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お金・お家のこと

孫に生前贈与する方法5つ。注意点や相続税の負担を軽くするポイントも解説

孫に生前贈与する方法5つ。注意点や相続税の負担を軽くするポイントも解説

自分の財産を、孫に生前贈与したいと考えている方も多いのではないでしょうか?生前贈与すれば、かわいい孫に財産を残せるだけでなく、相続税対策にもなります。本記事では、孫に生前贈与する方法を紹介します。

監修者 SUPERVISOR
AFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、行政書士 森本 由紀

神戸大学法学部卒業。鉄鋼メーカー、特許事務所、法律事務所で勤務した後、2012年に行政書士ゆらこ事務所を設立し独立。メインは離婚業務。離婚を考える人に手続きの仕方やお金のことまで幅広いサポートを提供。法律・マネー系サイトでの執筆・監修業務も幅広く担当。

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孫に生前贈与するメリット

資産を保有している場合、生きているうちに孫に贈与したいと考えることはありませんか?まずは、孫に生前贈与するメリットについてまとめてみます。

相続税対策になる

生前贈与には、将来発生する相続税を節税する効果があります。相続税は亡くなったときに保有している財産の価額によって変動します。生前贈与により相続財産を減らしておけば、相続税の負担を軽減できる可能性があります。

特に孫への生前贈与は、相続税の軽減効果が大きくなります。通常であれば、孫へ財産が移転するまでに、親から子、子から孫という2回の相続を経なければなりません。しかし子(孫の親)を飛ばして孫に生前贈与すれば、相続税が発生する機会を1回に減らせます。

贈与税の非課税制度を利用できる

生前贈与によって相続財産を減らせば、相続税は抑えられますが、受け取る側に贈与税がかかるというデメリットもあります。相続税を減らせても、生前贈与でかかる贈与税が多くなれば、全体的には節税になりません。

ただし孫へ生前贈与する際には、贈与税の非課税制度を利用できる場合が数多くあります。贈与税の非課税制度を活用することによって贈与税と相続税の合計額を抑えられるのです。

孫へ非課税で生前贈与する5つの方法

孫への生前贈与は、贈与税の非課税制度を活用して行うのがおすすめです。ここからは、孫へ非課税で生前贈与する5つの方法を紹介します。それぞれの制度で、非課税にできる金額や要件を知っておきましょう。

①年間110万円以内の暦年贈与

贈与税は、1月1日から12月31日までの1年間の贈与に対して課税される「暦年課税」が原則です。暦年課税では110万円の基礎控除があるため、年間110万円以下の贈与は非課税になります。暦年課税の基礎控除枠を利用して生前贈与する方法を「暦年贈与」といいます。

孫へ生前贈与する際にも、毎年の贈与額を110万円以下に抑えれば、贈与税を非課税にできます。ただし毎年少しずつ贈与する場合、やり方によっては暦年贈与とみなされずに課税される可能性があるため注意が必要です。

②教育資金贈与の特例

孫へ教育資金として現金を生前贈与する場合には「教育資金一括贈与に係る贈与税の非課税措置」(教育資金贈与の特例)を利用できます。非課税で贈与できる金額の上限は1500万円です。ただし、学校納付金(入学金・授業料等)以外の塾・習い事等の費用については、上限が500万円となっています。

教育資金贈与の特例の概要

贈与者

直系尊属(父母、祖父母等)

受贈者

30歳未満の子、孫

非課税限度額

子・孫ごとに1500万円(学校納付金以外は上限500万円)

適用期間

2026年(令和8年)3月31日まで

手続き

金融機関で教育資金口座を開設し、金融機関を経由して税務署に非課税申告書を提出

注意点

受贈者が30歳になった時点で教育資金口座に残っているお金には贈与税が課税される

教育資金贈与の特例を利用すれば、孫ひとりにつき1500万円まで非課税で生前贈与できます。複数の孫に贈与すれば、非課税で生前贈与できる額を増やすことが可能です。

教育資金贈与の特例を利用する場合、金融機関で専用の口座を開設し、教育資金を一括して入金する必要があります。教育資金口座から教育資金を引き出す場合には、その都度請求書・領収書等を金融機関に提出しなければなりません。

教育資金口座のお金を教育目的以外で引き出す場合には、贈与税がかかります。また、孫が30歳になったとき教育資金口座に残っているお金についても、贈与税の課税対象です。教育資金に使わないと非課税特例は受けられないため注意しましょう。

③結婚・子育て資金贈与の特例

孫に結婚・子育て資金として現金を生前贈与する場合には「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」(結婚・子育て資金贈与の特例)を利用できます。非課税にできる金額の上限は、孫ひとりにつき1000万円(結婚関係の費用については300万円)です。

結婚・子育て資金贈与の特例の概要

贈与者

直系尊属(父母、祖父母等)

受贈者

18歳以上50歳未満の子・孫

非課税限度額

子・孫ごとに1000万円(結婚関係の費用は上限300万円)

適用期間

2025年(令和7年)3月31日まで

手続き

金融機関で結婚・子育て資金口座を開設し、金融機関を経由して税務署に非課税申告書を提出

注意点

受贈者が50歳時点て結婚・子育て資金口座に残っているお金には贈与税が課税される

結婚・子育て資金贈与の特例を利用する場合にも、金融機関で専用口座を開設し、一括入金します。結婚・子育て費用を引き出すときには、領収書等の提出が必要です。孫が50歳になったときに専用口座に残っている資金には贈与税が課税されます。

④住宅取得資金贈与の特例

孫に住宅購入資金や住宅の新築・増改築等にかかる費用(土地の取得費用も含む)として現金を生前贈与する場合には「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」(住宅取得資金贈与の特例)の利用が可能です。

住宅取得資金贈与の特例の概要

贈与者

直系尊属(父母、祖父母等)

受贈者

18歳以上の子、孫(※所得要件あり

非課税限度額

省エネ等住宅:1000万円  一般住宅:500万円

適用期間

2026年(令和8年)12月31日まで

手続き

贈与を受けた翌年に受贈者が税務署に申告

注意点

贈与を受けた翌年の3月15日までに購入・新築等が必要

非課税限度額に記載の省エネ等住宅とは、次の三つの要件のいずれかに該当する住宅を指します。

「省エネ等住宅」の要件

  1. 断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上
  2. 耐震等級2以上または免震建築物
  3. 高齢者等配慮対策等級3以上

孫に住宅取得資金を生前贈与して特例の適用を受けるには、孫の合計所得金額が2000万円以下という要件があります。40平方メートル以上50平方メートル未満の住宅については、合計所得金額1000万円以下が要件です。

⑤相続時精算課税を選択

「相続時精算課税」とは、高齢者から次世代への資産移転を促進するために設けられた制度です。親や祖父母から生前贈与を受ける場合、暦年課税の代わりに相続時精算課税を選択できます。相続時精算課税を選択した孫は、同じ祖父母からの生前贈与について、合計で2500万円の特別控除を受けられます。

2024年(令和6年)1月1日以降は、相続時精算課税において、年110万円の基礎控除が追加されました。相続時精算課税を選択した場合、2500万円の特別控除と年110万円の基礎控除の範囲内であれば、贈与税は非課税になります。特別控除と基礎控除の範囲を超える贈与については、一律20%で課税されます。

相続時精算課税制度により生前贈与された財産については、相続時に相続財産に加算されて、相続税が計算される仕組みです。このとき、非課税枠を超えて支払った贈与税があれば、相続税から差し引きされます。なお、相続税精算課税を選択すると、その贈与者からの贈与については、暦年課税には戻せません。

相続時精算課税の概要

贈与者

60歳以上の父母・祖父母

受贈者

18歳以上の子・孫

非課税限度額

特別控除2500万円+基礎控除(年110万円)

適用期間

なし

手続き

相続時精算課税選択届出書を税務署に提出

相続時精算課税を選択した場合、贈与時には非課税でも、相続時に課税されます。つまり、必ずしも節税になる制度ではありません。ただし、資産の総額が相続税の基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)以下の場合には、将来的に相続税はかからないため、税負担を減らすことができます。

孫に生前贈与する場合の注意点

孫に生前贈与するならば、メリットを最大限に活かす方法で行いましょう。ここでは、孫への生前贈与で注意しておきたいことを紹介します。

扶養義務の範囲内ならそもそも非課税

孫に金銭的な援助をすると、必ず贈与税の対象になるわけではありません。そもそも、親族間では扶養義務が生じる場合があります。

両親や祖父母は、法律上の扶養義務者に該当します。国税庁のQ&Aによると「扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるために贈与を受けた財産のうち『通常必要と認められるもの』については、贈与税の課税対象となりません」と記載されています。

扶養義務者(父母や祖父母)から「生活費」又は「教育費」 の贈与を受けた場合の贈与税に関するQ&A(国税庁)

孫への生前贈与が「通常必要と認められるもの」の範囲かどうか分からないこともあるでしょう。心配な場合には、税理士等の専門家に相談するのがおすすめです。

贈与契約書を作成する

生前贈与をする場合、贈与契約書を作成しておくことが大切です。孫に生前贈与する際には、贈与契約書を作成しておきましょう。贈与契約書がなければ、いつ、どのような目的で孫に渡したお金なのかが分からず、課税上不利益を受けることがあります。

特に暦年贈与する場合には、贈与契約書が重要です。例えば、孫に毎年110万円ずつ10年間贈与を続けた場合、定期贈与とみなされることがあります。その場合には、最初から1100万円を贈与するつもりだったとして、課税されてしまいます。

毎年の贈与が定期贈与ではなく独立した贈与であることを証明するために、贈与契約書を作成しておくのが望ましいでしょう。毎年の贈与のタイミングをずらしたり、金額を変えたりするといった工夫もしておくと安心です。

特例を利用する場合には贈与税の申告が必要

孫への生前贈与では、特例を使うと非課税になる場合が多くなります。特例の適用により税額がゼロになる場合でも、贈与税の申告は必要です。申告をしないでいると、特例が適用できない可能性があるため、注意しましょう。

なお、教育資金贈与の特例、結婚・子育て資金贈与の特例を利用する場合には、金融機関での手続きが必要です。税務署への申告も、金融機関を通して行います。

孫への生前贈与を活用して相続税の負担を軽くしよう

この記事のまとめ

  • 孫へ生前贈与すると相続税対策になる
  • 孫への年間の贈与額を110万円以下に抑えて非課税贈与する方法がある
  • 贈与税の非課税特例を活用すれば、孫へまとまった資金を生前贈与できる
  • 孫が相続時精算課税を選択すれば、一定額までの生前贈与を非課税にできる
  • 孫へ生前贈与する際は贈与契約書を作成する

孫へ生前贈与すれば、相続財産を減らして相続税の負担を抑えられます。孫へ生前贈与する場合には、贈与税の非課税特例も利用できる場合が多く、贈与税の負担も軽くできるでしょう。孫へ生前贈与するなら、贈与税を非課税にする方法を知っておくことが大切です。今回紹介した方法を参考にし、節税効果を大きくしましょう。

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