初詣はお寺と神社どっちに行く?作法やご利益の違いを解説
新年の定番行事の一つである初詣ですが、お寺と神社のどっちに行けばよいのか迷っていませんか?実は、お寺と神社ではご利益や作法などが少し異なります。本記事では、初詣におけるお寺と神社との違いについて解説します。それぞれの参拝の手順も紹介しているため、参考にしてみてください。
初詣ではお寺と神社のどっちに行けばよい?
新年の初詣では、地域や家庭によって参拝先が異なるため、お寺と神社のどっちを選ぶべきか迷う人も多いでしょう。まずは、初詣においてお寺と神社のどっちに参拝すればよいかについて解説します。
お寺と神社のどっちに参拝しても問題ない
初詣の参拝先として、お寺と神社のどっちを選んでも問題ありません。初詣は、新年に仏様や神様へ昨年を無事に過ごせたことを感謝し、新年も健康で無事に過ごせるように祈ることを指します。参拝先については、神社とお寺のどっちを選んでもよいとされています。
また、日本では古くから神道と仏教を区別せず、それぞれの信仰を取り入れる「神仏習合」という思想がありました。明治時代以降は分けて考えるようになりましたが、現代でも神仏習合の考え方は残っており、初詣ではお寺と神社の両方を参拝する人も多くいます。
本来はその年における「吉方位」にある社寺へ参拝していた
現代ではお寺と神社のどっちでも自由に選ぶ人が多いですが、庶民の間で初詣が広まった江戸時代には、「恵方参り」といって吉方位(縁起のよい方角)にある社寺を選ぶことが一般的でした。吉方位は年によって変わり、その方角にあるお寺や神社へ参拝することで、幸福を呼び込むとされています。
初詣におけるお寺と神社の違い
初詣において、お寺と神社のどっちに参拝すべきか悩む人は多いですが、具体的に両者にはどのような違いがあるのでしょうか。ここからは、初詣におけるお寺と神社の相違点を紹介します。どっちにお参りすればよいか迷ったときの参考にしてください。
拝む対象
お寺と神社では、拝む対象と目的が違います。
お寺は仏様に対して拝む場所で、死後に自身が極楽浄土へ行けるように祈ることを目的としています。また、お寺は仏教における修行の場でもあり、初詣などのお参りには「仏様と一体になる」という意味もあります。
神社は神様が住まう場所であり、山や森などの御神体(神様の魂が宿るもの)へのお参りを通じ、日頃の加護への感謝を伝えることを目的としています。現代では願い事のイメージが強い初詣ですが、本来は祈りを通して神様との繋がりを感じ、感謝を伝える意味があります。
ご利益
お寺と神社では、得られるご利益に違いがあります。お寺は宗派や仏様の教えに基づき、初詣で参拝することで安寧や新しい気付きといった「人の心」に関する恩恵が得られるとされています。一方、神社へのお参りでは、自然のパワーを授かることや、人や物事との縁を結ぶといったご利益が得られる傾向にあります。
参拝の作法
お寺と神社では、参拝時の作法も異なります。神社ではお参りの際に手を叩きますが、お寺では手を叩かないという点が大きな違いです。神社への参拝時に手を叩くのは「柏手(かしわで)」といい、邪気を払い神様への敬意を表す意味があります。
お寺で手を叩かないのは、仏教において右手を仏の手、左手を衆生の手と考えるためです。お寺への参拝は仏と一体になる意味もあるため、音を立てずに静かに両手を合わせるのが望ましいとされています。
初詣でお寺へお参りするときの作法・手順
初詣でお寺へお参りするときには、寺内の造りによって参拝の仕方が異なります。ここからは、初詣における一般的なお寺への参拝方法と手順を紹介します。
①一礼してから山門をくぐる
初詣でお寺の境内に入る際は、山門の前で一礼し、敷居を踏まずにまたいで通りましょう。山門は単なるお寺の入口というだけではなく、俗世と仏の世界を区切る境界の役割も担っています。山門をくぐることは仏道へ足を踏み入れる意味を持つため、無作法に入るのは仏様に対して失礼にあたります。
そのため、山門をくぐる前には服装を整え、「失礼いたします」という気持ちを込めて一礼してから進むようにしてください。
②手水舎で手を清める
お寺の境内に手水舎(ちょうずや/てみずや)がある場合は、そこで手を清めてください。水で身を清めることを「禊(みそぎ)」といい、穢れのない状態で初詣を行うために大切な作法です。手水舎での禊は、柄杓ですくった一杯の水で済ませます。なお、口をすすぐ際には直接柄杓に口をつけないようにしましょう。
お寺の初詣における手水舎の手順
- 右手に柄杓を持ち、3分の1程度の量の水を左手にかける
- 柄杓を左手に持ち替え、同量の水を右手にかける
- 柄杓を右手へ持ち替えたら左手に水を少量注ぎ、口をすすぐ
- 柄杓を両手で立てるように持ったら、残りの水を持ち手部分へゆっくり流す
③本堂前に香炉がある場合は煙を浴びる
本堂前に常香炉(じょうこうろ)がある場合は、その煙を浴びてから本堂へ向かいましょう。常香炉の煙には邪気を払う効果があり、体の悪い部分や頭にかけるとよいとされています。また、スペースがあれば、境内で購入した線香を供えるのもおすすめです。
④本堂にてお賽銭を入れ、鐘をついてから祈りをささげる
本堂の前に着いたら一礼し、賽銭箱にお賽銭を入れましょう。鐘や鰐口(わにぐち/小さな銅鑼)などがあれば鳴らし、仏様に新年の挨拶をしてから礼拝します。願い事がある場合は、感謝の気持ちとともに伝えましょう。
お寺での初詣における礼拝の手順
- 鐘や鰐口を一度だけ鳴らす
- ご本尊へ正面から向き合い、背筋を伸ばして合掌する
- 焼香台があれば、宗派に合わせた回数焼香を行う
⑤境内を一礼してから退出
本堂での参拝を終えたら、境内を一礼してから退出します。山門を出る際は以下の手順を守ると丁寧です。
お寺を退出する作法
- 本堂前で軽く一礼する
- 山門へ向かい、敷居を踏まずにまたぐ
- 山門をくぐり終えたら、もう一度静かに一礼して退出する
参拝前と同様、山門は俗世と仏の世界の境界とされるため、最後まで敬意を持って退出することが大切です。
初詣で神社へお参りするときの作法・手順
初詣における神社への参拝方法はお寺の場合と共通点が多いですが、拝礼時の作法については大きく異なります。ここからは、初詣で神社へお参りするときの一般的な手順と作法について紹介します。
①一礼してから鳥居をくぐる
神社の入口には鳥居がありますが、境内へ入る前に一礼してからくぐりましょう。神社は神様が住む場所であり、鳥居はいわば神様の自宅の玄関です。勝手に敷地に入るのではなく、一礼をすることで「失礼いたします」という気持ちを示すことができます。
②参道は中央を避けて歩く
神社の鳥居から社殿まで続く参道を通るときは、中央を避けて歩くことが大切です。参道の中央は神様の通り道とされているため、初詣の参拝者は左右に分かれて端を進むのが望ましいです。
③手水舎で両手を清める
神社の境内に入ったら、まずは手水舎で手を清めましょう。手順はお寺と共通ですが、柄杓がない神社もあります。その際は、吐水口から流れる水で直接清めます。口をすすぐ際にも、両手で受けた水を使いましょう。
④拝殿にてお賽銭を入れてから拝礼する
両手と口を清めたら拝殿に進み、お賽銭を入れてから拝礼します。一般的には「二拝二拍手一拝」と呼ばれる下記の手順で行います。神社によっては多少異なるため、あらかじめ訪れる場所の作法を確認しておきましょう。
初詣における神社の礼拝の手順
- 拝殿の前で一礼し、鈴または銅鑼を鳴らす
- 賽銭箱へお賽銭を静かに入れる
- 姿勢を正し、腰を90度に折って深いお辞儀を二回する(二拝)
- 胸の高さで両手を合わせたら、右手の指先を少し下へずらす
- 両手を肩幅程度に開き、二回拍手を打つ(二拍手)
- 両手の指先を揃え、感謝の気持ちや願い事を神様に伝える
- 両手を下ろし、最後に一度深いお辞儀をする(一拝)
⑤神社から退出するときの作法
参拝が終わったら、鳥居をくぐる前後で軽く一礼して退出します。
神社を退出する作法
- 拝殿を背にして振り返り、一礼する
- 参道の端を歩いて鳥居まで進む(中央は神様の通り道とされるため避ける)
- 鳥居をくぐり終えたら、神様へ感謝を込めてもう一度一礼する
「願いを叶えてください」ではなく、「ありがとうございました」という気持ちを込めて礼をするのが望ましいとされています。
お寺・神社への初詣における注意点
参拝方法に違いはあっても、お寺と神社のどっちへ初詣に行った場合でも共通する作法があります。ここからは、お寺と神社の初詣における一般的な注意点を紹介します。仏様や神様へ失礼のないように参拝するためにも、事前に確認しておきましょう。
願い事・感謝は一つにまとめる
お寺と神社のどっちへ初詣に行く場合でも、願い事と感謝は一つにまとめることが大切です。参拝とは、仏様や神様へ感謝を伝えることが本来の目的であり、一方的にお願いをするのは失礼にあたります。
また、初詣シーズンは混雑するため、多くの願い事をしているとほかの参拝客へ迷惑がかかってしまいます。初詣の際には欲張り過ぎずに、願い事と感謝の言葉を簡潔にまとめることが大切です。なお、複数のお寺や神社を巡ることは問題ないため、各社寺のご利益に合わせて祈願するのもよいでしょう。
昨年に授かった授与品はそれぞれの「古札納め所」へ納める
お寺と神社のどっちへ初詣に行っても、ご利益に合わせたお札やお守りを授かれますが、昨年の授与品は各社寺の「古札納め所」へ納めましょう。
ここで注意すべき点は、授与品は受けた元の社寺へ返納するのが原則であることです。宗派が異なるお寺や、違う神様を祀る神社へ納めてしまうと、参拝先の神仏に失礼にあたります。
おみくじを引くのは一か所につき一回にする
お寺と神社のどっちにおいても、おみくじは一ヵ所につき一回引くのが原則です。おみくじは、引いた人に対する神仏からの大切な助言です。そのため、内容が気に入らないという理由で何度も引き直すのは、せっかく導きを与えてくれている神仏に対し失礼にあたります。
お賽銭の金額は無理のない範囲にする
お寺や神社には賽銭箱が置かれていることが多いですが、無理のない範囲の金額を納めることが大切です。お賽銭はあくまで感謝の印として捧げるものであり、金額が高ければよいというわけではありません。
また、お賽銭は必須ではないため、持ち合わせがないときには心を込めてお参りするだけでも差し支えありません。
お寺と神社の参拝作法を理解して、どっちへ初詣に行くか決めましょう
この記事のまとめ
- 初詣の参拝先はお寺と神社のどっちでも問題ない
- お寺は人の心に関するご利益、神社は自然や縁に関するご利益を授かれる
- お寺での拝礼時は「合掌」で、手を叩かないのが特徴
- 神社での礼拝時は「二拝二拍手一拝」が一般的
- 境内への入り方、手の清め方はお寺と神社のどっちも同じ
初詣ではお寺と神社のどっちを訪れても問題ありませんが、参拝時の作法が少しずつ異なります。それぞれの正しい参拝方法を理解したうえで、お寺と神社のどっちへ初詣に行くかを決めましょう。