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健康・カラダのこと

親の介護は拒否できる?制度や支援をうまく活用して家族間のトラブル回避

親の介護は拒否できる?制度や支援をうまく活用して家族間のトラブル回避

親の介護は負担が大きく避けては通れない問題ですが、拒否できるのでしょうか?今回は、親の介護ができない場合に受けられる支援や介護負担の軽減方法を紹介します。親の介護に関するトラブルを上手に回避するためにも、ぜひご覧ください。

監修者 SUPERVISOR
介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、福祉用具専門相談員、福祉住環境コーディネーター2級 池田 正樹

東北公益文科大学卒業。その後、介護保険や障害者総合支援法に関する様々な在宅サービスや資格講座の講師を担当した。現在は社会福祉法人が運営する特別養護老人ホームの生活相談員として、入居に関する相談に対応している。在宅・施設双方の業務に加えて実際に家族を介護した経験もある。高齢者介護分野のみならず、障がい者支援に関する制度にも明るい。

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親の介護は拒否できる?

結論から申し上げると、親の介護を拒否することはできません。なぜなら「親に介護の必要性が出たときは世話をする責任がある」と法律で定められているためです。

直径血族の親子には互いに扶養義務がある

親の介護を拒否できない理由は、民法第877条第1項にあります。

直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。

引用元 | 民法 第877条第1項(e-Gov法令検索)

直系血族とは、親子関係で続く一直線の血族関係を指します。親に子の扶養義務があるのと同様に、子にも親を扶養する義務があるため、介護を拒否することはできません。

一方で、扶養義務は直系血族と兄弟姉妹に限定されています。そのため、義両親の介護に関しては法律的に拒否できる可能性が残されています。

義両親の介護は拒否できるがトラブルになる恐れがある

配偶者の親の介護を拒否できるかどうかについて考えてみましょう。民法には、以下のような規定があります。

夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

引用元 | 民法 第752条(e-Gov法令検索)

仮に「血の繋がった親子じゃないから」と拒否した場合、配偶者はもちろん、配偶者の兄弟からも疎まれるかもしれません。特に同居している義両親の介護を拒否した場合、近親者や近隣などから心理的な圧力も感じ、穏やかに暮らせない環境になる場合もあります。

介護を放棄すると最悪の場合罪に問われる

家族の介護を拒否すると、最悪の場合、罪に問われる恐れがあります。

例えば「高齢者虐待防止法」では、介護の必要性があることを承知しておきながら介護拒否をした場合「ネグレクト(介護放棄)」という虐待行為であると定めています。また刑法の視点では、介護放棄をしたことで「保護責任者遺棄罪」に問われる恐れもあります。

加えて親の介護を放棄し続けた結果、親が死亡したりケガをしたりした場合、さらに重い「保護責任者遺棄致死(致傷)」等の罪に問われる恐れもあります。介護の拒否や放棄はせず、やはり何らかの対処が必要と言えるでしょう。

お金がなければ親の介護を拒否できる?

では、お金が理由で介護ができない場合は、介護を拒否できるのでしょうか?「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、介護保険制度を利用した場合の一時的な費用の合計は平均74万円、毎月の介護費用は平均8.3万円でした。これを介護に要した期間(平均61.1ヶ月)に当てはめると、ひとりの高齢者をお看取りまで介護した場合の費用は平均581.1万円になると計算できます。

いくら介護を拒否できないとはいえ、かなりの大金です。ここでは、お金がなければ親の介護を拒否できるかどうかについて解説します。

経済的な支援は「余力の範囲内」でよい

子供は親の介護を拒否できませんが、経済的な支援は「余力の範囲内」で問題ないとされています。自身の生活状況を無視してまで、親に経済的支援をする必要はありません。

介護可能な範囲を超えた経済的支援については、公的な制度を利用するなどの方法で介護支援を検討しましょう。

「親の介護は親の財産で」が原則

親の介護に必要な費用は、基本的に親の財産で賄うのが一般的です。子供が介護費用を補填し続けると、今度は子供の生活が破綻してしまいます。介護費用は子供だけで負担しようとせず、親自身のお金や財産から費用を捻出するようにしましょう。

親のお金や財産では費用が足りない場合は、記事の後半で紹介する経済的負担の軽減制度の活用を検討してください。

親の介護ができない場合に受けられる支援

親の介護は拒否できませんが、介護負担軽減のために受けられる支援制度があります。親子や兄弟間の関係を維持しつつ、互いが安心して生活できるよう、まずは専門家に現在の状況を相談して介護の方法を模索しましょう。

地域包括支援センターへの相談

親の介護で困ったときは、まず地域包括支援センターに相談しましょう。地域包括支援センターは、高齢者に関するさまざまな困りごとを相談できる地域の総合相談窓口としての機能を持っています。

保健師・社会福祉士・ケアマネジャーなどが配置されており、各人が連携しながら介護などの対処方法の相談に乗ってくれるため安心です。

介護保険制度の利用(要介護認定を受けた場合)

親の介護の負担を軽減するために、原則65歳以上の方が対象の保険制度を活用しましょう。介護保険制度は、「介護の社会化」を目的に、2000年に施行された社会保険制度です。

利用するためには、まず要支援1〜2・要介護1〜5の7段階ある要介護認定を受ける必要があり、申請は市区町村で行います。負担に感じる介護をプロに任せられるため、身体的・心理的な負担が軽減されるでしょう。

介護保険制度の種類

先述した通り、親が要介護認定を受けた場合には介護保険制度を利用できます。介護保険制度のサービスは、大きく分けると以下の3種類です。

介護保険サービスの種類

  • 居宅サービス
  • 施設サービス
  • 地域密着型サービス

ここからは、それぞれの概要や特徴をご紹介します。

居宅サービス

居宅サービスの対象者は、主に在宅で暮らす高齢者や住宅系の民間老人ホームに入所している人です。居宅サービスの中には、「訪問サービス」「通所サービス」「短期入所サービス」の3つがあります。

訪問サービス

訪問サービスは、事業者等が自宅へ訪問し介護や生活支援などのサービスを提供します。
居宅介護支援・介護予防支援、訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導などがあります。

【居宅介護支援・介護予防支援】

居宅介護支援・介護予防支援とは、介護サービスを利用するためのケアプランを作成するサービスのことです。自己負担なしで利用でき、要介護の人は居宅介護支援を、要支援の人は介護予防支援の事業所と契約します。

2024年4月からは、居宅介護支援事業所でも要支援の人と契約できるようになりました。

【訪問介護】

訪問介護は自宅にヘルパーが訪問し、各種身体介護や家事援助を提供するものです。公的な介護タクシーも訪問介護に分類されています。要支援の人は対象外で、代わりに総合事業を利用できます。

【訪問入浴介護】

訪問入浴介護では自宅に可搬式の浴槽を持ち込み、介護士と看護師が協働で入浴介助を行います。主に寝たきりの方や看取り状態の人が対象です。

【訪問看護】

訪問看護では看護師やリハビリ専門職が自宅へ訪問し、主治医の指示に基づいた医療ケアやリハビリを提供します。

【訪問リハビリテーション】

訪問リハビリテーションでは自宅にリハビリ専門職が訪問し、原則当該事業所に在籍する医師が作成した計画に基づいてリハビリを提供します。

【居宅療養管理指導】

居宅療養管理指導では、自宅に医師・歯科医師・薬剤師・看護師・管理栄養士・歯科衛生士などの医療職が訪問し、必要な在宅療養上の指導を行います。

通所サービス

通所サービスは、利用者に施設へ通ってもらい、その施設内で介護やリハビリなどのサービスを提供します。サービスの種類として、通所介護、通所リハビリテーションなどがあります。

【通所介護】

通所介護では、介護施設にて日常生活上の介護サービスを提供します。閉じこもり防止や家族の負担軽減も目的の一つです。要支援の人は対象外で、代わりに後述する総合事業を利用します。

【通所リハビリテーション】

通所リハビリテーションではリハビリ施設に通所させ、医師の指示に基づいた専門的なリハビリテーションを提供します。必要に応じて身体介護も実施します。

短期入所サービス

短期入所サービスは、利用者を施設に一定期間受け入れて、介護やリハビリなどのサービスを提供します。サービスの種類として短期入所生活介護、短期入所療養介護、特定施設入居者生活介護などがあります。

【短期入所生活介護】

短期入所生活介護はショートステイとも呼ばれ、短期間介護施設に入所させて日常生活上の支援を提供します。家族の休息や息抜きも大きな目的の一つです。

【短期入所療養介護】

短期入所療養介護とは医療機関に併設された短期入所施設で介護を行うサービスのことで、療養ショートステイとも呼ばれます。通常のショートステイと比べて医療ケアやリハビリにも強くなっています。

特定施設入居者生活介護

特別養護老人ホームのような介護機能を持った民間の老人ホームです。通常の民間老人ホームは、重度化すると入居継続を拒否される場合があります。しかしこの指定を受けた老人ホームは「介護付」となるので、拒否されずに生活を継続できるでしょう。

その他サービス

【福祉用具貸与・特定福祉用具販売】

福祉用具貸与・特定福祉用具販売では、利用者の自立や介護者の負担軽減を目的に、福祉用具のレンタルや購入時の助成を実施します。利用できる品目や助成内容には制限があります。

【住宅改修】

住宅改修は、動作の自立や介護者の負担軽減を目的に、住宅のバリアフリー工事に必要な費用を助成する制度です。助成を受けられる内容には制限があります。対象となる住宅は、要介護者の住民票の住所と一致する住宅に限られています。

施設サービス

施設サービスは、3種類の介護保険施設に入所している方が対象です。

介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)

原則、要介護3以上の方が入所できます。常に介護を必要とする方を長期間受け入れている施設です。終の棲家としての機能を持ち、日常生活全般を支えます。

介護老人保健施設

要介護1以上の方が入所できます。在宅復帰を目的としたリハビリ施設のため、入居期間が定められています。しかし中には長期入所せざるを得ない状況に至っている人もいます。

介護医療院

要介護1以上の方が入所できます。医療依存度が高い方や重度の認知症にも対応しており、長期療養と日常生活支援の機能が組み合わされた施設です。

地域密着型サービス

地域密着型サービスは、認知症などの症状が重度化しても、住み慣れた住宅や地域で暮らせるようにすることを目的としています。要介護者の住民票がある市区町村のみで利用でき、地域性を生かして臨機応変で柔軟なサービスを利用できる点が特徴です。

定期巡回・随時対応型訪問介護看護

訪問介護と訪問看護を組み合わせたようなサービスです。定期巡回と必要に応じた随時対応サービスを利用できます。

夜間対応型訪問介護

夜間帯に特化し、定期巡回と必要に応じた随時対応サービスを利用できる訪問介護です。

地域密着型通所介護

定員19人未満の小規模な通所介護です。医療ケアに特化した「療養通所介護」という種類もあります。要支援の方は利用できません。

認知症対応型通所介護

認知症ケアに特化した通所介護です。サービスを受けることを拒否しやすい認知症患者でも安心して利用できるのが特徴です。

小規模多機能型居宅介護

通所・訪問・ショートステイ・ケアマネジャーの機能を一箇所で提供できる定額制の施設です。関わるスタッフが最小限で済むため、利用者が混乱して利用拒否につながることを避けることもできます。

看護小規模多機能型居宅介護

小規模多機能型居宅介護に訪問看護の機能が追加された施設です。

認知症対応型共同生活介護(グループホーム)

認知症ケアに特化した、小規模で家庭的な雰囲気が特徴の施設です。恐怖感から介護を拒否しやすい認知症患者でも安心して生活できます。

地域密着型特定施設入居者生活介護

定員29人未満の、小規模な特定施設入居者生活介護事業所です。

地域密着型介護老人福祉施設入居者生活介護

定員29人未満の、小規模な特別養護老人ホームです。

【番外編】介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)

介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)とは、主に要支援や厚生労働省が作成した「基本チェックリスト」に該当した人に向けたサービスです。基本チェックリストは「運動機能・栄養状態・口腔機能・閉じこもり・認知機能・うつ病の可能性」の分野があり、現在の心身の状態が把握できます。

参考:厚生労働省 基本チェックリスト

介護予防を目的とした通所介護や訪問介護に相当するサービスを必要とする場合は、総合事業を利用しましょう。詳細は、最寄りの地域包括支援センターへお問い合わせください。

親の介護の費用が足りない場合に利用したい軽減制度

ここからは、親の介護費用が足りない場合に利用できる費用軽減制度を紹介します。利用には手続きが必要ですので、制度とあわせて紹介します。

特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)制度

一定の要件を満たした場合に、ショートステイや施設サービスにおいて発生する食事代や滞在費を助成する制度です。住民税非課税世帯や生活保護の方が対象で、年間所得や貯蓄の額によって助成額が変わります。

申請は住民票のある市区町村の介護保険担当窓口で行い、その場で発行してもらえる場合もあります。手続きには本人の預金通帳や有価証券・債権などの証書が必要になるので、事前に必要書類を確認しておくとスムーズです。

高額介護サービス費制度

一ヶ月当たりの介護サービス利用料の合計が一定額を超えた場合に、差額を払い戻す制度です。負担上限額は対象者の年間所得額によって異なります。

申請は住民票のある市区町村の介護保険担当窓口です。対象になると市区町村が認めた場合に申請書類が届くので、忘れずに申請しましょう。一度申請すると、以後は自動的に払い戻されるようになります。

高額療養費制度、限度額適用・標準負担額減額認定証

一ヶ月当たりの医療費の合計が一定額を超えた場合に、差額を払い戻す制度です。医療機関ごとの支払いが上限額を超えた場合に支払いが免除できる「限度額適用・標準負担額減額認定証」もあります。

申請先は、加入している公的医療保険の種類によって異なります。例えば後期高齢者医療制度の場合は市区町村が窓口になっています。高額介護サービス費と同様に、一度申請すれば以後は自動的に還付を受けることができます。

なお、「限度額適用・標準負担額減額認定証」は別途申請が必要なものの、マイナ保険証を活用すれば申請不要で制度の恩恵を受けることができます。

参考 :全国健康保険協会 協会けんぽ

高額介護合算療養費制度

同一世帯における医療費と介護サービス利用料の1年間の合算額が上限を超えた場合に、負担額の一部が返金される制度です。 高額介護サービス費に該当している場合は、高額介護サービス費の制度で設定されている額が負担上限額となります。

後期高齢者の場合、申請先は市区町村の後期高齢者医療制度担当窓口です。後期高齢者以外の場合は被用者保険の担当窓口が申請先となります。対象になる可能性が高い場合に被用者保険から通知が届くので、忘れずに申請しましょう。

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生活保護制度

可能な限り他の社会制度を活用しても、なお生活が困窮する場合があります。生活保護制度を利用すれば、介護サービス利用料や医療費が全額公費負担(現物支給)となるのをはじめ、さまざまな支援を受けられます。

生活保護の相談窓口は、住民票のある市区町村の福祉事務所(福祉課)です。介護保険担当窓口とは異なるので注意が必要です。

生活保護は各福祉施策の中で「最後の砦」と呼ばれています。ですので、単に生活困窮しているだけでは対象になりません。他に利用できる制度が対象にならなかったり、他に対象になる制度の全てを活用しても生活困窮状態が改善しないと判断された場合のみ申請できることを理解しておきましょう。

親の介護は拒否できないため、公的な制度や介護サービスを活用しましょう

今回の記事のまとめ

  • 親子は互いに扶養する義務があるため、親の介護は拒否できない
  • 「親の介護は親の財産で」が原則で、それ以上経済的な支援は「余力の範囲内」でよい
  • 親の介護は拒否できないので、専門家に相談して負担を減らすのが望ましい
  • 公的な助成制度を活用して、費用の持ち出しを減らすことを検討する

親の介護拒否はできません。一方で、介護は終わりが見えず拒否したくなるのもまた事実です。無理に拒否すると親族間のトラブルにつながるばかりか、最悪の場合、介護放棄したとみなされ罪に問われる恐れがあります。介護は拒否するのではなく、専門家と相談して適切な対処法を実施するのが得策です。

介護を拒否するのではなく、まず地域包括支援センターに相談しましょう。お互い安心して暮らせるような対処方法が見つかれば、これからも良好な関係を維持できるはずです。

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