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特集

【武藤頼胡さん特別インタビュー02】葬儀は死後ではなく、人生の延長線上にある

【武藤頼胡さん特別インタビュー02】葬儀は死後ではなく、人生の延長線上にある

終活カウンセラーの生みの親として、全国各地で終活の考えた方を普及する武藤頼胡さん。今回は、現代人における終活やお別れのあり方について語ってくれました。

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残された人も「いいお別れ」と感じること

—武藤さんのもとには、毎年多くの方が終活相談にいらっしゃいます。その中で印象的だった相談はありますか?

おひとりさま向けの勉強会の講師を務めているとき、高齢の女性から夫の生前整理をしたいという相談がありました。すぐに生前整理の業者を紹介しようとしたのですが、話を聞いていくうちに、問題の本質は生前整理ではないとわかりました。というのも、女性は夫へのグリーフ(近親者との離別による悲嘆)が残っていたため、遺品を捨てられずにいたのです。
故人との思い出は大切であり、残し続けていかなければなりません。しかし、残された家族も、残りの人生をどう生きたいのかを考える必要があります。そのことを伝えると、女性の声は少しだけ明るくなったような気がしました。後日、その相談者から電話がありました。彼女は、毎日ふとんを干して、ごはんを作る生活がしたいと話してくれました。最終的にはご主人の遺品整理も進められたそうです。

—若い世代からの相談もあるのでしょうか?

30代の女性の相談者もいました。彼女からはエンディングノートを書くサポートがほしいという相談でした。なぜ30代の若さでエンディングノートを書きたいのか、話を聞いていくうちに、彼女が10年ほど前にお母さまを亡くしたことを知りました。

お母さまと仲をたずねると、「一心同体です」と答えてくれました。私自身、母を亡くして18年が経ちますが、いまだに忘れることができずにいます。そのことを話すと、共感してくれたようで、「みんな、時が解決してくれると言うけど、そんなはずない」と話してくれました。結局、彼女もグリーフを抱えていたということです。

—みなさん、グリーフを抱えていたということですね。

残された人は、今後の人生でやりたいことに向き合うためのパートナーや時間、場所をしっかりと作らなければ、グリーフを抱えてしまうかもしれません。先ほどの30代の女性の相談者の最初の一言が印象的で、今でも覚えています。

「私、明日死んでも全然問題ないです」

死にたいというわけではなく、生きている意味を感じていなかったのです。私は、お母さまを亡くしたことを乗り越える必要はないと思います。しかし、亡くなったということを理解することができなければ、そのような考えになってしまいます。頭ではわかっているけど、心が受け入れていないのです。そのとき、故人だけではなく、残された人も「いいお別れ」と感じることが大切だと相談者から教えていただきました。

日々の積み重ねがいい人生の第一歩

—大切な人を亡くしたとき、それを受け止めるためにできることはあるでしょうか?

18年前ですが、病気を患っていた母から「地元へ帰りたい」と言われ、入院先を東京から地元へ移したことがあります。残念ながら、転院の1週間後に母は亡くなりました。あんなに元気だったのに。こんなに早く亡くなるなんて、想像もしていませんでした。

東京に住んでいた私は、とりあえず電話帳を開き、片っ端から母を受け入れてくれる病院や葬儀場を探しました。その後も通夜や葬儀の準備でいっぱいで、正直、泣く時間もありませんでした。その経験から、私は準備こそが大切な人との別れに向き合う、最初の一歩だと考えました。

—大切な人との別れにおいて、どのような準備が必要ですか?

生前から、死後のことを家族と話し合うことが大切だと思います。その話し合いが、みんなが納得する、より良い葬儀へとつなげてくれるはずです。話し合いがなく、終活も進めていなければ、葬儀社とのたった1時間の打ち合わせで、葬儀のすべてが決まってしまいます。それでは、より良い葬儀につながりづらいと思います。葬儀は死後ではなく、人生の延長線上にあります。自分で考えるだけではなく、家族に相談することも忘れないでください。言わなければ伝わりませんからね。

—今後、葬儀はどのように変化していくと思いますか?

葬儀は形として目に見えますが、その意義は目に見えません。しかし、目に見えないものを考えなければ、葬儀の形骸化は進み、規模も縮小していくでしょう。現代の、意味のないものを省く、効率的な世の中において、葬儀を意義のあるものへと変化させていくことは大切なことです。そのためにも、私たちは改めて葬儀を理解していく必要があると思います。

—『ひとたび』を読んでくれた方にメッセージをお願いします。

終活には大変なイメージがあると思います。でも、何をしたっていいのです。例えば、私の終活は「ありがとう」と「ごめんね」は持ち越さないことです。もちろんエンディングノートや遺言書を書くことも大切な終活ですが、日々の積み重ねが、いい人生の第一歩になると思います。

プロフィール

武藤 頼胡(むとう・よりこ)
1971年生まれ、静岡県三島市出身。(一社)終活カウンセラー協会代表理事、リンテアライン株式会社代表取締役社長、(一財)葬務事務振興会理事。終活カウンセラーの生みの親。『終活』という考えを普及するべく、全国の公民館や地域包括支援センターでのセミナー講師を担う。テレビ、新聞、雑誌などメディアへの掲載多数。自身も終活カウンセラーとして、毎月街頭でのアンケート活動を実施する。「全てのものとコミュニケーションの起きる場に」をモットーに同じ立場、同じ歩調を大切に日本の高齢者を元気にする活動に励む。

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