【石野真子さん特別インタビュー】最期のことも考えなきゃね
女優や歌手として、精力的な活動を続ける石野真子さん。今回は、おじいさまとおばあさまとの大切な思い出や別れ、そして自身や家族の終活について、語ってくれました。
ネオンが輝きはじめる
—ご自身が経験した大切な人との別れについて聞かせてください。
思い出されるのは、祖父母との別れになりますね。子どもの頃は両親に連れられ、祖父母の住む田舎によく遊びに行きました。お盆だったり、お正月だったり、毎年のようにね。
—おじいさまとおばあさまとの思い出を聞かせてください。
よく遊んでもらっていたのを記憶しています。祖父母の家には大きな梁があり、そこに柔らかくて、赤い帯をつり下げ、ブランコを作ってもらったこともあります。祖父母には、とっても可愛がってもらっていたので、思い出ばかりが残っています。
—おじいさまとの記憶で、印象に残る思い出はありますか?
いつも祖父に肩車をしてもらい、港町まで連れていってもらったのを覚えています。その町は日が暮れると、映画館のネオンが輝きはじめるんです。その光景がとても綺麗で、ずっと見ていました。祖父は寡黙な人でしたが、私がネオンを見て喜んでいると、すごくうれしそうな表情をしていたそうです。
—その他にも、おじいさまとの思い出はありますか?
祖父は戦争に行っていたので、その話もしてくれました。お酒を飲むと「おじいちゃんはな……」と話し出すんです。子どもの頃は、どうしたって戦争に興味が持てなくて。戦争の話になると、聞き流してしまいました。今になると、貴重なお話をちゃんと聞いておけばよかったなと思います。心残りですね。
何度も足を運んでくれた
—おばあさまとの思い出はいかがでしょうか?
大人になってからは、ひとりで祖父母の家に遊びに行ったこともありました。帰りは駅のホームまで、祖母が見送りに来てくれるのですが、電車が到着する頃には、そっぽを向いちゃうんです。「泣いちゃうから」と言ってね。その光景は温かく胸に残っています。
—おばあさまが、会いに来ることはありましたか?
デビュー後、祖母はよく舞台を観に来てくれました。私が仕事で忙しくて遊びに行けなくても、何かあれば足を運んで、応援してくれる。愛されていると感じました。
ずっと心の中にいる
—おじいさまとおばあさまの最期は、お見送りできましたか?
祖父母とも、最期の時間を過ごすことができました。葬儀のときには、しばらく会っていなかった親戚のみんなとも会うことができて、思い出話に花を咲かせました。みんなは、おじいちゃんも、おばあちゃんも、私のことをとても可愛がっていたと、何度も、何度も話してくれました。
—葬儀では、何か感じることはありましたか?
小学校へ上がる頃には、家庭の事情もあり、自然と祖父母のもとへ遊びに行くことも減りました。大人になってからはなおさら。だから、もっと会いに行けばよかった。もっといっぱい話しておけばよかった。気がつくのが遅いということです。でも、お別れをした今、おじいちゃんとおばあちゃんは、ずっと私の心の中にいるような気がしています。
準備は必要かしら
—葬儀について、何か考えていることはありますか?
仕事では、遺影になったり、棺の中に入ったり、いろんな経験をしてきました。終活を題材にした舞台に出演したこともあります。その経験から、役者として、葬儀というものについて考えることはありましたね。でも、実際に通夜や葬儀に参列したときは、故人との別れによる悲しみでいっぱいになり、葬儀について考える余裕はなかったように思います。
—ご自分の最期について、考えたことはありますか?
考えてこなかったのが正直なところです。でも、人はいつ亡くなるかわかりません。突然いなくなれば、残された方は大変ですよね。納骨一つとっても、お墓だけではなく、海洋散骨や樹木葬など、今ではさまざまな方法がありますからね。準備は必要かなとは思っています。
最期のことも考えなきゃね
—意識して、何か整理していることはありますか?
具体的に何かをしているわけではないですが、物は増やさないように心掛けています。普段から物をため込むタイプではないですが、靴や洋服などは、できる限り整理しています。あとは、残された人が困らないためにも、終活ノートを購入しました。でも、まだ何も書いていなくて。これからですね。
—石野さんの周りの方で、終活を意識している人はいますか?
周りでは、まだ聞かないですね。だから、終活と聞いても、知らないことばかり。でも、少しずつ考えていく必要はあると思います。 以前、父に今後のことを尋ねたことがあります。そのときは「一度、みんなで旅行にでも行って話し合ってみるか」と言ってくれました。まだ旅行には行けていませんが。
私を含めて、多くの人は自分の死後のことを相談する機会がないのだと思います。だからといって、何もしないのではなく、残された人のためにも、私もそろそろ最期のことも考えなきゃね。
プロフィール
石野真子(いしの・まこ)
女優、歌手。兵庫県生まれ。日本テレビのオーディション番組『スター誕生!』の決勝進出を機に、歌手として芸能界入り。1978年、「狼なんか怖くない」でデビュー。同年にリリースした「失恋記念日」が大ヒットし、『第20回日本レコード大賞』『第16回ゴールデン・アロー賞』等で新人賞を受賞。以後、トップアイドルとして人気を博した。80年代からは女優として、ドラマや映画、舞台でも活躍。現在放送中のNHK大河ドラマ「光る君へ」にも出演。