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お金・お家のこと

老後にかかる税金はいくら?項目の種類や金額の計算方法などを解説

老後にかかる税金はいくら?項目の種類や金額の計算方法などを解説

2019年、高齢夫婦無職世帯において、月5万円の赤字が30年間続くと、約2000万円不足する可能性があることに警鐘を鳴らす「老後2000万円不足問題」が世間を騒がせました。すべての世帯で老後の生活資金が不足するわけではないとしても、老後の家計運営には不安がつきまといます。それ以外にも、公的年金を含む収入があれば税金を支払う必要があります。この記事では、老後にかかる税金について解説していきます。

監修者 SUPERVISOR
公認会計士/税理士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士 岸田 康雄

平成28年度経済産業省中小企業省「事業継承ガイドライン」委員、令和2年度日本公認会計士協会中小企業施作研究調査会「事業継承支援専門部会」委員、東京中小企業診断士委員会「事業継承支援研究会」代表幹事。
一橋大学大学院修了。中央青山監査法人にて会計監査及び財務デュー・デリジェンス業務に従事。その後、三菱UFJ銀行ウェルネスマネジメント営業部、みずほ証券投資銀行部M&Aアドバイザリーグループ、メリルリンチ日本証券プリンパル・インベストメント部不動産投資グループなどに在籍し、中小企業の事業継承から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業継承とM&A業務を遂行した。現在は、相続税申告と相続・事業継承コンサルタント業務を提供している。

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老後とはいつから?現代の「老後」を考える

人生100年時代といわれる現代、いつから「老後」が始まるかは、人によって考え方が異なります。ただし、多くの日本人の共通認識として、仕事を定年退職する年齢や年金の受給が始まる年齢などが、老後の始まりであるといってよいでしょう。ここでは、現代の定年制や年金制度に基づいた「老後」について解説します。

定年退職は何歳?

ひと昔前の定年退職といえば、55歳が一般的でした。しかし、1986年に「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(高年齢者雇用安定法)が改正されたことにより、60歳定年が努力義務となります。1998年には60歳未満定年制が禁止され、定年退職の年齢は60歳となりました。

その後も高年齢者雇用安定法における定年の年齢は引き上げが続きます。2012年の改正では、原則希望者全員の65歳までの雇用が義務化され、2020年には70歳まで働く機会の確保を努力義務とする改正が行われました。

こうした改正は、高年齢者に働く機会を与えることで、日本の少子高齢化による労働人口の不足を補うという目的があります。また、高年齢者の就労環境をつくることで、年金では賄いきれない老後資金の不足に対応してもらおうという切実な事情も関係しています。これからは、70歳まで働くのが当たり前の時代になっていくといってよいでしょう。

年金はいつからもらえる?

老後の暮らしといえば、主な収入が年金のみになるというイメージを持つ人は多いです。しかし、年金の受給開始年齢は人によって異なります。

まず、原則として年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)の受給開始年齢は65歳です。ただし、一定の要件を満たす場合は、65歳になるまでの間「特別支給の老齢厚生年金」を受け取ることができます。

これは1985年に厚生年金保険の受給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられたことを受け、当時の受給権者への影響を考え、段階的な移行を目指したためです(特別支給の老齢厚生年金制度)。

特別支給の老齢厚生年金の受給要件

  • 男性は昭和36年4月1日、女性は昭和41年4月1日以前に生まれていること
  • 厚生年金保険等の加入期間が1年以上あること
  • 老齢基礎年金の受給資格期間(10年)があること
  • 生年月日に応じた受給開始年齢に達していること

また、老齢基礎年金、老齢厚生年金ともに、60歳から年金を受け取る「繰上げ受給」や、66歳から75歳まで待って年金を受け取る「繰下げ受給」の制度があります。繰上げの場合は早く年金が受給開始できる代わりに受給できる年金は減額され、反対に繰下げの場合は増額されます。

このように年金の受給開始年齢は、早い人で60歳、遅い人では75歳と幅があることがわかります。60歳から年金生活が始まる時代は徐々に終わりに近づいており、年金受給開始を老後のスタートとするならば、現代の「老後の始まり」はどんどん先延ばしされているといってよいでしょう。

年金金額はいくらか

老後の生活を考えるうえで、年金がいくらもらえるかは気になるポイントです。年金金額を試算することは、退職の年齢や貯蓄のペースを考えるヒントになります。

年金金額は、物価と賃金の変動率やマクロ経済スライドによる調整によって決定されます。マクロ経済スライドとは、そのときの社会情勢(現役被保険者の減少や平均余命の伸び)に合わせて、世代間の不公平感がなくなるよう年金の給付水準を調整する仕組みです。

2023年4月から年金額が昨年度より0.4%引き下げられるというニュースに驚いた人もいるかもしれませんが、年金額は毎年見直され、経済や社会の状況を考慮した金額に設定されているのです。

2023年度の老齢基礎年金は月額6万4816円であり、年額では77万7792円です。これは20歳から60歳までの全期間(40年)に渡って国民年金保険料を支払った人がもらえる金額です。

老齢基礎年金は保険料を納めた期間、保険料を免除された期間、合算対象期間が合わせて10年以上あれば受給できるので、納付年数は人によって異なります。つまり受給できる年金額もさまざまということです。

また、老齢基礎年金の受給資格がある人が厚生年金保険に加入していた場合、老齢厚生年金保険が受給できます。つまり、国民年金保険料を10年以上支払い続けた人が、会社員や公務員として働き、1か月でも厚生年金保険の被保険者であった場合は、老齢基礎年金に老齢厚生年金が加算されるというわけです。

厚生年金保険料は収入額によって変わるため、収入が高いほど受給額は多くなります。厚生労働省による「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、老齢厚生年金の受給資格を持つ65歳以上男性の年金受給額の平均は月額16万9,006円でした。


一方で65歳以上の女性は月額10万9,261円であり、男性よりも低いです。これは結婚や出産などで退職する人が多く、勤務期間が短いことが理由と考えられます。現時点で年金がいくらもらえるかは、誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」にも記載されています。支払漏れがないかなども確認しておくとよいでしょう。

老後にかかる税金の種類と計算方法

日頃、私たちはさまざまな種類の税金を支払っています。これらの支払いは老後も続いていくのでしょうか?食費や日用品費を節約しても、税金がいくらかかるのかを把握しておかなければいずれ困窮する事態になりかねません。ここでは、老後にかかる税金の種類と計算方法を解説します。

老後にかかる税金

老後生活においても、必ずかかる税金があります。以下で解説する所得税と住民税は、所得がある限り支払わなければなりません。

所得税

会社などから給料をもらうと所得税が差し引かれますが、公的年金も収入であり雑所得として扱われるため所得税が課せられます。一般に雑所得に含まれるのは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得などであり、総収入金額から必要経費を引いた金額を「課税所得金額」として課税します。

年金収入の場合は、年金の総収入額から公的年金等控除額を差し引いた金額が「公的年金等に係る雑所得の金額」となります。公的年金等控除額は、年金以外の所得額や年齢、受け取る年金額によって異なりますが、現役世代の控除よりも割合は大きくなっています。

ここからさらに、配偶者控除、扶養控除、寡婦控除など世帯によって適用される制度に基づいた金額が控除されます。国民健康保険料や後期高齢者医療保険料、介護保険料など社会保険料の支払い分も差し引きます。

このようにして残った金額が「課税所得金額」です。これに 5.105%( 所得税5% × 復興特別所得税1.021% )を乗じると、公的年金にかかる所得税の金額が算出できます。

なお、公的年金の所得税は源泉徴収されるので、支払の手続きは必要ありません。ただし、源泉徴収される金額は、前年度の所得状況に基づいた仮の金額であるため、本来の金額と異なる場合は、確定申告をして精算をしなければなりません。

また、障害年金、遺族年金は非課税所得のため所得には含まれず、所得税もかかりません。

住民税

住民税の税率は一律で10%です。所得税の計算方法と同様に、年金の総収入額から公的年金等控除額やその他の控除を差し引いた金額が課税所得金額になります。これに10%を乗じた金額が住民税の総支払額です。

住民税には非課税制度があります。年金受給者は住民税が非課税になる人が少なくありません。非課税になるための収入限度額は、住んでいる地域によって異なるため、自分の住む地域がどの級地区分(住んでいる土地の物価や生活水準に基づき市町村ごとに区分したもの)に属するのか確認しましょう。

65歳以上で年金のみで暮らす夫婦二人世帯の場合、主たる生計者の年金収入が、一級地(大都市など)では211万円以下、2級地(中核都市など)では203万円以下、3級地(それ以外)では193万円以下であれば、住民税が非課税になります。

このとき、配偶者の年金収入も1級地で155万円以下、2級地で152万円以下、3級地で148万円以下である必要があります。

勤労世帯の場合、住民税が非課税になるのは年収が100万円以下でなければいけませんが、年金受給者世帯の所得要件は緩いということがわかります。国民年金の老齢基礎年金だけを受給している人は、所得税も住民税もかかりません。

税金以外に社会保険料の支払いも必要

老後の生活では、税金だけでなく社会保険料も支払わなければなりません。このため、社会保険料の仕組みを理解する事は、ライフプランを立てる為に不可欠です。

社会保険料

会社などから給与をもらっていると、会社が社会保険料を天引きしてくれます。そのため、自分が加入している制度について詳しく知る機会がなかったという人も少なくないでしょう。老後生活においては、どのような保険料を支払う必要があるのでしょうか。

国民健康保険、後期高齢者医療保険

わが国では「国民皆保険制度」としているため、公的医療保険に入らないという選択肢はありません。企業で働いている人の場合、多くが健康保険に加入していますが、企業を退職した後も公的医療保険に加入する必要があります。

75歳未満の人は「国民健康保険」、75歳以上の人は「後期高齢者医療保険」に加入します。ただし、退職後にもとの会社の健康保険組合に任意継続被保険者として加入したり、家族の扶養として健康保険に加入する人もいます。

国民健康保険料には扶養という概念がないため、世帯主が世帯人数分の保険料を支払います。年18万円以上の年金を受給している場合は、年金から天引きされるため、支払い手続きなどは必要ありません。

国民健康保険の保険料率は自治体によって異なります。所得割(前年中の所得に応じた計算)、均等割(世帯の人数に応じた計算)、平等割(1世帯あたりの金額)などの賦課基準から保険料を算出しますが、算出方法も自治体によってさまざまであり、地域によって格差があります。

例えば、東京都江東区では以下のように国民健康保険料を算出します。

【出典】国民健康保険料の計算方法・試算シート、江東区ホームページ

前年中の総所得金額等から基礎控除額(合計所得金額が2,400万円以下の場合は43万円)を控除した金額が国民健康保険における年間所得額(賦課基準額)になります。

以上を踏まえ、65歳の年金収入が200万円の人の国民健康保険料がいくらになるか計算してみます。まず、「200万円-110万円(公的年金等控除)=90万円」となり、住民税基礎控除43万円を引いた残り47万円が賦課基準額です。

医療分:21,050円(減免制度のため5割減)+(430,000円×7.16%=約30,800円)→約51,800円

支援分:6,600円(減免制度のため5割減)+(430,000円×2.28%=約9,800円)→約16,400円

介護分:なし

合計→68,200円

以上から、国民健康保険の年間支払額は約6万8200円であり、月あたり約5,600円であることがわかります。

同様に、後期高齢者医療保険料についても、各都道府県の広域連合によって計算方法が異なります。自分が住んでいる地域の算出方法を確認しましょう。

介護保険

介護保険は、65歳以降に要介護認定または要支援認定を受けたときや、65歳未満で特定疾病にかかったときなどに介護サービスが利用できる制度です。

介護保険料は40歳の誕生日の前日から納付が開始されます。64歳までは健康保険の一部として納めますが、65歳以降は健康保険から切り離され、介護保険料の名目で納めます。つまり介護保険料の支払期間は生涯続くということです。介護保険料も年18万円以上の年金を受給している場合は年金から天引きされるため、支払い手続きなどは必要ありません。

介護保険料の金額は、住んでいる地域によって異なります。介護サービスが充実していたり、要介護の利用者が多かったりすると、保険料も上がる傾向があります。厚生労働省によると、第8期(令和3年度~令和5年度)の介護保険料の全国平均は6,014円(月額)であり、制度開始時の金額から約2倍に増額されています。年々介護保険料の負担は増していくと考えてよいでしょう。

老後の税金を減らす方法

老後の税金を減らすためには、どのような方法があるのでしょうか。ここでは、年金受給者でも使える節税方法を紹介します。

確定拠出年金(iDeCo)

確定拠出年金は、加入者ごとに拠出された掛金を加入者自らが運用し、その運用結果に基づいて給付額が決定される年金制度です。老後の資産形成のための手段として注目されていますが、掛金が全額所得控除となることから、節税効果も期待できます。

確定拠出年金で積み立てた運用資金は、原則60歳から75歳までの希望する時期に、老齢給付金として年金や一時金で受け取ることができます。60歳以降も加入することができるため、掛金分を所得控除することで、老後生活における所得税と住民税の負担を軽減することができるかもしれません。

ただし、確定拠出年金では加入者自身が資産を運用するため、将来支給される年金額はそれぞれの運用次第で違ってきます。金融や投資に関する知識があり、投資リスクを負える人でなければ難しいかもしれません。

ふるさと納税

ふるさと納税は、思い入れのある地域や、応援したい自治体に寄付ができる制度です。1年間の寄付合計額から2000円を差し引いた金額を所得控除することができるため、節税効果が期待できます。所得控除できる金額は収入や家族構成、その他の控除の状況によって異なるため、よく確認しましょう。

ふるさと納税の魅力は、地域の名産品などが返礼品としてもらえる点です。返礼品をもらいながら楽しく節税できるためおすすめです。

扶養に入る

親族の扶養に入ることで支払う税金を大きく減らすことができます。まず、被扶養家族は住民税を支払う必要がありません。70歳以上の親族を扶養すると控除額が増える制度もあるため、扶養者にとってもメリットがあります。

老後の経済状況をしっかりイメージしておきましょう

この記事のまとめ

  • 年金金額も受給開始年齢も人によって異なる
  • 老後にかかる税金は、所得税と住民税
  • 医療保険料の支払い状況を把握しておく
  • 老後の税金対策には、確定拠出年金、ふるさと納税、親族の扶養に入るなどの方法がある

年金や税金、保険の制度は複雑で、きちんと理解しないまま日々を過ごしている人が多いようです。しかし、自分に関係する制度や法律を学ぶだけでも、生活に対する不安や心配はなくなるかもしれません。特に、老後の生活においては自身や家族の状況が不透明な部分が多く、どのような生活ができるのか想像しづらいものです。

今からできる限りの準備をしておくためにも、まずは老後にかかるお金を整理し、経済状況をイメージすることからはじめてみましょう。 

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