骨粗鬆症の予防に効果的な食べ物とは?骨密度を増やすメニューや食べてはいけない食材を解説
骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の予防に効果的な食べ物があるのを知っていますか?高齢者は、加齢に伴い骨密度の低下が起こります。骨密度の低下によって骨粗鬆症になると、日常生活に支障をきたす恐れもあるため注意が必要です。本記事では、骨粗鬆症を防ぐために効果的な食べ物について解説します。おすすめの食事メニューや食べてはいけない食材も紹介しますので、参考にしてみてください。
武庫川女子大学生活環境学部食物栄養学科卒業。
管理栄養士として病院に勤務し、患者様の栄養管理及び栄養指導に従事。
糖尿病患者や腎臓病患者を中心に、病状の進行を防ぐための食事指導を行う。食事と健康、美容に関する記事を中心に管理栄養士ライターとして活動中。
骨粗鬆症とは
骨粗鬆症とは、骨の強度が低下して骨折しやすくなる病気です。骨粗鬆症といえば、骨密度が重要ということはよく知られています。しかし、骨の強度は骨密度だけでなく、骨密度と骨質で決まります。骨質とは、骨の質や構造などのことで、骨の強度を保つために重要です。
骨は、古い骨を壊す「骨吸収」と新しい骨を作る「骨形成」のように新陳代謝を繰り返しています。このバランスがとれていれば骨密度が減ることはありませんが、何らかの原因によってバランスが崩れると骨密度の低下につながります。その結果、骨粗鬆症が引き起こされてしまうのです。
骨密度が低下する原因は?
骨粗鬆症を引き起こす骨密度の低下の原因は、骨の新陳代謝のバランスが崩れることです。バランスが崩れる原因は生理的なものから生活習慣によるものまでさまざまです。ここでは、骨密度低下の原因について詳しく解説します。
加齢
歳を重ねるにつれ、誰でも骨密度は低下する傾向にあります。骨密度は、生まれてから20歳頃までに徐々に増加しますが、20~40歳代をピークに年齢と共に低下していきます。
しかし、骨密度が低下しても自覚症状があるわけではありません。人は誰でも骨密度が低下するということを理解し、日頃から骨密度の低下を予防するよう意識することが大切です。
閉経(女性のみ)
女性ホルモンには、カルシウムの吸収を助けたり骨吸収を抑制して骨が壊れるのを抑制する働きがあります。そのため、閉経による女性ホルモンの急激な減少は、骨密度を低下させる大きな原因の一つです。骨粗鬆症は男性に比べて女性に多いのですが、ホルモンの影響が大きいといわれています。
生活習慣
骨密度低下の原因になる生活習慣には、運動不足や過度の飲酒、喫煙、ダイエットなどがあります。まず、適度な運動は骨粗鬆症を予防するために重要です。運動をすることで骨に適度な負荷を与えると、骨芽細胞と呼ばれる骨を作る細胞の働きが活発になります。
過度の飲酒や喫煙は、骨の維持に必要な栄養素の働きを妨げます。また、過度なダイエットでも、骨の健康維持に必要な栄養素が不足しやすくなります。このような生活習慣が原因となって骨密度が低下するため、生活習慣を改善して骨粗鬆症予防に努めることが大切です。
高齢者が骨粗鬆症になった場合のリスク
高齢者が骨粗鬆症になった場合、特に注意しなければならないのが骨折です。高齢になると、骨折した際の回復にも時間がかかります。骨折によって日常生活での行動にも支障が生じ、介護を必要とする状況に陥る場合もあるでしょう。
また、骨折によって寝たきりになることで筋肉量の減少や筋力低下、身体機能の低下が起こり、ますます健康的な生活から遠ざかってしまうという悪循環に陥ります。骨粗鬆症自体に痛みがあるわけではありませんが、高齢者にとって健康を害するリスクを持った病気なのです。
骨粗鬆症を予防するための食事のポイント
骨粗鬆症予防には食事が重要です。ここでは、骨粗鬆症を予防するために効果的な食べ物や食事のポイントを解説します。
カルシウムを多く含む食べ物を十分摂る
カルシウムは骨の構成成分の一つで、骨粗鬆症予防には1日700~800mgを摂ることが推奨されています。カルシウムが多く含まれる食べ物には、牛乳・乳製品、魚介類、豆類、海藻類などがあります。これらの食べ物を毎日の食事にバランスよく取り入れて、十分なカルシウム摂取を心がけましょう。
カルシウムを多く含む食べ物については、後で詳しく紹介します。
カルシウムの吸収を阻害する食べ物は避ける
カルシウムは、骨粗鬆症予防に必要不可欠な栄養素です。骨密度を維持するためには、カルシウムの吸収を阻害する食べ物をできる限り控えるようにしましょう。カルシウムの吸収を阻害する食べ物として注意が必要なのは、リンを多く含む食品や食塩を多く含む食品、アルコールなどです。どのような食べ物が該当するのかは、後ほど具体的に説明します。
栄養バランスのよい食事を摂る
栄養バランスの整った食事は、健康維持の基本です。これは骨の健康維持においても同じで、骨粗鬆症予防のためには栄養バランスのよい食事を心がけましょう。栄養バランスのよい食事とは、主食・主菜・副菜の揃った食事です。これらを意識することで、必要なたんぱく質やビタミン、ミネラルを摂取できます。
骨粗鬆症を予防するために効果的な食べ物
ここでは、骨粗鬆症予防に効果的な食べ物を紹介します。骨粗鬆症の予防には、カルシウムの摂取に加えてカルシウムの吸収を助ける栄養素などを摂ることも大切です。それぞれの栄養素の働きや、どのような食べ物がよいのかを知っておくと食事を考える際に便利です。
カルシウムを多く含む食べ物
カルシウムは骨や歯の構成成分であるのに加え、身体の機能を維持・調整するのに必要不可欠なミネラルです。日本人には不足しがちな栄養素とされており、食事で積極的に摂ることをおすすめします。
カルシウムを多く含む食べ物(カルシウムの推奨量:700~800mg/日)
- 牛乳・乳製品:ヨーグルト、チーズなど
- 魚介類:しらす干し、いわし、ししゃも(骨ごと食べられる小魚)など
- 豆類:木綿豆腐、高野豆腐、厚揚げなど
- 海藻類:ひじき、わかめなど
- 野菜類:小松菜、ほうれん草、チンゲン菜、切り干し大根など
たんぱく質を多く含む食べ物
たんぱく質を多く含む食べ物も、骨粗鬆症を予防するために効果的な食べ物の一つです。中でもたんぱく質の一種であるコラーゲンは、骨質を高めることができ、骨に強さだけでなくしなやかさを与えます。食事から良質なコラーゲンを摂ることも、骨粗鬆症予防に役立ちます。
たんぱく質を多く含む食べ物(男性:60g/日、女性:50g/日)
- 肉類:鶏ささみ、鶏むね肉、豚ヒレ肉、牛もも肉など
- 魚介類:イワシ、アジ、マグロの赤身、カツオなど
- 乳製品:牛乳、チーズ、ヨーグルトなど
- 豆類:豆腐、高野豆腐、厚揚げなど
ビタミンDを多く含む食べ物
ビタミンDには、カルシウムの吸収を助ける働きや骨の形成を助ける働きがあります。そのため、カルシウムと一緒に摂ることで骨粗鬆症の予防に効果的な栄養素です。
ビタミンDを多く含む食べ物(ビタミンDの推奨量:10~20μg/日)
- 魚介類:鮭、サンマ、ブリ、真アジなど
- きのこ類:干しシイタケ
- 卵類:卵黄(卵白にはほとんど含まていません)
- 肉類:鶏モモ肉
ビタミンKを多く含む食べ物
ビタミンKには、骨の形成を促進するたんぱく質「オステオカルシン」を活性化させる作用があります。また、コラーゲンの働きを促す作用もあり、骨の質を改善する効果も期待できます。
ビタミンKを多く含む食べ物(ビタミンKの推奨量:250~300μg/日)
- 野菜類:小松菜、ほうれん草、チンゲン菜など
- 海藻類:のり、わかめなど
- 豆類:納豆など
ビタミンKには血液凝固作用があるため、抗血液凝固薬である「ワーファリン」の作用を弱めます。ワーファリンを服用中の方は、ビタミンKを含む食べ物の摂り過ぎに注意が必要です。
骨粗鬆症で食べてはいけない食べ物
食べ物の中には、食べることでカルシウムの吸収を阻害するものもあります。ここからは、骨粗鬆症を予防するなら避けるべき食べ物を紹介します。
リンを多く含む食べ物
リンはさまざまな食べ物に含まれ、骨や歯の構成成分としても身体に必要な栄養素です。しかし、カルシウムの排泄を促進する作用があるため摂り過ぎに注意しましょう。
骨粗鬆症予防のために特に注意が必要な食べ物が、インスタント食品や加工食品など添加物としてリン酸塩を多く含む食べ物です。これらの食べ物は自然な食品とは異なり、一度に大量のリンを摂取することになります。そのため、骨粗鬆症を予防したいのであればできる限り避けるのがおすすめです。
食塩を多く含む食べ物
食塩を多く摂ると、余分な塩分は体外に排出されます。この時、食塩の成分であるナトリウムが排出されるのと一緒にカルシウムも排出されることになります。食塩を多く含む食べ物を多く食べることは避けましょう。
過度のアルコール、カフェイン
過度のアルコール摂取は、骨の維持に必要なビタミンDの活性化を妨げる要因の一つです。また、利尿作用があるため尿からのカルシウムの排泄を促進し、骨粗鬆症のリスクにつながります。
コーヒーなどに含まれるカフェインには、カルシウムの排泄を促す作用があります。1日3杯程度までなら許容範囲ですが、それ以上に多飲するのは控えるようにしましょう。また、エナジードリンクにはコーヒー以上に多量のカフェインが含まれているため、できる限り避けましょう。
骨密度を増やすおすすめメニュー
ここでは、簡単に作れる骨密度を増やすメニューや骨粗鬆症予防に効果的な食べ物を多く使った料理を紹介します。普段の食事に1品加えると骨の健康維持に役立ちますので、ぜひ参考にしてみてください。
鮭のクリーム煮
鮭は、カルシウムの吸収を促進するビタミンDが豊富に含まれる食べ物です。鮭のクリーム煮はカルシウムの多い牛乳と鮭をあわせて摂れるため、効率よく骨粗鬆症予防ができます。また、鮭に含まれるDHAやEPAなどの質のよい脂も、骨粗鬆症予防によいといわれています。
材料(2人分)
- 鮭 2切れ
- ほうれん草 1束
- にんじん 1本
- 玉ねぎ 1/2個
- しめじ 1/2株
- 塩コショウ
- 小麦粉 大さじ1
- バター 20g
- 牛乳 200ml
- 小麦粉 大さじ2
- 固形コンソメ 1個
- 塩コショウ 適量
作り方
- 鮭に小麦粉大さじ1をふるい、バター5gを入れてフライパンで焼く
- 1.を皿に取り、フライパンに牛乳と塩を入れる
- 牛乳が煮立ち始めたら鮭を加え、残りのバターを入れて煮る
- ほうれん草、にんじん、玉ねぎ、しめじは食べやすい大きさに切り、3.に加えて中火で煮る
- 味をみて量を調整しながらコンソメを加える
- 野菜がやわらかくなったら完成
鶏肉とひじきのつくね
骨粗鬆症予防には、カルシウムに加えてたんぱく質やビタミンKなどの栄養素も効果的です。鶏肉とひじきのつくねには、これらの栄養素を豊富に含む食べ物が使われています。豆腐を加えることでやわらかい食感となるため、高齢者の方でも食べやすいという点でもおすすめのメニューです。
材料
- 鶏ひき肉 400g
- 木綿豆腐 150g
- ひじき(乾燥)5g
- 玉ねぎ 50g
- 塩コショウ 適量
- ごま油 小さじ1
- 片栗粉 大さじ1
- サラダ油 大さじ1/2
- 酒 大さじ1
- ◆砂糖 大さじ2
- ◆醤油 大さじ2
- ◆みりん 大さじ1
- ◆片栗粉 小さじ1
- 大葉 お好み
作り方
- 豆腐はキッチンペーパーで水を切り、ひじきは戻して水気を切る
- 玉ねぎはみじん切りにする
- 塩こしょう、ごま油、片栗粉、豆腐、ひじき、玉ねぎを入れてよく混ぜる
- 食べやすい大きさに成形する
- 油を熱したフライパンで両面焼く
- 酒を加えて蓋をし、蒸し焼きにする
- つくねを皿に盛りつけ、フライパンに◆を入れて火にかけタレを作ったら完成
チンゲン菜と干しエビの中華炒め
チンゲン菜と干しエビは、カルシウムが豊富で骨粗鬆症予防におすすめな食材です。中華炒めは簡単に作れて、1品加えるだけでたんぱく質、ビタミン、カルシウムが補給できるため、栄養バランスが整えやすいメニューです。
材料(2人分)
- チンゲン菜 1株
- 干しエビ 大さじ1
- 鶏ガラスープの素 小さじ1
- 片栗粉 小さじ1/2
- ごま油 小さじ1
作り方
- チンゲン菜は、4cm長さに切る
- フライパンにごま油を熱し、チンゲン菜を炒める
- しんなりしてきたら、干しエビと鶏ガラスープの素を加えて混ぜる
- 水溶き片栗粉を加えて全体的にとろみをつける
骨粗鬆症予防には、骨密度を保つのに効果的な食べ物を食べましょう
この記事のまとめ
- 骨粗鬆症予防には、骨密度の低下を防いで健康な骨質を保つ必要がある
- 骨粗鬆症を予防するためには、カルシウムと共に良質なたんぱく質やビタミンD、ビタミンKを十分に摂るようにする
- 骨粗鬆症を予防する食事のポイントは、カルシウムを多く含む食べ物をとり、カルシウムの吸収を阻害する食べ物は避け、栄養バランスのよい食事を摂る
- 骨密度低下の原因となるリンや、食塩を多く含む食べ物やアルコールは控える
- 骨粗鬆症予防に効果的な食べ物を意識的に取り入れ、バランスの整った食事を心がける
骨粗鬆症の予防には毎日の食事が大切です。本記事で紹介した骨密度の低下を防ぐのに効果的な食べ物やメニューを利用して、健康な骨の状態への改善・維持を心がけましょう。