閉じる メニュー
健康・カラダのこと

私ばかり親の介護をしている!不満を解消するための制度やサービスを徹底解説

私ばかり親の介護をしている!不満を解消するための制度やサービスを徹底解説

「私ばかりが親の介護をしている」と負担に感じてはいませんか?「同居しているから」「近くに住んでいるから」「女性だから」などの理由で、介護負担が一人に偏る場合は多く存在します。本記事では、介護負担の上手な分担方法や軽減策、介護のイライラ解消法などについて紹介します。

「私ばかり親の介護をしている」と感じる理由

親の介護をしていて、「私ばかりが負担を強いられている」と思うことは誰にでもあります。親の介護は、特に近くの親族に偏る傾向があるためです。中でも、以下のような不満がよくあるとされています。

親の介護で感じる不満

  • 兄弟が手伝ってくれず不公平
  • 一人っ子で頼れる人がいない
  • 金銭的負担が大きい

それぞれの具体的な状況について、確認してみましょう。

兄弟が手伝ってくれず不公平

親の介護は、同居者か近くに住んでいる親族が担う傾向にあります。兄弟がいたとしても、同居していたり近くに住んでいたりする人に負担が集中してしまうため、「みんなの親なのに、私ばかりが介護の負担を負っている」と不公平を感じる原因になります。

一人っ子で頼れる人がいない

親の介護において、一人っ子で子供が自分だけの場合は、介護の負担が集中する傾向にあります。ワンオペ介護は負担が集中するため、疲労が限界を迎えやすいという点がリスクです。また兄弟がいれば相談等ができるものの、一人で抱え込んでしまう点も「私ばかりが負担を強いられている」と感じる主な要因となっています。

金銭的負担が大きい

介護にはお金がかかります。親の介護に必要な費用は親の年金や貯蓄から支払うのが基本ですが、足りなければ誰かが補填しなければなりません。そうなると家族や親族でお金を出し合うことになりますが、さまざまな理由から協力できない家族が出てくることも考えられます。

特に金銭的支援に協力しない兄弟がいた場合は、なおさら「私ばかり」と感じてしまいます。金銭的なトラブルは絶縁にもつながりかねないため、一人だけが負担することにならないよう対策が必要です。

「私ばかり親の介護をしている」不満を抱えたままにするリスク

介護 不満

「私ばかり親の介護をしている」と不満を抱えたままにすると、さまざまな問題を引き起こすことがあります。問題点をそれぞれみていきましょう。

介護うつの発症

休息が取れずひとりで抱え込む状態が続くと、介護うつを発症する恐れがあります。介護うつとは、介護者の心身に強いストレスがかかり、抑うつ状態になることを指します。体調の悪化や意欲の低下など、日常生活に支障をきたしてしまうのが主な症状です。

介護者が健康を損なうことで、介護の質も下がり、要介護者にも影響が及びます。酷い場合には、介護者と要介護者どちらも寝たきりになってしまう可能性もあります。

介護うつにならないためにも、ひとりで介護を抱えこまず、家族や周囲の方に相談し、協力を仰ぐことが大切です。また、介護者の休養を支援するサービスを利用するのもおすすめです。

決して無理はせず、休息を取りながら介護を続けていきましょう。

▶介護うつの症状や原因などについてはこちら

経済的負担による家計破綻

介護では、医療費や介護サービスの利用料、おむつやその他雑費など、多額の費用がかかります。ひとりで介護をしている場合、その費用を全て自分で負担することになれば、最悪の場合家計破綻を引き起こす可能性があります。

介護による経済的負担を減らすには、家族で費用を分担したり親の資産を活用したりなどの対策が必要です。助成金や減免制度を活用し、費用負担を軽減できる場合もあります。

介護は長期に及ぶことが多いです。今のうちに周囲と協力して経済面の対策を立てておきましょう。

親族関係の悪化

介護を自分ひとりで抱え込んでしまうと「なんで私だけ」という気持ちから兄弟姉妹で介護を押し付け合ってしまう場合があります。親の介護方針でも対立してしまい、介護自体が疎かになる可能性があります。

家族関係の悪化を防ぐために、兄弟姉妹としっかり話し合いお互いの立場や気持ちを確認することが大切です。遺産の取り扱いや介護の役割分担、費用負担についてなど、家族で介護を乗り切るためにもしっかりすり合わせを行いましょう。

「私ばかり親の介護をしている」が、親の介護は義務?

介護 義務

親の介護をすることは「扶養義務」にあたるため、子供は親を介護をする義務があります。しかし、特定の子供が行う義務はありません。一緒に住んでいるから、長男・長女だからといった理由でひとりで抱え込まなくてもよいのです。

また、子供の配偶者には扶養義務はありません。介護を義務と考えず、家族間で話し合い協力を仰ぎましょう。それでも解決ができない場合は、扶養請求調停を申し立て法律的に解決する方法もあります。

親の介護はいつまで続くと考えておくべきか

公益財団法人生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査(2021年度) 」によると、介護を行った平均的な期間は、5年1ヶ月です。

介護期間の内訳は「4〜10年未満」がもっとも多く、全体の31.5%ですが、「10年以上」の長期の介護は17.5%もの割合になっています。また、年々10年以上の割合は増えているようです。

介護がどのくらい続くのか、予想はできません。長期化も覚悟の上、無理のない介護を続けることが大切です。

▶親の介護をしながらできる仕事についてこちら

「私ばかり親の介護をしている」と感じたときにやるべきこと

「親の介護が私ばかりに集中している」と感じたときは、不公平さを感じている部分の対策を考えたり支援制度を活用したりして解決方法を探りましょう。

兄弟間で役割分担・解決方法を話し合う

「親の介護なのに私ばかり」と一部の人に負担が偏らないよう、事前に兄弟間で役割分担を相談しておきましょう。困ったときも、その都度解決方法を相談できるようにコミュニケーションをとっておくことも重要です。役割分担を具体的にしておくと、不公平感が和らぎます。

親の住居から遠方に住んでいる場合でも、介護を手伝う方法はあります。こまめに連絡をとって、主介護をしている兄弟に「私ばかり」と孤立感を与えないようにフォローしたり、直接介護に協力しない代わりに物品や介護資金を送ったりといった後方支援も有効です。

地域包括支援センター等の専門家に相談する

親の介護で悩んだときは、地域包括支援センターに相談しましょう。地域包括支援センターは、概ね中学校区ごとに市区町村が設置している地域の総合相談窓口です。

地域包括支援センターには、社会福祉士・主任介護支援専門員・保健師といった高齢者福祉のスペシャリストが配置されています。介護相談だけでなく、権利擁護・閉じこもりなどの諸課題に対し、それぞれの専門分野を活かして連携しながら対応してもらえます。

介護サービスや施設入居を検討する

家族で介護を分担しても負担が減らない場合は、介護サービスを利用することをおすすめします。要介護者や介護者の生活を大きく変えることなく、困っている部分だけを依頼することも可能です。

食事や入浴、リハビリなど素人だけでは限界がある部分は、プロに任せるのも一つの方法です。

介護保険サービスを活用する

介護保険サービスは、要介護認定のレベルに応じて専門的な介護サービスを受けられる仕組みです。大きく以下の3種類のサービスがあります。

居宅サービス

主に自宅で介護を受ける方を対象にしたサービスです。サービス内容は以下の通りです。

居宅サービス

  • 訪問系サービス(訪問介護や訪問看護)
  • 通所系サービス(デイサービスや通所リハビリテーション)
  • 短期入所サービス(一定期間介護施設に宿泊)

また、自宅のバリアフリー化工事に対する補助金や、介護に必要な福祉用具のレンタル・販売、医師・栄養士・薬剤師などから自宅で療養上の指導を受けられるサービスもあります。さらに、これらを組み合わせてケアプランを作ってくれるケアマネジャーのサービスも居宅サービスの一種です。

施設サービス

多種多様な老人ホームのうち、「特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)」、「介護老人保健施設」「介護医療院(介護療養型医療施設)」が介護保険の施設サービスに該当し、介護保険施設とも呼ばれます。介護度が重くなっても利用でき、公的な減免制度の対象になっているため、比較的安価で入所できるところも特徴です。

各介護保険施設の概要

名称

概要

特別養護老人ホーム

・原則要介護3以上が対象
・高齢者の生活の場として、日常生活全般の介護を提供する

介護老人保健施設

・要介護1以上が対象
・リハビリによって在宅復帰を目指す入所施設

介護医療院

(介護療養型医療施設)

・要介護1以上で、長期的な療養を必要とする方が対象
・重度の認知症患者や専門的な医療ケアにも対応

地域密着型サービス

地域密着型サービスは、施設が所在する市区町村に住民票がある人だけが利用できる、地域性の強い支援サービスです。

定期訪問や依頼に応じた随時対応が可能な特殊な訪問介護や、認知症に特化したデイサービス及び入所施設、訪問・通所・短期入所の3サービスを1か所で提供する介護施設などがあります。

▶介護疲れの対策についてはこちら

介護保険制度以外の社会資源を活用する

公的なものやボランティア・営利企業などを問わず、支援を必要とする人の課題を解決するために活用できるサービス・モノ・人材などを社会資源といいます。介護保険制度以外にも社会資源は多く存在するため、積極的に活用しましょう。

自治体独自のサービス

自治体独自の支援制度として、一定の要件を満たした方を対象にオムツの助成券や安否確認を兼ねた配食サービス、寝具の洗濯消毒乾燥サービスなどがあります。また、認知症の方が所在不明になったときに早期対応・早期発見の助けとなる見守りSOSや、独居高齢者のための緊急通報装置の貸与など多種多様です。

自治体独自のサービスに関する情報は地域包括支援センターでも提供されているため、介護申請とあわせて相談するとよいでしょう。

民間のサービス

例えば、地域の民生委員による乳酸菌飲料の訪問や、近隣住民の声掛け・様子伺いも地域の社会資源です。大手スーパーやコンビニで行っている商品宅配サービス、オンラインショッピングサイトなどもうまく活用すれば、「私ばかり大変だ」と感じる親の介護の負担を減らせるでしょう。

親の介護のためとはいえ、自分の家庭がありながら毎日実家を訪問するのは大変です。担当のケアマネジャーとも相談しながら、民間のサービスを組み合わせることも検討しましょう。

各種助成制度を活用する

所得が少ない介護者の経済的負担を軽減するため、介護保険サービスや医療費の自己負担額を助成するための制度もあります。これらの制度を活用して親の介護費用を賄いましょう。具体的な助成制度の例は、以下の通りです。

各種助成制度

  • 特定入居者介護サービス費(負担限度額認定制度)
  • 高額介護サービス費
  • 高額医療・高額介護合算療養費制度
  • 医療費控除
  • 障害者控除
  • 生活保護

これらは施設入所の介護保険対象外経費の一部を減免したり、多く払った費用の一部が還付されたりする制度です。どれも受給要件があり、事前の申請が必要です。詳しくは担当のケアマネジャーや市区町村の介護保険担当窓口に相談してみましょう。

「私ばかり親の介護をしている」と感じたときのイライラ解消法

私ばかり親の介護をしていると感じたときは、イライラを抑える対策が必要です。ここからは、精神的ストレスのサインであるイライラを解消する方法を紹介します。

身近に相談相手を作る

大切なのは、介護負担によるストレスや悩みをため込まないことです。誰かに聞いてもらうだけでも、ストレス解消の効果が期待できます。友人などで同じような環境にある方とお茶をしたり、介護の仕事をしている友人に相談してみたりするのもよいでしょう。

身近にそのような人がいないという方は、介護者の集いや認知症カフェを活用しましょう。介護者の集いや認知症カフェに関する情報は、地域包括支援センターに問い合わせると教えてもらえます。「なぜ私ばかり親の介護を…」と同じ悩みをもって過ごしている方が多数参加しているはずですので、お互いの体験談や悩みを語り合えるでしょう。ストレス解消や介護の悩みの解決のヒントが見つかるかもしれません。

スキルや知識を取得する

介護のスキルや知識を身に着ければ、以前は大変に思えた認知症の対応や身体介護も楽に感じられるようになるでしょう。現に初歩的な介護資格である「介護職員初任者研修」では、親の介護やボランティアのために取得したいと考える受講者も多いです。親の介護を終えた後は資格や介護経験を活かし、社会貢献にも活用できます。

親の介護は、トラブルになる前に専門家に相談しましょう

この記事のまとめ

  • 「私ばかり親の介護を…」と感じるのは、孤独感・負担や疲労、ストレスが限界に近づいているサイン
  • 親の介護が始まる前に、親本人の意向確認や兄弟間での役割分担を決めておくとよい
  • 「私ばかり親の介護をしている」という不満を抱えたままにすると、介護うつの発症や系税的負担による家計破綻、親族関係の悪化のリスクがある
  • 親の介護が始まったら、自分だけで頑張るのではなく、専門家に相談するのがおすすめ
  • 親の介護は、介護保険サービスなどの社会資源や助成制度を活用する
  • 親の介護では、共倒れにならないために意識的にストレス解消を図るようにする

「親の介護を、なぜ私ばかりが…」と感じるようになったら、身体的・精神的・経済的な面でストレスを受けているサインです。悩みごとや困りごとをそのままにしておくと、介護者自身が体調を崩して共倒れになってしまいます。そうならないよう、身内や専門家に頼って適切な対策を講じましょう。

監修者 SUPERVISOR
介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、福祉用具専門相談員、福祉住環境コーディネーター2級 池田 正樹

東北公益文科大学卒業。その後、介護保険や障害者総合支援法に関する様々な在宅サービスや資格講座の講師を担当した。現在は社会福祉法人が運営する特別養護老人ホームの生活相談員として、入居に関する相談に対応している。在宅・施設双方の業務に加えて実際に家族を介護した経験もある。高齢者介護分野のみならず、障がい者支援に関する制度にも明るい。

SHARE この記事をSNSでシェアする