高齢者におすすめのおやつ8選!食べる量や時間帯などの注意点も解説

高齢になると、食欲の低下や一度に食べられる量の減少により、1日3回の食事では必要な栄養素を摂れなくなることがあります。そのようなときに取り入れたいのが、おやつです。本記事では、高齢者におすすめのおやつを紹介します。おやつの役割や注意点も合わせて解説するため、参考にしてみてください。
武庫川女子大学生活環境学部食物栄養学科卒業。
管理栄養士として病院に勤務し、患者様の栄養管理及び栄養指導に従事。
糖尿病患者や腎臓病患者を中心に、病状の進行を防ぐための食事指導を行う。食事と健康、美容に関する記事を中心に管理栄養士ライターとして活動中。
高齢者におやつが必要な理由と役割

高齢になると、消化吸収機能や食欲の低下によって1回の食事量が減り、1日3食の食事を摂っていても必要な栄養素を補いきれない場合があります。そのような不足分を補ってくれるのが、おやつです。
おやつと聞くと甘いお菓子やスナック菓子などを思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、高齢者にとってのおやつはそのようなものではなく、栄養補給を目的とした「補食」と捉える必要があります。ここでは、高齢者にとってのおやつが果たす役割について解説します。
エネルギー補給
高齢者は、加齢に伴い1食で食べられる食事量が減る傾向にあります。食事量が減ることにより活動に必要なエネルギーが十分に補給できず、力が出ない、やる気が起きないといった症状が現れます。そのような場合、おやつでエネルギーを補うことで必要なエネルギーを確保できるのです。
水分補給
高齢者は、体の水分量の減少、喉の渇きに鈍感になるなどの理由で無意識のうちに脱水状態になることがあります。水分を多く含むおやつを摂ることで水分補給ができ、脱水予防に効果的です。特に夏場などは、水分の多い果物やゼリーなどを摂ることで水分を補給できます。
栄養素の補給
たんぱく質、ビタミン、ミネラル、食物繊維など必要な栄養素はさまざまで、全てを食事だけで充足させるのは高齢者にとっては難しいことです。そのため、高齢者はおやつを摂ることでこれらの栄養素を補給することが大切です。
高齢者におすすめのおやつ8選

高齢者のおやつが果たす役割は、不足する栄養素やエネルギー、水分の補給です。そのためおやつを食べる際には、補いたい栄養素を含む食品を選ぶ必要があります。また、高齢者は柔らかいものが食べやすいです。ここでは、高齢者におすすめのおやつを8種類紹介します。
①果物
果物には、ビタミンCが多く含まれています。ビタミンCは抗酸化作用を持つ栄養素で、体内で発生した活性酸素の働きを抑え、細胞の老化を防ぐ働きがあります。また、免疫力を高める作用もあるため、感染症などの予防にも効果的です。免疫力が低下しやすい高齢者は、果物を積極的に食べることをおすすめします。
②乳製品
牛乳やヨーグルトなどの乳製品は、たんぱく質の補給におすすめです。高齢者では、肉や魚などのおかずが食べにくくなることもあります。そんなときには、おやつに乳製品を取り入れることで不足するたんぱく質を補えます。牛乳をそのまま飲むのは苦手という方は、コーヒーや紅茶に加えるだけでも十分です。
そのほかにも、チーズ、アイスクリームなども手軽に食べられるおやつです。ただし、アイスクリームの中で「ラクトアイス」は乳成分が少なく、植物油脂が主成分になります。成分表示を確認し「アイスクリーム」もしくは「アイスミルク」と記載されたものを選びましょう。
③おにぎり
食事の際にご飯が進まない場合や、少量しか食べられない場合は、おやつにおにぎりを食べるのもおすすめです。ご飯は、最適なエネルギー補給源といえます。特に、おにぎりは作り置きしておけば、好きなときに手軽に食べられるためとても便利です。
おにぎりの具に鮭やおかか、たらこなどを入れるとたんぱく質補給にもなります。また、一口サイズのおにぎりであれば食欲のないときに食べやすいためおすすめです。
④プリン、ゼリー
プリンやゼリーは喉ごしがよく、食欲がないときでも食べやすいおやつです。また、しっかり噛まなくても食べられるため、嚥下機能が低下した高齢者のおやつとしてもおすすめできます。カロリー補給、水分補給にも役立つため、常備しておくと手軽に食べられて便利です。
⑤さつまいものお菓子
さつまいもはビタミンや食物繊維を多く含み、エネルギー源にもなるおすすめ食材です。ゆっくり加熱した焼き芋は、砂糖を加えなくても甘く、素材そのものの味を楽しめます。
嚥下機能が低下し、飲み込みに不安のある高齢者は、パサパサした焼き芋が食べにくい場合もあります。そんなときは、焼き芋を裏ごししてバターと少しの砂糖を加えて成型し、オーブンで少し焼いてスイートポテトにすると食べやすいでしょう。食感もしっとりとしていて高齢者におすすめのおやつです。
⑥あんこのお菓子
あんこの原料である小豆には、食物繊維、ビタミンB1、カリウムなどの栄養素が豊富に含まれています。栄養補給に加え、便秘の改善や疲労回復効果も期待できるためおやつに取り入れてみてください。
あんこのお菓子には、ようかん、お饅頭、ぜんざいなどがあります。好みに合ったものを選んで構いませんが、市販のものは砂糖が多量に使われているものが多いため、可能であれば手作りのあんこがおすすめです。また、嚥下機能に不安のある高齢者の方は、粒あんよりもこしあんを選びましょう。
⑦カステラ、クッキー
小麦粉を使ったカステラ、クッキーなどのお菓子は、少量でエネルギーの補給が可能です。食欲はないけれど甘いものなら食べられそう、という場合のおやつに試してみてください。しかし、砂糖や油脂が大量に含まれているため、食べ過ぎには気をつけましょう。
⑧野菜を使ったお菓子
野菜スティックや野菜チップス、野菜のスムージーなど、野菜を使ったお菓子も高齢者のおやつにおすすめです。食事だけでは不足しがちなビタミン、ミネラル、食物繊維の補給に最適です。
硬くて食べにくい野菜は、ペースト状にしてお菓子に加えると食べやすくなります。また、お菓子にすることで、苦手な野菜も抵抗なく食べやすくなるため、ぜひ取り入れてみてください。
高齢者のおやつの適正量

高齢者にとって必要なおやつですが、食べ過ぎはよくありません。おやつを食べる際には適正量を守って食べる必要があります。ここでは、高齢者がおやつを食べる際の適正量について解説します。
目安は100kcal~200kcal
高齢者がおやつを食べる際、1日に必要なエネルギー量の10%程度を目安に食べることをおすすめします。以下に65歳以上の高齢者が1日に必要なエネルギー量を示しています。おやつで摂取するカロリーは以下の10%程度なため、100kcal~200kcal程度が適量です。
1日に必要なエネルギー量の目安 | |||
---|---|---|---|
男性 |
女性 |
||
65~74歳 |
2,050kcal~2,400kcal |
1,550kcal~1,850kcal |
|
75歳以上 |
1,800kcal~2,100kcal |
1,400kcal~1,650kcal |
100kcal~200kcalのおやつの目安
- バナナ(1本)130kcal
- リンゴ(2/3個)100kcal
- みかん(1個)45kcal
- 焼き芋(1/2本)160kcal
- カステラ(1切れ50g)156kcal
- 練りようかん(1切れ50g)145kcal
おやつの適正量はなるべく100kcal~200kcalの範囲内を目安にしてみてください。ただし、種類によっては砂糖や油脂が多く含まれているものもあるため、同じものばかりを食べるのではなく、毎日違ったものを食べるなどして偏らないようにしましょう。
高齢者のおやつの注意点

おやつを食べる際には、食品選びのほかにも注意したいポイントがいくつかあります。ここでは、高齢者がおやつを食べる際に注意することを解説します。
栄養バランスを考慮した内容にする
高齢者のおやつは、食事で不足する栄養素を補うことが目的です。そのため、食事の内容を含めて栄養バランスを考慮する必要があります。もちろん、おやつタイムは高齢者にとっても楽しみであることは変わらないため、甘いものや自分の好きなお菓子を食べても構いません。
しかし、砂糖の摂り過ぎ、同じものばかりを毎日食べるといったことがないよう注意が必要です。できる限り、食事で不足するたんぱく質やビタミン、食物繊維の多いものを選び、1日の栄養バランスがよくなるよう心がけましょう。
嚥下機能に合ったものを選ぶ
高齢者のおやつ選びは、嚥下機能に合ったものを選ぶことも重要です。気軽に食べられる分、うっかり誤嚥したり喉に詰まったりということがないよう注意しましょう。心配な方へのおすすめは、ムースやゼリー、プリンなどの柔らかい食品です。また、果汁などはとろみをつけて食べやすい形態にすると安心して食べられます。
ナッツ類や固いせんべいなど若い頃は食感が好きでよく食べたという方も、高齢者にとっては固い食感が食べにくさの原因となります。また、パサパサして口の中の水分が奪われるようなものも、誤嚥の危険性があるため避けましょう。
食べる時間を決める
おやつを食べる時間を決めることも大切です。不規則な時間におやつを食べていると、食事の時間にお腹がいっぱいでご飯が食べられなくなる原因になります。また、就寝前のおやつは胃や腸の負担になったり、翌日の胃もたれの原因にもなったりするため好ましくありません。
高齢者のおやつは、食事と食事の間の時間が適切です。一般的には、15時くらいが理想的です。おおよその時間を決めて、食べるようにしましょう。
食べ過ぎないようにする
栄養補給だからといって食べ過ぎるのも、体によくありません。先述の通り、1日の必要エネルギー量の10%以内、100kcal~200kcal程度を目安に食べましょう。また、食欲はあるのに夕食が食べられない場合は、おやつを食べ過ぎている可能性もあります。
おやつは習慣化するのではなく、あくまでも食べられないときの補食として捉え、通常の食事量を確保することを優先しましょう。
高齢者のおやつにおすすめレシピ

ここでは、高齢者のおやつにおすすめの手作りレシピを紹介します。
さつまいもとかぼちゃの茶巾絞り
さつまいもとかぼちゃはビタミン豊富な野菜ですが、甘味が強くおやつに適しています。蒸して潰すことで柔らかい食感になり、高齢者に食べやすいメニューです。
材料(4個分)
- さつまいも 100g
- かぼちゃ 100g
- バター 小さじ2
- 砂糖 小さじ4
作り方
- さつまいもとかぼちゃは3㎜の薄さに切り、電子レンジで4分ほど加熱する
- ①を熱いうちに潰し、バターと砂糖を加えて混ぜ合わせる
- 柔らかい状態のままラップで包み、成形したら完成
チョコレートマフィン
高齢者にも人気のチョコレートも、おやつとして食べられます。完熟バナナを加えることでしっとりするため口内の水分を奪われにくく、食べやすいマフィンです。
材料(6個分)
- 米粉 120g
- ココア 10g
- ベーキングパウダー 5g
- 完熟バナナ 2本
- 牛乳 60ml
- チョコチップ 20g
くずまんじゅう
高齢者が好む和菓子も手作りできます。くず粉とこしあんの組み合わせは、柔らかさもありつつ適度な粘度があるため誤嚥しにくいのが特徴です。
材料(4人分)
- こしあん 80g
- くず粉 20g
- 砂糖 大さじ1
- 水 200ml
- 黒蜜 お好みで
作り方
- 鍋に水、くず粉、砂糖を加えて火にかけ混ぜ合わせ、透明になったら火を止める
- 台の上にラップを広げて水を吹きかけ、その上に①のくずをのせて広げる
- 一口大にして丸めたあんこをのせ、くるっと包む
- ③をラップに包んだまま氷水で冷ましたら完成
りんごの紅茶コンポート
生のリンゴは硬く、高齢者にとって食べにくい場合もあります。そんなときにはコンポートにすると柔らかい食感になり、とても食べやすくなります。
材料(2人分)
- リンゴ 1個
- 紅茶 200ml
- はちみつ 大さじ1
- レモン汁 大さじ1
作り方
- リンゴは皮をむいて8等分のくし形に切る
- 鍋に全ての材料を入れて煮込む
- 煮立ったら8分火にかけ、リンゴを裏返しさらに8分煮る
- 火を止め、冷まして味を染み込ませて完成
高齢者のおやつは栄養と水分の補給ができ、嚥下能力に合ったものを選ぶようにしましょう

この記事のまとめ
- 高齢者にとっておやつは、食事で補いきれない必要な栄養素を補給する役割がある
- 高齢がおやつを選ぶ際は、不足しがちな栄養素を含む食品を積極的に選ぶとよい
- 1日の必要エネルギー量の10%(100~200kcal程度)を目安におやつを食べる
- おやつでも嚥下機能を考慮した内容にし、誤嚥には十分注意する
- おやつを食べる時間、食べる量を適正に決め、食べ過ぎないようにする
おやつは、高齢者の心と体の健康維持に必要な食事です。正しい知識を持って食べる内容を選び、安心安全におやつタイムを楽しみましょう。