長寿は食事が重要!長生きするためにとっておきたい栄養素や食べ物を解説
長生きするために毎日の食事はとても重要です。加齢に伴い食の好みは変わり、噛む力や飲み込む力は衰えてきます。長生きするための食事はそのような変化も考慮し、必要な栄養素をしっかり摂る必要があります。そこで本記事では、長寿のために摂りたい栄養素や食べ物について解説します。
武庫川女子大学生活環境学部食物栄養学科卒業。
管理栄養士として病院に勤務し、患者様の栄養管理及び栄養指導に従事。
糖尿病患者や腎臓病患者を中心に、病状の進行を防ぐための食事指導を行う。食事と健康、美容に関する記事を中心に管理栄養士ライターとして活動中。
長寿のための食事の摂り方
私たちの身体は食事で摂った食べ物からできています。特に高齢者では、食事の果たす役割はとても大きいです。ここでは、長寿のための食事の摂り方を解説します。
毎日決まった時間に食べる
食べた物は、消化されるのに2~3時間かかります。不規則な食生活は、消化器官を休ませることができません。長寿のためには消化器官が健康なことも大切です。食事の間隔は4~5時間程度あけて、ある程度決まった時間に食べましょう。
さらに、適正な血糖値を維持するためにも決まった時間に食べることが大切です。空腹が続くと飢餓状態になり、血糖値が下がります。その状態で食べると、身体は血糖値を下げるホルモン(インスリン)を大量に分泌し脂肪として蓄えるため、肥満の原因になります。
このような身体の仕組みを考慮し、食事は毎日、ある程度決まった時間に食べることが健康的で長寿のための秘訣といえます。
欠食しない
食事の回数が減ると、摂取エネルギーは不足します。摂取エネルギーが不足すると、身体は体のたんぱく質を分解して活動のためのエネルギーを生み出そうとします。その結果、身体の筋肉が減ってしまうのです。
高齢者にとって筋肉が減ることは、生活の質が下がり長寿の妨げになる問題となります。筋肉が減って体力が落ちると、活動する気力まで失われてしまう事もあります。そのような状態にならないためにも、食事の回数を減らさず、規則正しく食べるようにしましょう。
栄養バランスの整った食事を摂る
長寿のためには栄養バランスの整った食事を摂ることも大切です。栄養バランスの整った食事とは、主食・主菜・副菜の揃った食事を指します。主食・主菜・副菜を揃えることで、身体に必要な栄養素を偏りなく摂ることができます。
丼物や麺類、パンなどの単品料理ですませる食事では、必要な栄養を摂ることはできません。このような食事が続くと身体は栄養不足になり、体調不良の原因になります。長寿のためにも、栄養バランスの整った食事を摂るように心がけましょう。
長寿の秘訣は低栄養を防ぐ食事
長寿のための食事で最も意識したいのは「低栄養を防ぐ」ことです。高齢になると、肥満よりも低栄養による健康リスクが大きくなります。ここでは、高齢者の低栄養を防ぐための食事のポイントを解説します。
高齢者の低栄養とは
高齢になると、噛む力や飲み込む機能が低下していきます。その結果、徐々に食事量が減り、活動するためのエネルギーや筋肉、皮膚、内臓を作るたんぱく質などの栄養素が慢性的に不足した状態になる場合があります。この状態を低栄養といいます。
気づかないうちに食事量が減っていたり、栄養が偏った食事を続けていたりすると、低栄養になっている恐れがあるため注意しましょう。
高齢者の低栄養の症状
- 体重減少
- 筋肉量や筋力の低下
- 風邪や感染症にかかりやすい、治りにくい
- 傷や褥瘡(床ずれ)が治りにくい
- 下半身がむくみやすい
低栄養を防ぐポイント
高齢者にとって低栄養は、肥満よりも健康を害する問題となります。長寿のためには、低栄養にならないよう注意することが大切です。ここでは、低栄養を防ぐ食事のポイントを解説します。
摂取カロリーが不足しないようにする
摂取カロリーが不足すると体重が減り、体力も低下します。体重の減少は、低栄養を把握するのに一番分かりやすい症状です。摂取カロリーの不足には十分注意し、定期的に体重をチェックするようにしましょう。
食欲がない時はおかずから食べる
食欲がない時は、たんぱく質のおかずの肉・魚・卵などから食べましょう。たんぱく質は筋肉を作る材料です。また、体力を維持するためにも必要な栄養素であるため、不足しないように意識して摂ることが大切です。食事のはじめにご飯や野菜から食べてしまうと、それだけで満腹になり他のおかずが食べられなくなる場合があります。
その結果、たんぱく質が十分に摂れず、低栄養になるリスクが高くなります。ご飯や野菜も身体にとって必要な食材ですが、たんぱく質のおかずから食べることを心がけましょう。
少量しか食べられない時は補食で補う
食欲がない時や一度に食べられる量が減っている場合は、補食を取り入れて必要な栄養素を補いましょう。補食とは、1日3回の食事だけでは不足してしまう栄養素を補うために食事の回数を増やすことです。
長寿におすすめの補食は、たんぱく質やカルシウム、ビタミン、食物繊維、水分補給ができる食べ物です。たまには甘い物を食べることもよいですが、食べ過ぎは血糖値の上昇や肥満の原因にもなるため注意しましょう。また、次の食事に影響がでないように、あくまでも補食として食べ過ぎないようにしましょう。
補食におすすめの食べ物
- たんぱく質、カルシウムを補える食品:ヨーグルト、チーズ、アイスクリーム、プリン
- ビタミンを補える食品:果物、フルーツゼリー、フルーツジュース
- 食物繊維を補える食品:野菜を使ったお菓子(さつまいも、かぼちゃの和菓子など)、トマトのコンポート、寒天ゼリー
- 水分補給ができる食品:お茶ゼリー、牛乳、プリン
家族や友人と共食の時間を作る
ひとりでとる食事は食べる楽しみが半減し、食欲も減ります。また、ひとりで食事をする場合は手の込んだ料理を作るのが面倒で、簡単にできる栄養バランスの偏った食事になる場合もあります。このように、高齢者の孤食は食事の質を低下させ、長寿を妨げるリスクとなります。
家族や友人と一緒に食事を摂ると、食事は楽しい時間になります。気持ちが明るくなると食欲も増すため、健康的な食事が摂れるでしょう。
長寿のために摂りたい栄養素
長寿のために、ただ食事を摂ればよいというわけではありません。必要な栄養素をバランスよく摂ることで健康を維持し、長生きできるのです。ここでは、長寿のために積極的に摂りたい栄養素を解説します。
①たんぱく質
たんぱく質は、糖質、脂質とともに三大栄養素の一つとしてエネルギー源になります。また、筋肉や臓器、皮膚、髪の毛などの構成成分であるため、肌の弾力やハリを保ち若々しさの維持にも貢献しています。ただし、過剰摂取は腎臓に負担がかかり、腎機能の低下を引き起こす原因となるため注意しましょう。
高齢者にとって、たんぱく質は、不足しやすい栄養素です。食事から十分なたんぱく質が摂れていない場合、筋肉量の減少や筋力の低下により代謝が落ちたり、免疫力が低下して病気にかかりやすくなったりします。長寿のためには、たんぱく質をしっかり摂ることが重要です。
たんぱく質を多く含む食べ物は、肉、魚介類、大豆製品、卵、乳製品です。これらの中から毎食1品を摂るようにしましょう。
②カルシウム
カルシウムは骨や歯を構成するミネラルです。高齢者は食事量の減少により、カルシウム摂取量が低下します。また、カルシウムの吸収率が低下することで体内での需要と供給のバランスが崩れます。それらが原因で骨がもろくなり、スカスカのスポンジのようになった状態が骨粗鬆症(こつそしょうしょう)です。
骨粗鬆症になると、骨折しやすくなります。高齢者にとっての骨折は寝たきりになってしまうなど生活の質を低下させる原因となってしまいます。健康長寿のためには十分なカルシウムを摂り、丈夫な骨を保つようにしましょう。
③ビタミンD
ビタミンDはカルシウムの吸収を促進し、骨や歯の形成と成長を助ける働きがあります。健康で強い骨、強い歯は長寿にとって重要です。カルシウムを効率的に利用できるよう、ビタミンDも意識して摂るようにしましょう。
ビタミンDを多く含む食べ物には、鮭、うなぎ、いわし、しいたけなどがあります。ビタミンDは人が体内で合成できるビタミンです。紫外線を浴びることによって作られるため、骨を強くするためには日光を浴びることも効果的です。
④良質な油
油は1gあたりのエネルギー量が大きいため、効率よくエネルギー補給ができる栄養素です。良質な油は、ホルモンや細胞膜の成分になったり脂溶性ビタミンの吸収を促す働きもあるため、食事から摂る必要があります。
長寿のために油を摂る際は、良質な油を選ぶ必要があります。特に、マーガリンやスナック菓子、菓子パンなどに使われているトランス脂肪酸は健康を害する場合があるため控えましょう。
おすすめの油は、中鎖脂肪酸であるココナッツオイル、パーム油、ヤシ油などです。認知症予防に効果的といわれるオメガ3系の油には、エゴマ油、アマニ油、DHA、EPAなどがあります。特に青魚に含まれるDHAには神経細胞の情報伝達を活性化する作用があり、長寿のために摂りたい油です。
⑤食物繊維
食物繊維には、コレステロールの吸収を抑制したり、血糖値の上昇を緩やかにする作用があります。また、食物繊維は腸内環境を改善する作用もあります。水分を吸収して便のかさを増やし、腸を刺激することによって便秘予防にもなるのです。腸内環境が整うと免疫力も向上し、長寿につながります。そのため、食物繊維も積極的に摂るようにしましょう。
玄米は食物繊維を多く含みますが消化に時間がかかり、胃の負担になる場合があります。また、カルシウムの吸収を阻害するフィチン酸が含まれているため、長寿のための栄養を考慮すると白米を食べることをおすすめします。
⑥ビタミンA、C、E
ビタミンA、C、Eは、免疫力の向上に効果的な栄養素です。これらの栄養素は、一緒に摂ると相乗効果によって抗酸化力がアップし、抗酸化作用を長持ちさせる作用があります。ビタミンA、C、Eは老化を防ぐビタミンであるため、長寿のためにも意識して摂りたい栄養素です。
ビタミンAはレバー、うなぎ、あん肝、にんじん、かぼちゃなどに含まれています。ビタミンCは、野菜、果物、緑茶などに多い栄養素です。ビタミンEは、ナッツ類、植物油、魚介類などから摂るようにしましょう。
長寿のために生活習慣も見直そう
長寿において食事はもちろん大切ですが、それ以外にも健康的な生活を送ることが長寿の秘訣です。ここでは、長寿のために好ましい生活習慣について解説します。
①適度な運動を取り入れる
適度な運動は、筋肉や体力の低下を防ぐなど身体的な影響に加え、ストレス発散や生活習慣病の予防、認知症の予防など健康寿命を延ばし長寿に効果的です。
高齢になると体力が落ち、運動への意欲が低下するのは自然なことです。しかし、近年は身体を動かさないことがサルコペニアの原因になるとして問題視されています。サルコペニアとは、加齢による筋肉量の減少と筋力の低下を指します。
そのため、日常生活に適度な運動を取り入れてサルコペニアを予防し、長寿を目指しましょう。
②質のよい睡眠をとる
睡眠も長寿のためにとても重要です。質のよい睡眠とは、脳も身体も十分に休息できて疲れがとれることです。良質な睡眠は心も身体も健康になり、生活の質の向上にもつながります。
質のよい睡眠をとるためには、日中に身体を動かしたり、リラックスした状態で入眠できるように食事は3時間前にすませる、入浴は1時間半~2時間前までにすませるなどといった寝る前の生活習慣もポイントとなります。日頃から睡眠不足を感じる方は、睡眠環境の改善も意識しましょう。
③ストレスをためない
ストレスをためないことも長寿の秘訣です。高齢になると、ストレスを感じることで眠りが浅くなったり、判断力が落ちたりするなど、身体への悪影響が出るといわれています。
これらの症状は生活の質を低下させ、長寿の妨げとなります。長生きするためには、心身ともに健康であることが絶対条件です。毎日の生活でストレスをためないように心がけましょう。
④趣味を持ち毎日を楽しむ
趣味は生きがいになり、何かに熱中することは心身ともによい影響を及ぼし長寿に貢献してくれます。趣味は何でも構いません。料理や運動など好きなことを見つけて、毎日を楽しく過ごしましょう。
適した食事と生活習慣で、健康に長生きしましょう
まとめ
- 長寿の秘訣は、栄養バランスの整った食事を規則正しく食べること
- 高齢者は低栄養を防ぐことが重要
- 低栄養を防ぐためには、摂取カロリーが不足しないようにする
- 長寿のために摂りたい栄養素は①たんぱく質、②カルシウム、③ビタミンD、④良質な油、⑤食物繊維、⑥ビタミンA、C、E
- 長寿のためには、食事以外にも運動や良質な睡眠など健康的な生活を送ることが大切
長寿には、必要な栄養素が揃ったバランスのよい食事が重要です。しかし、それだけに限らず、運動や睡眠、ストレスのない生活など日々健康的な生活を送ることも大切です。今回紹介した内容を参考に、健康な生活を心がけ長生きできるようにしましょう。