高齢者のご飯の量は何グラム?食事例や目安となる摂取カロリーも解説
高齢者のご飯の量は何グラムが適切かご存じですか?高齢者の健康的な食事を考える上で、適切なご飯の量を食べることは重要です。そこで本記事では、高齢者は何グラムのご飯の量が適切なのかを解説します。必要な栄養素や具体的な食事例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
武庫川女子大学生活環境学部食物栄養学科卒業。
管理栄養士として病院に勤務し、患者様の栄養管理及び栄養指導に従事。
糖尿病患者や腎臓病患者を中心に、病状の進行を防ぐための食事指導を行う。食事と健康、美容に関する記事を中心に管理栄養士ライターとして活動中。
高齢者のご飯の量は何グラム?
ご飯(お米)は日本人の主食として、最も食べる機会の多い食品です。しかし、若い頃はもっとたくさん食べられたのに加齢とともに食べられなくなった、あるいは、若い頃と同じ量を食べているけれどもこの量を食べていて大丈夫だろうか、そのような疑問を抱く高齢者の方は多いのではないでしょうか。
ここでは、高齢者に適切なご飯の量について1日に占める炭水化物の割合やカロリーの観点から解説します。
高齢者に必要な炭水化物量
日本人の食事摂取基準(2020年版)では、65歳以上の高齢者において、1日の必要エネルギー目安量の中で炭水化物が占める割合は男性、女性ともに50~65%が理想的とされています。つまり、食事の約半分のエネルギーは炭水化物から摂るのがよいということです。
食事は主食、主菜、副菜をバランスよく組み合わせて食べるのが理想的です。その中で、ご飯は主食に分類され、活動するのに必要なエネルギーの源です。主食はご飯のほかに、パンやうどん、パスタなどがあり、炭水化物を主成分とする食品を指します。
ただし、炭水化物の中にはイモ類やかぼちゃ、砂糖なども含まれるため、目安として、1日のカロリーの約半分を炭水化物で摂取すると考えましょう。
1日に必要なエネルギー量
ご飯から摂取するべきカロリーを正確に知るためには、自分が1日にどれくらいのカロリーを摂取しなければならないのかを知る必要があります。
1日に必要なエネルギー量は体格や活動量によって異なります。65~74歳の高齢者における活動量別の1日に必要なエネルギー量を次の表にまとめました。
活動量 |
65~74歳 男性 |
65~74歳 女性 |
75歳以上 男性 |
75歳以上 女性 |
---|---|---|---|---|
少ない |
2,050kcal |
1,550kcal |
1,800kcal |
1,400kcal |
普通 |
2,400kcal |
1,850kcal |
2,100kcal |
1,650kcal |
多い |
2,750kcal |
2,100kcal |
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【結論】高齢者に必要な1食のご飯の量は約150g~280g
主食の割合やカロリーの観点から結論づけると、高齢者のご飯の適量は約150g~280gです。
先述した通り、男性女性ともに1日に必要なエネルギー量の50~65%を炭水化物から摂取することが理想のため、高齢者ではだいたい1日に700〜1,300kcalをご飯などの炭水化物から摂るのが目安となります。ご飯100gあたりのエネルギーは156kcalのため、これらを最小値と最大値に当てはめると、高齢者に必要な1食のご飯の量は約150g~280gということです。
高齢者が食事から摂るべき栄養素
高齢者が健康を維持するために必要な食品は、ご飯だけではありません。さまざまな食品からいろいろな栄養素をバランスよく摂る必要があります。ここでは、高齢者が食事から摂る必要のある栄養素について解説します。
炭水化物
炭水化物はご飯、パン、麺類などに多く含まれます。活動のエネルギー源となる栄養素で、欠かすことのできない三大栄養素の一つです。炭水化物が不足するとエネルギー不足で疲れやすくなったり、思考力が低下したりなどの弊害が出てきます。
また、不足するエネルギーを補うために肝臓でたんぱく質を分解し、糖に変換する働きが行われるため、肝臓に負担がかかることもあります。動く量が少ない高齢者でも、ご飯をはじめとした炭水化物をきちんと摂るようにしましょう。
たんぱく質
たんぱく質は、肉、魚、卵、大豆製品などに多く含まれる栄養素です。私たちの体の臓器や筋肉、皮膚、髪などはたんぱく質で構成されており、体を作る重要な成分です。不足すると骨格筋や筋力の低下、免疫力の低下などを引き起こす原因となります。
特に高齢者においては、たんぱく質不足がフレイルにつながるため、生活の質を維持するためにも積極的に摂りたい栄養素です。
脂質
脂質は、細胞膜やホルモンを構成する材料となる栄養素です。植物油やバター、肉類に含まれる脂のほか、ナッツ類やアボカドなども脂質を多く含む食品です。脂質は1gあたり9kcalのエネルギーを持つため、少量で高エネルギーを補給できます。不足するとエネルギー不足、疲労感、免疫力の低下の原因となります。
高齢者は、1日に必要なエネルギー量の20~30%を脂質から摂るのが目安です。しかし、脂質の摂り過ぎは肥満や生活習慣病の原因となるため、注意が必要です。また、できる限り良質な脂質を選ぶようにしましょう。
ビタミン
ビタミンは3大栄養素であるたんぱく質、脂質、炭水化物の作用を十分に発揮するための潤滑油のような働きをしています。体内で働くビタミンは13種類あり、体内ではほとんど作ることができません。よって、ビタミンは食品から摂取する必要があります。
食品によって含まれるビタミンの種類は異なりますが、肉類、レバー、魚介類、野菜類、果物類、などさまざまな食品に含まれています。バランスよくいろいろな食品を摂取することで、ビタミンが不足しないよう心がけましょう。
ミネラル
ミネラルもビタミンと同様に、体のあらゆる生理作用に役立っています。日本人の食事摂取基準(2020年版)では、13種類のビタミンについて推奨量や目安量が示されています。種類によって不足しやすいミネラル、過剰摂取が問題となるミネラルがあります。
高齢者において不足しやすいのが、カルシウム、鉄、亜鉛です。これらのミネラルが不足すると、貧血やめまい、脱力感、骨粗鬆症などのリスクとなります。一方で、ナトリウムの過剰摂取による高血圧が問題となっています。塩分の摂り過ぎには注意が必要です。
適正量のご飯を取り入れた食事例
高齢者に適正な1食のご飯の量は約150g~280gということが分かりました。では、実際に約150g~280gのご飯を主食にした食事とはどのようなものなのでしょうか。ここでは、最も量が少ない「活動量が少ない75歳以上の女性」のご飯の量を取り入れた食事例を紹介します。
食事例①
朝食 |
昼食 |
夕食 |
---|---|---|
ご飯 150g |
親子丼 (ご飯 150g) |
ご飯 150g |
わかめと豆腐の味噌汁 |
ほうれん草の浸し |
豚汁 |
納豆 |
清汁 |
焼き魚 |
フルーツヨーグルト |
野菜サラダ |
|
酢の物 |
※活動量や体型に合わせてご飯の量は調整可能です。
親子丼や牛丼、カレーライスなど丼もののご飯がメインになる献立の場合でも、ご飯を計量することで食べ過ぎを防げます。
食事例②
朝食 |
昼食 |
夕食 |
---|---|---|
ご飯 150g |
ご飯 150g |
ご飯 150g |
卵焼き |
サバの味噌煮 |
鶏のから揚げ |
野菜サラダ |
ひじきの煮物 |
コールスローサラダ |
果物 |
スライストマト |
小松菜の煮浸し |
果物 |
味噌汁 |
主食、主菜、副菜を意識するだけでバランスのよい献立が完成します。ご飯150gが少ないと感じる場合は、よく噛んでゆっくり食べるようにすると満腹感が得られやすくなるでしょう。また、本記事で紹介した食事例には食物繊維を多く含む食品も多く取り入れられているため、より噛む回数が増える献立となっています。
高齢者がご飯の量を適量にするポイント
ここまで、高齢者に必要な主食量を解説してきました。では、実際に適量のご飯を食べるにはどのようにしたらよいのか、気になるところではないでしょうか。ここからは、高齢者がご飯の量を適量にするためのポイントを解説します。適量を守るための参考にしてみてください。
計量する
高齢者がご飯の量を適正に守る上で最も大切にしてほしい習慣が、計量することです。食べる前にご飯の量を計量することで食べ過ぎを防げます。これぐらいだろうと思って食べていても実際に何グラムか把握していないと、正しい量ではない可能性もあります。
自分の必要なご飯の量がどれくらいなのかを把握できるようになるまでで構いませんので、ご飯の量を計量する習慣をつけましょう。
菓子類の間食を控える
高齢者がご飯の量を適量にするためには、菓子類の間食を控えることも大切です。
病気や食欲不振がないのに、普段食べているご飯の量が高齢者の目安量に比べて少ない場合は他の食品を食べ過ぎている可能性もあります。特に気をつけたいのが間食で菓子類や甘い飲み物を摂り過ぎていることです。
菓子類や甘い飲み物を摂っているとお腹がいっぱいになり、ご飯が食べられなくなってしまいます。これらを控えることで、適量のご飯を食べられる空腹感を持つことを心がけましょう。
食事が摂れないときには補食で補う
適量の食事量が摂れないときには、栄養を補えるヨーグルト、チーズ、フルーツなどで補食を摂りましょう。
高齢者は様々な理由で食事が摂れず、必要なご飯の量が不足している場合もあります。
1日3回の食事で必要なご飯の量が食べられない場合には、食事時間に限らず、お腹が空いたときにおにぎりを食べるなど補食で補うようにしましょう。
適度な運動をする
高齢者が適正なご飯の量を食べるためには、体を動かして空腹感を得ることも大切です。適度な運動を日々の習慣にすることで、生活リズムも整い、自然とお腹が空く体質にもなります。ウォーキングや家事など、軽い運動で構いませんので、適度な運動を心がけてみましょう。
高齢者にとって適量のご飯の量を把握して、バランスの良い食事を心がけましょう
この記事のまとめ
- 高齢者に必要な炭水化物は、1日に必要なエネルギー量の約半分
- 高齢者に必要なご飯の量は、個人差はあるものの1食150~280gが適量
- 適切なご飯の量を守りながら、他の栄養素も不足しないようバランスよく食べる必要がある
- 高齢者がご飯の量を適量にするためには、計量することが大切
- 必要なご飯の量を食べるため、間食を控えたり運動したりするなど空腹感を持つことも大切
高齢者に必要なご飯の量を知ることは、健康を維持するために必要な栄養素の量を知ることにつながります。普段からご飯の量を意識して栄養素の過不足を防ぎ、バランスのよい食事を心がけましょう。