親の介護のためのお金がない!介護費用の相場や資金がない場合の対処法をご紹介
親が要介護状態になった場合、介護サービスの利用や施設に入居するためには費用がかかります。親の介護のためのお金がない場合、公的な助成金の利用や地域包括支援センターに相談することが必要です。本記事では、介護にかかる費用相場や資金がない場合の対策を解説します。
介護職員として介護老人保健施設に勤務。
ケアマネジャー取得後は、在宅で生活する高齢者や家族をサポートする。
現在はWebライターとして、介護分野に関する記事を中心に執筆している。
親の介護にかかる費用の相場
親の介護には、介護サービス費用や施設への入居費用がかかります。また、おむつ代や住宅改修費などをはじめとした、介護サービス以外にかかる費用も軽視できません。
住まいや身体状況などにより変わりますが、要介護度に比例して介護にかかる費用が上がる傾向にあります。いざというときに親の介護のためのお金がないと慌てないよう、準備が必要です。
まずは、在宅で親の介護する場合と介護施設に入居する場合の費用相場について説明していきます。
在宅で介護をする場合
在宅で親の介護をした場合の初期費用は、介護保険サービスの自己負担費用を含め、平均74万円となっています。親の介護を始める際には、住宅改修や介護用ベッド、車いすなどさまざまな物品の購入が発生します。要介護度別にみると、要介護度が重くなれば費用負担も大きくなり、要介護5では107万円になっています。
1ヶ月でかかる費用も要介護度が高くなるほど高くなる傾向にあり、要介護度1で平均3万3千円程度、要介護度5で7万5千円となっています。そのうち3割ほどが介護サービスの利用にかかる費用、7割がおむつや医療費などの介護サービス以外でかかる費用です。
在宅介護にかかる費用
- 初期費用(平均):74万円
- 1ヶ月にかかる費用(平均):5万円
介護施設に入居する場合
高齢者向け住まいの初期費用は平均184万6千118円です。月額費用は平均18万3千204円になり、その内訳で一番高額なのが家賃の8万7千182円です。
親の介護を自宅でする場合、持ち家であれば家賃はかかりませんが、介護施設の場合は家賃や管理費など毎月負担する必要があるため高くなります。
親の介護のためのお金がない場合に負担が軽減できる制度
親の介護をするにはさまざまな費用が発生します。親に資産があり自力で対処できれば問題はありませんが、お金がない場合は家族が費用の負担をすることも考えなければなりません。
親の介護のためのお金がない場合、まずは公的な制度の利用がおすすめです。一定の条件に当てはまると負担が軽減されることや、あとからお金が戻ってくる制度があります。ここからは、介護費用の負担が軽減できる制度を紹介します。
医療費控除
「医療費控除」とは、1年間で支払った医療費や、医療系の介護サービスを利用した費用を申請すれば、納めた税金の一部が戻ってくる制度のことです。支払った医療費や介護サービスの費用が10万円を超えた場合、申請の対象となります。
ただし介護サービスの場合、訪問看護や訪問リハビリといった医療系のサービスを利用した場合が対象です。また、医療系サービスとあわせれば、ヘルパーやデイサービスなどを利用した場合も対象となります。
おむつ代は、医師が発行する「おむつ使用証明書」があれば医療費控除の対象となるため、主治医に相談してみてください。
生活福祉資金貸付制度
「生活福祉資金貸付制度」とは、都道府県社会福祉協議会が実施主体の貸付制度のことです。低所得世帯、障がい者世帯、高齢者世帯などそれぞれの世帯に合わせた資金の貸付を行います。
親の介護のためのお金がない場合には福祉資金として無利子で借りることができますが、貸付限度額は580万円となり20年以内に返さなければなりません。連帯保証人が必要ですが、いない場合は年1.5%の利子がつきます。
介護保険の負担限度額認定制度
「負担限度額認定制度」とは、介護保険を利用して介護施設を利用する場合、資産など一定の要件を満たした人は食費や居住費の自己負担が軽減される制度のことです。介護保険施設(特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護療養型医療施設・介護医療院)やショートステイで利用可能です。
世帯の所得や預貯金などの資産によって負担限度額が異なりますが、親の介護のためのお金がない場合は申請をおすすめします。
負担限度額認定制度を利用するには、事前に認定してもらう必要があります。施設の利用前に市区町村へ申請する他に、ケアマネジャーや地域包括支援センターでも対応してもらえます。有効期間は1年間のため、毎年申請が必要です。
高額医療・高額介護合算療養費制度
「高額医療・高額介護合算療養費制度」とは、介護保険と医療保険を合算して自己負担限度額を超えた場合、超えた分が給付される制度のことです。
給付額は年齢や年収によって異なるため確認が必要ですが、後期高齢者医療と介護保険を利用している一般の人は、56万円が上限となります。
入院して医療費がかかった場合や介護サービスを多く利用した際など、想像以上にお金がかかっていることがあります。親の介護のためのお金がない場合、申請をするだけでお金が戻ってくる場合があるため、必ず確認をしましょう。
高額介護サービス費制度
「高額介護サービス費制度」とは、1年間に支払った介護費用の自己負担額のうち、上限額を超えた分が払い戻される制度です。上限額は所得に応じて異なります。
例えば、世帯の全員が市町村民税非課税の場合、月額2万4千600円が負担をする上限額です。一般的な所得の場合、月額4万4千400円になります。
サービス利用料の自己負担額が上限を超えた場合、市区町村から申請通知書が送られてくるため、忘れずに申請しましょう。一度申請をすれば、その後も該当する月があれば自動的に登録した口座に振り込まれます。
社会福祉法人等による利用者負担軽減制度
「社会福祉法人等による利用者負担軽減制度」とは、一定の要件を満たした人が、社会福祉法人が運営する特別養護老人ホーム、訪問介護、通所介護などの在宅サービスを利用した場合、利用者負担額が軽減される制度のことです。
利用条件
- 世帯員の所得が一定以下であること(1人世帯では150万円以下、世帯員が1人増えるごとに50万円増加)
- 世帯員の預貯金額が一定以下であること(1人世帯では350万円以下、世帯員が1人増えるごとに100万円増加)
- それ以外に財産がないこと
以上の条件に当てはまれば認定され、親の介護にかかる介護サービス利用料(1割負担分)、食費、住居費の支払いの25%減額がされます。
親の介護のためのお金がない場合、市区町村に申請をすることにより要件に合えば証書が発行されます。対象のサービス事業所が限られるため、現在利用している事業所が対象外の場合、他の事業所に変える対応が必要です。
自治体独自の助成制度
これまで負担が軽減される公的な制度を紹介してきましたが、一部の自治体では独自に介護サービスの利用に対する助成制度を実施しています。
岡山市の場合、介護を必要とする65歳以上の高齢者を在宅で介護している介護者に対して「家族介護者慰労金」が給付されます。
同居する人が全員市民税非課税であることや、要介護3以上の認定が1年以上継続しているなどの条件はありますが、年額10万円が給付されるため、親の介護のためのお金がない場合は介護費用にあてることが可能です。
渋谷区の例では、対象となる介護サービスを利用したとき、支払った自己負担額の70%が助成されます。
親の介護のためのお金がない場合の対処方法
介護はある日突然必要になります。さまざまな手続きや連絡など対処に困ることも多くなるため、まずは相談先を見つけることが必要です。
地域包括支援センターやケアマネジャーに相談する
親の介護のためのお金がない場合、地域包括支援センターに相談してみましょう。すでに介護保険のサービスを利用している場合は、担当のケアマネジャーに相談してください。
親の介護のため介護保険のサービスが利用できるように、要介護認定の申請をしましょう。要支援か要介護の認定が下りれば、介護保険サービス利用料の一部を給付してもらえます。親の介護に必要なお金がない場合でも、自己負担は実際の費用の1割から3割ですむことになります。
地域包括支援センターは、医療や介護、福祉など高齢者や障害者を支えてくれる機関です。介護や福祉の専門家が集まっているため、施設の紹介や金銭に関する相談にも対応してもらえます。
新たに開設する施設や建設計画のある施設といった、一般に広まっていない情報を知っていることも多いです。空き状況や低額な入所施設のようなあまり知られていない情報も、地域包括支援センターに集まります。
また、入居を希望しても空いている施設がない場合は、ショートステイを利用するなど別の対応を提案してくれるでしょう。
お金の負担が抑えられる施設に入居する
地域包括支援センターやケアマネジャーに相談する際には、低額な介護施設を紹介してもらいましょう。
例えば、特別養護老人ホームは所得に応じた利用負担軽減制度があるため、費用が抑えられます。ただし、申し込む人が多く、複数の施設に申し込みをしても入居するまでに時間を要する場合が多いです。
また、親の介護のためのお金がない場合、有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅は高額と思い避けてしまいがちですが、実は低額な施設もあります。そのような情報も地域包括支援センターやケアマネジャーはよく知っているため、自分で調べるよりも聞いた方が早く見つかるでしょう。
親の介護のためのお金がないと困らないためには?
いざ親の介護が必要になったとき、事前に対策をしておけばお金がないと慌てずに対処できます。
お金については話しにくい内容ですが、介護のためのお金がないと困らないように、親の資産を把握しておく必要があります。
親の介護について話しておく
親の介護が必要になりお金がないと慌てる前に、元気なうちから将来どのように生活していきたいのか話し合うことが必要です。親の介護方針について話しておくことは、今後のトラブル防止につながります。
親自身は自宅で過ごしたいのか施設に入りたいのか、どのような生活をしたいのかを聞くことが必要です。その上で、介護者である家族ができること、できないことを話し合いましょう。
親の介護に必要な費用を概算で計算し、誰がいくら負担するのかなど話し合うことが必要です。
親の年金額や資産を把握する
親の介護についての話し合いで方針が決まったとしても、いざ介護状態になったときにお金がないと分かる場合があります。
そのため、親の年金額や預貯金の金額、土地や有価証券などを保有しているのかなど確認しておくことが大切です。
親の介護のためのお金がない場合は相談しましょう
この記事のまとめ
- 在宅介護の場合、介護保険サービスを利用すると月額8万3千円の費用がかかる
- 施設入居の場合、月額費用は平均18万3千204円が必要になる
- 親の介護のためのお金がない場合、医療費控除や生活福祉資金貸付制度など負担が軽減できる制度を利用する
- お金の問題など困った際は、地域包括支援センターやケアマネジャーに相談をする
- 親が元気なうちに将来の介護について話し合っておく
- 親が元気なうちに親の資産を把握しておく
親の介護をしていくためには資金が必要になりますが、お金がない場合はどこからか捻出する必要があります。親の財産を相続する可能性のある兄弟姉妹も交えて事前に話し合っておくことで、将来のトラブルを防げるでしょう。
また、親の介護のためのお金がない場合、自分ひとりで抱え込まず、介護の専門家である地域包括支援センターやケアマネジャーに相談することが大切です。介護の専門家はさまざまな情報や事例を経験しているため、よりよい提案をしてくれるでしょう。