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特集

【吉川美津子さん特別インタビュー】故人を想う、温かい空間

【吉川美津子さん特別インタビュー】故人を想う、温かい空間

葬儀社や仏壇・墓石販売会社等の勤務を経て、現在では企業向けのコンサルティングに携わるなど、葬送業界で活躍する吉川美津子さん。今回は、終活の違和感や介護職員の現場、そして故人との最期の時間について語ってくれました。

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「終活」という言葉の違和感

—吉川さんの経歴や現在の活動について教えてください。

はじめは葬送関連の人材派遣会社からスタートし、葬儀社や仏壇・墓石販売会社等の勤務を経て、葬送業界の教育事業にも20年ほど携わってきました。最近では、取材・執筆活動に加え、企業向けのコンサルティングやセミナーも行っています。セミナーに関しては、終活や墓石をテーマにしたものが多いですね。

—終活セミナーの講師も手掛けているとのことですが、ご自身は「終活」をどのように捉えていますか?

個人的には、終活が死に直結するという考え方にずっと違和感がありました。どうしても言葉が一人歩きしてしまっているように感じます。多くの人は最期のときを考えて、できる範囲で何かをしなければならないと思っているはずです。エンディングノートを書くまではいかずとも、部屋の片付けをしておくとか、資産を身軽にしておくとか。あえて「終活」という言葉を意識しなくても、実は自然にやっていることはあると思います。

—「終活」という言葉を無理に持ち出さなくてもよいということですね。

ただし、意識してやらなければならないこともあります。それこそ財産相続に関わることは、意識してやらなければ何も始まりません。デジタル遺品も同様ですね。自然にすることと、意識してすることをきちんと分けて、場合によってはプロの手を借りることも必要になると思います。

たった1枚の死亡診断書で変わる役割

—終活という言葉に違和感を覚え始めた頃から、ご自身の活動に変化はありましたか?

終活という言葉の違和感から、「生」の延長線上に「死」があると考えるようになりました。その考えを明確にするため、社会福祉士の資格を取得し、福祉・介護の現場に関わるようになり、後に介護福祉士も取得しました。結果として、現場で多くの「死」を目の当たりにしてきました。現実を叩きつけられ、次第に「生と死をつなぐ」ことに使命を感じるようになりました。

—福祉・介護現場における現実とは、具体的にはどのようなものですか?

介護職員は、いろんな方の介護に携わります。新人の介護職員だった頃、ALS(筋萎縮性側索硬化症)という難病を抱えている方の訪問介護に携わり、その方がインフルエンザに感染したときは、医師とともに、多職種連携で懸命に対応したこともあります。そのように介護者と時間をともにしてきたにもかかわらず、介護者が亡くなった瞬間、私たちの役目は終わりです。死亡後の業務は医療保険や介護保険の適用外となるためです。

介護職員にとっても、一人ひとりが大切な別れになります。私たちは使命感を持って関わってきましたが、生と死をつなげていたかと聞かれると、できていない。いくら志を持っていても、たった1枚の死亡診断書で、業界も、制度も、法律も変わる。この現実を発信する必要があると感じました。

—現在、介護現場の現実をどのように発信していますか?

介護施設で生と死をつなげるため、介護職員を続けながら、企業へのコンサルティングや葬送関係の取材・執筆を行っています。介護事業者には、施設で利用者が亡くなったら、家族へお迎えをお願いするだけで終わりにするのはやめましょう、と伝えています。介護施設は病院とは違います。住宅であって、暮らしを支える場です。住み慣れたところで最期を迎えたら、安置まで寄り添う。葬儀が必要なければ、施設からの出棺でもかまわない。まずは、その風土や文化を築いていくことを提案しています。

—その提案について、介護現場からの反応はいかがですか?

介護事業者からの声は大きくなっています。今後、介護施設内での安置は急速に拡大すると思います。現実的な問題として、火葬待ちの自治体が増加していることも後押しになるでしょう。介護側の認識と遺族の理解がどんどん広がっていけば、設備拡充へつながると思います。

死の尊さを認識し、生きることを大切にする

—葬送儀礼では、どのような視点を持つとよいでしょうか?

葬送儀礼においては、どうしてもセレモニーが重要視されています。しかし、大切なことは故人との時間を、最期まで共有していくことだと思います。セレモニーに限らず、安置などの際に、故人との最期の時間をどのように過ごすのか。その視点を大事にしてほしいです。

—故人を看取った後、どのような過ごし方があると思いますか?

家族そろって、故人が生前に暮らしていた空間を共有しながら、葬儀までの時間を過ごすとよいのではないでしょうか。 介護施設で最期を迎えた場合、自宅や葬儀場での安置が基本となります。しかし、介護施設で過ごした故人の思い出を、そこで一緒に共有することができれば、何よりも大切な時間になるはずです。その時間が、故人に対する尊厳と、残された家族のグリーフケアにもつながると思います。

—介護職員として携わった、印象に残るお別れはありますか?

最期まで寄り添った方で、施設の霊安室で安置することになった女性がいました。彼女のもとには、安置から3日間ほど、親戚や友人らがひっきりなしにお別れにいらしていました。介護スタッフもお別れに来た方へ、故人との思い出を伝えるなど、とても温かい空間でした。

—大切な人を亡くした方の、心のケアはどう考えていますか?

大切な人を亡くし、それを誰にも打ち明けられない方がいました。まだ死別の悲しみを昇華できずにいたのです。悲しみに明け暮れる姿を見たとき、何もできない自分にもどかしさを感じました。時間が悲しみを昇華してくれる場合もあります。しかし、すべての人がそうではありません。それでも、求められたら話を聞いてあげられるような、そんな存在でいたいですね。

プロフィール

吉川美津子(きっかわ・みつこ)
葬儀・お墓・終活ビジネスコンサルタント。社会福祉士・介護福祉士。葬送儀礼マナー普及協会理事。大手葬儀社や大手仏壇・墓石販売会社勤務を経て葬送コンサルタントとして独立。駿台トラベル&ホテル専門学校、上智社会福祉専門学校非常勤講師を歴任。福祉職として介護や福祉の現場でも活動中。『葬儀業界の動向とカラクリがよ~くわかる本』『お墓の大問題』などの著書多数。

Yahoo!ニュースオーサーとして「吉川美津子の終活サプリ」連載中。 https://news.yahoo.co.jp/expert/authors/kikkawamitsuko
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