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特集

注目の葬儀社に学ぶ! 100年続く地域貢献企業、永田屋が考える人財戦略

注目の葬儀社に学ぶ! 100年続く地域貢献企業、永田屋が考える人財戦略

コロナ禍を経て、葬儀単価は大幅に減少し葬儀業界全体が変革期を迎えている。葬儀の在り方はもちろん、従業員の働き方、葬儀社の存在価値、経営そのものについて、これまで通りのやり方や考え方では立ち行かなくなってしまうことも懸念される。そのような状況下で、躍進を続けているのが、創業111年を迎えた神奈川県の老舗葬儀社、株式会社永田屋だ。

同社は、Great Place to Work®Institute Japanが主催する2024年版「働きがいのある会社(従業員25-99人部門)」ランキングでベスト100にランクイン、ベストカンパニーに選出された。また、株式会社マイナビが発表する「就職企業人気ランキング」の冠婚葬祭部門で、専門葬儀社として唯一ベスト10に選出された。これは、エンディング業界で過去に類を見ない。加えて、業績においても過去最高売上を作り出すなど、「働きがい」と「業績」を両立する、業界内外から注目を集める企業の一つだ。

永田屋が考える、時代に求められる葬儀社とは──。

専門葬儀社で唯一、マイナビ「就職企業人気ランキング」ベスト10にランクイン

弊社では、採用に最も力を入れています。新卒採用においては、毎年10人程度の新卒社員を採用・育成しています。入社動機には、個々の目的と社会的貢献を結びつけ、共感を得ることを重視し、採用後の育成プログラムを通じて社員の成長を促すことで、高い定着率を実現しています。

マイナビが毎年実施している、学生の投票による「就職企業人気ランキング」では、冠婚葬祭部門において、専門葬儀社として4年連続No.1を頂いています。2024年4月に発表された最新のランキングでは、ベスト10に選出されました。大変ありがたいことに毎年1,000人ほど学生にエントリーいただいています。

参照:マイナビ2025 業界別ランキング

最終的に面接に進んだ学生さんの一人につき、8~10回はコンタクトをとるようにしています。それは採用する人を見極めるための面談ではなく、「人を大切にするということはどういうことか」を行動で表すためです。何度もお会いする中で葬儀の重要性、私たちの役割についてしっかりとお伝えし、育成しながら採用するという手法をとっています。

「誰のために、何のために、なぜこの葬儀の仕事をするために弊社で働くのか。永田屋での仕事を通じて、自分の人生をどうしていきたいのか」ということを、自身の原体験を交えて、弊社で働く目的と紐づけることによって、共感を得た上で入社してもらうことを大切にしています。

学生の中には「人の役に立ちたい。地域社会に貢献したい」という動機をお持ちの方が一定数います。しかし、その動機が葬儀の仕事と紐づいていないことが大半です。彼ら・彼女らに対して私たちが実践しているのは、自身の価値観と、「葬儀を通じて人の役に立ち、地域社会に貢献する」という弊社の経営理念を結びつけることです。それは見せ方だけでなく、経営者や社員がいつも言行一致していることが重要です。

以前は社員の定着率も低く、組織を変えるために私自身が変わらないといけないと気づいたことが、現在のような考えや採用・育成体制が生まれたきっかけでした。経営者の自己変革から始まらないと、本質的な社員の育成や採用は困難です。経営の最大戦略は採用であり、採用がうまくいけば間違いなく会社の経営にも良い結果をもたらします。

お客様満足度96%(アンケート回収率87%)、属人化しない仕組みづくり

永田屋 顧客満足度を上げる職場環境づくり

私たちは、社員の成長がお客様の満足度と直結していると考え、職場環境づくりにも注力しています。

まず、朝礼に全社員が集まり部署を横断して「お客様に満足していただいたことをシェアする」ことを行っています。経営者の立場からではなく、同じ立場である社員同士でシェアをすることによって、再現可能性が生まれ、内発的な動機づけにつながります。また、良いことだけでなくうまくいかなかったこともシェアするようにしています。「人生には失敗はなく、成功か学びしかない」という捉え方で、うまくいかなかったことから学びを得ることも大切だと考えています。現在、お客様の満足度は全総計で96%(アンケート回収率87%)となっており、非常に満足いただいていると捉えています。

葬儀業界では、1宗家1担当制をとっていることもありますが、「誰に頼んでも自分たちのことを理解してくれている、大切にしてくれている、永田屋に頼んで良かった」と思える体制づくりが大切だと考え、デジタルツールも活用しながら属人化しない仕組みづくりに取り組んでいます。また、休暇もしっかりととれる体制が構築されていることで社員満足度が上がり、結果として顧客満足度も上がるという仮説のもと経営しています。

次の100年も選ばれ続ける社会課題解決企業を目指して。

私たちは「故人を温かく見送り、ご遺族の悲しみを少しでも和らげて焦らず一歩踏み出すきっかけを作る」ことを大切にしています。大切な方を亡くされたご遺族の悲しみを和らげるための会を開くなど葬儀後のケアにも注力しています。

新型コロナウイルス流行の影響によって、葬儀単価は大きく減少しましたが、弊社では施行件数が伸長し、過去最高の業績となりました。また、私たちは事業の売上の一部を、地域のお客様に育てていただいた恩返しとして、相模原市と相模原市社会福祉協議会に約30年にわたり寄付活動を行っています。葬儀の仕事を通じて、お客様・社員そして地域社会の「三方よし」の全循環を創っていきたいと考えています。

永田屋は「日本一のライフエンディンググループ」をつくることをビジョンに掲げ、ライフサービスからエンディングまでトータルでサポートできるよう、事業領域の拡大にも取り組んでいます。超高齢社会におけるリスクや課題に向き合い、ライフエンディング事業を通じて社会課題の解決に貢献していきます。


ミッション経営によって、売上はもちろん組織、人財を大きく成長させ、専門葬儀社としてトップクラスの業績を誇る。葬儀を通して、地域社会への貢献、社会課題の解決に取り組む姿勢こそが、次の100年も選ばれる葬儀社であるためのヒントと言えそうだ。葬儀社運営の参考にしてみてはいかがだろうか。


プロフィール PROFILE
株式会社永田屋 代表取締役 田中 大輔氏
株式会社永田屋 代表取締役 田中 大輔氏

永田屋は大正2年創業、神奈川県相模原市、東京都町田市で自社式場を運営する専門葬儀社の四代目。田中氏は1975年生まれ。永田屋入社後、常務取締役を経て、2013年7月に100周年を機に代表取締役に就任。理念経営を実践することで、社員の物心両面の豊かさを追求しながら、現在13拠点20式場を構える関東でもトップクラスの葬儀社となっている。専門葬儀社でありながら、マイナビ人気企業ランキングベスト10入りや、「働きがいのある会社」ランキングでベストカンパニーに選出されるなど、業界内外からの注目も高い。

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