀
- 密葬には「葬儀を秘密にする」という意味合いもある
- 密葬の案内は最小限にとどめ、参列者以外には後日挨拶状を送る
- 密葬では供花や弔電は送らない
- 案内されていない場合は、葬儀があることを知っていても密葬への参列は控える
密葬は、限られた身内のみで執り行う葬儀です。家族葬とは異なり、告別式や火葬が終わった後に本葬やお別れ会などが行われることが一般的です。また、密葬は「葬儀を秘密にする」という意味合いがあるため、守るべきマナーや注意点が数多くあります。密葬を執り行う際や密葬に参列する際は、その点に注意しましょう。

2006年に葬儀の仕事をスタート。「安定している業界だから」と飛び込んだが、働くうちに、お客さまの大切なセレモニーをサポートする仕事へのやりがいを強く感じるように。以来、年間100件以上の葬儀に携わる。長年の経験を活かし、「東京博善のお葬式」葬祭プランナーに着任。2023年2月代表取締役へ就任。