高齢者が外食を楽しむためのポイントを解説。お出かけの事前準備や外出先での注意点
自宅とは違った環境で美味しい食事を楽しめる外食は、自宅にこもりがちな高齢者のよい気晴らしになります。しかし、身体が思うように動かない高齢者は、若い頃のように自由に外食をするのは難しいのも事実です。そこで今回は、高齢者が外食を楽しむためのポイントを紹介します。
高齢者が抱える外食時のお悩み
まずは、高齢者が直面しやすい外食時の悩みを紹介します。あらかじめ外食時の悩みを把握しておくことで、お店選びやメニュー選びのポイントが分かるようになります。これから高齢者との外食を予定している方も、ぜひ参考にしてください。
食べられるものが限られる
高齢者は咀嚼機能や嚥下機能が低下しているため、食べられる料理が限られてきます。無理に食べようとすると、誤嚥などの事故につながる恐れがあります。
とくに以下の食材は高齢者が食べにくいため注意が必要です。
高齢者が食べにくい食材
- イカやタコなどの噛み切りにくい食材
- パンやゆでたまごなどのパサパサした食材
- わかめや海苔などの上顎に張りつく食材
- 餅やこんにゃくなどの弾力のある食材
- 麺類などのすすって食べる食材
- きなこなどの粉っぽい食材
このように、若い頃のように好きな料理を頼めないことは、高齢者が外食時に悩みがちなポイントです。
こぼすことが多く、きれいに食べられない
高齢者は握力の低下で箸が上手く扱えなくなったり、唇の機能低下で口をしっかり閉じられなくなったりといった理由で、食べこぼしが多くなります。自宅での食事であればそこまで気にならなくても、他人の目がある外食時には気になってしまう方も多いでしょう。
きれいに食べられないことを引け目に感じて、外食に消極的になるケースも少なくありません。機能低下による食べこぼしは、意識して改善できるものではないことも悩みの種になります。
栄養バランスが気になる
高齢者の中には健康のために栄養バランスを意識している方も多いでしょう。外食の場合は油っこい料理や塩分過多な料理が多いため、栄養バランスは偏りがちです。
しかし、栄養バランスの整ったメニューを注文しようとすると、選択肢が限られて外食を楽しめないのも高齢者にありがちな悩みです。
高齢者が外食を楽しむためのポイント
高齢者が楽しく外食するためのポイントをあらかじめ確認しておきましょう。
当日までに事前準備をしておく
高齢者が外食する際には、事前準備が必要です。気になるお店を見つけたら店舗のホームページなどで下調べをしましょう。事前に確認しておきたい内容としては、お店で提供しているメニューや座席の状況、個室の有無などが挙げられます。詳しくは、「高齢者がお出かけする前に行うべき事前準備」で解説します。
無理のない交通手段で出掛ける
高齢者の外食で注意したいのが、お店までの移動です。家族に送迎してもらえるのであれば気にする必要はありませんが、高齢者だけで移動する場合は無理のない交通手段を選びましょう。
とくに家にこもりがちな高齢者は、外に出て活動するだけで疲れてしまうこともあります。店舗までの道のりや移動時間を下調べし、無理なく現地にたどり着けるかの確認をしておきましょう。
お店では食べやすい料理を注文する
久々に外食をすると、ついあれこれ頼みたくなってしまいますが、料理を選ぶときは無理なく食べられるかという点も意識しましょう。固い食材や喉に詰まりやすい料理を避けて、飲み込みやすい料理を選ぶのがおすすめです。高齢者でも食べやすい料理には、以下が挙げられます。
高齢者でも食べやすい料理
- ハンバーグやドリアなどの柔らかい料理
- カレーやシチューなどのとろみのある料理
- 豆腐料理や茶わん蒸しなど喉越しがよい料理
高齢者がお出かけする前に行うべき事前準備
高齢者が外食する際には事前準備が必要とお伝えしましたが、具体的にはどのような準備が必要なのでしょうか。ここからは、高齢者が外食前に確認しておきたいポイントを施設面と食事内容の面から紹介します。
お店の状況を確認する
座席の状況を確認する
高齢者の場合、店舗の座席が合わなくて外食を楽しめないケースがあります。とくに足腰が弱ってきた高齢者は、座敷席だとしゃがんだり立ったりする動作が負担になります。一般的に、テーブル席のほうが身体への負担はかかりにくいため、あらかじめテーブル席が用意されているか確認しましょう。
また、きれいに食べられないことが気になってしまう方や家族の介護が必要な方は、個室席を予約すると気兼ねなく食事が楽しめます。
トイレがバリアフリーになっているか確認する
高齢者と外食する際には、施設内のトイレの造りにも注目しましょう。トイレ内に手すりが付いているか、段差がないかなどを確認しておくことで当日のトラブルを回避できます。
また、車いすを利用している場合は、バリアフリーに対応しているかの確認も必須です。このとき、トイレまでの導線に車いすが通れるスペースが確保されているかという点も併せて確認しましょう。ホームページだけでは詳細が分からない場合は、店舗に直接電話をして確認すると安心です。
駐車場や店内に十分な広さがあるか確認する
車いすを利用して外食する場合や、要介護の方が家族のサポートを受けながら外食する場合は、広いスペースがあることが必須条件になります。チェーンのレストランや大型施設に入っているレストランは広いスペースが確保されていることが多いですが、個人店だと駐車場や通路が狭いケースもあります。
スペースが狭いと他のお客様の移動を妨げてしまったり、そもそも店舗内に入れなかったりする可能性もあるため、事前に確認しておきましょう。
外食先のメニューを確認する
普段から食べ慣れているものがあるか確認する
外食をすると家庭では食べられないような珍しい料理を目にすることもありますが、誤嚥などの事故を防ぐためには、普段から食べ慣れている食事を選ぶのがおすすめです。お店選びをする際には、馴染みのある料理があるかという点も確認しましょう。
また、高齢者の外食に同伴するご家族は、あらかじめ高齢者に人気のメニューを聞いておくのもおすすめです。ご家族がさりげなくおすすめメニューを教えてあげれば、高齢者もメニュー選びで迷わなくなります。
固い食べものばかりでないか確認する
咀嚼機能が衰えた高齢者は、固い食材が苦手なことが多いです。外食を楽しむためにも、お店選びの際には柔らかい料理があるかを確認をしましょう。
また、固い食材を抜いて調理したり、食材を細かくカットしたりといった対応をしてくれる店舗もあります。普段から介護食を食べている場合は、そうした個別のサービスに対応しているか確認すると安心です。
塩分が控え目であるか確認する
外食は普段の食事と比べると塩分過多になりがちです。塩分を摂りすぎると、高血圧や心筋梗塞などの発症リスクが高まるため、外食の際はなるべく塩分控えめな料理が揃ったお店を選ぶようにしましょう。
チェーンのレストランでは、ホームページにカロリーや塩分量が記載されている場合があります。塩分量が気になる方は、そうした情報も参考にしましょう。
高齢者が安全に移動するためのポイント
外食を楽しむためには、現地まで安全に移動することも重要な要素です。移動中に事故が起きてしまったら、せっかくの外食が台無しになってしまいます。トラブルを回避するためにも、外食先までの移動方法についても下調べしておきましょう。
あらかじめ交通手段を確認しておく
高齢者が安全に移動するためには、あらかじめ交通手段を確認しておくことが大切です。バスや電車などの公共交通機関を利用する場合は、乗り降りする駅や乗車時刻などを確認しておきましょう。
また、駅から徒歩で移動する場合は、お店までの地図を用意しておくと安心です。現地までのルートを頭に入れておけば、心の余裕にもつながります。
余裕を持ったスケジュールで行動する
あらかじめお店を予約している場合や友達と待ち合わせをしている場合は、余裕を持ったスケジュールで行動するようにしましょう。疲れて休憩しても急がなくても済むように、少し早く現地に到着するイメージで行動しましょう。
車を運転する場合は安全運転を心がける
高齢者の中には、現地まで車で移動する方も多いと思います。しかし、視覚機能や認知機能の衰えにより、思わぬ事故を引き起こす可能性もあります。外食を楽しむためにも、車を運転する場合は安全運転を心がけましょう。
事故のリスクを下げるためには、普段から通り慣れている道を走ることや大通りを避けて走ることなどが有効です。また、時間に余裕がないとスピードが出やすくなってしまうため、余裕を持って出発するようにしましょう。
高齢者が外出先で注意すること
ここからは、外食当日に高齢者が注意すべきポイントを解説します。誤嚥や怪我などを防ぐためにも、あらかじめチェックしておきましょう。
喉に詰まらせやすい食材は避ける
嚥下機能が低下している高齢者は、喉に詰まらせやすい食材は避けるようにしましょう。高齢者が誤嚥すると、自力で食べ物を吐き出すことができずに窒息してしまうことがあります。外食時の誤嚥のリスクを下げるためにも、噛みにくい食材やパサパサとした食材は避けるのが無難です。
嚥下機能に不安がある方は、外食時にとろみ剤を持参する方法もあります。その際はとろみ剤を持ち込んでも問題ないか、お店に確認をしておきましょう。
しっかりと咀嚼する
高齢者が誤嚥を防ぐためには、しっかりと咀嚼をすることが大切です。外食をしていると周りの人とのおしゃべりに夢中になって、咀嚼が疎かになってしまうことがあります。咀嚼が不足すると、むせてしまったり喉に詰まらせてしまったりといったトラブルにつながるため、外食時にはしっかり噛むことを意識しましょう。
また、急いで食べようとすると咀嚼が不足してしまうこともあります。同席している人がすでに食べ終わっていたとしても、慌てずに自分のペースで食べるようにしましょう。
転倒しないように気を付ける
外食時には、おしゃべりに夢中になったり店内の様子に気を取られたりして、足元が疎かになりがちです。段差で躓いて転倒してしまうと大怪我につながる恐れがあるため、移動の際には足元に注意をしましょう。
また、飲食店は油や水などで床が滑りやすくなっていることもあるため、床が濡れている場所を避けて歩くなど、危険な場所には近づかないようにしましょう。
事前準備を行えば高齢者も楽しく外食できる
この記事のまとめ
- 高齢者は、外食をする際に食事内容や食べ方、栄養面などで悩みがちなポイントがある
- 高齢者が外食を楽しむために、店内のつくりや食事内容、お店までの交通手段を事前に確認する
- 高齢者が外食に出かける際には、交通手段の確認や余裕を持った出発、安全運転を心がける
- 高齢者が外食をする際には、食べやすい食材を選んでしっかりと咀嚼する
- 外出時は転倒しないよう足元に注意を払う
家族や友達との外食は、高齢者にとって楽しみなイベントです。当日も楽しめるように、お店の状況や食事内容を事前に確認し、心配事をできるかぎり減らしておきましょう。
また、高齢者と一緒に外食をする場合は、ご家族のサポートが楽しく過ごすための鍵になります。誤嚥や転倒などのリスクを排除して、安全に外食を楽しめる環境を準備しましょう。