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特集

【宿原寿美子さん特別インタビュー】 大切な想いに寄り添った葬儀の実現

【宿原寿美子さん特別インタビュー】 大切な想いに寄り添った葬儀の実現

葬送業界で幅広く活動する宿原寿美子さんは、死化粧師や葬祭ディレクターとして様々な葬儀に関わりながら、学生や企業向けに処置やメイクの指導も行っています。今回は、宿原さんに死化粧師の仕事内容、エンバーミングとエンゼルケアの意義、さらに葬儀社に求められる資質について語っていただきました。

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故人と家族が最後に向き合うための時間

宿原さん

——死化粧師のお仕事について、教えてください。

死化粧師は、単にメイクをして、ご遺体をきれいにするだけではありません。納棺師の仕事と同様、ご遺体の処置や着せ替え、納棺などのすべてを行います。これらの仕事は、多くの面で創造性が求められる仕事だと考えています。ただし、死化粧師においては、故人と家族が最後に向き合うための時間を支えること、それが大切な役割だと考えています。

——死化粧師と納棺師は、どのような点で異なりますか?

私にとって「死化粧師」という役割は、葬儀全体の一部にすぎません。葬儀の満足度とは、さまざまな要素が一つにまとまり、最終的に「いい葬儀だった」と思えるかどうかにかかっていると思います。

納棺師の仕事も非常に美しく尊いものですが、ご遺族との間に距離が生まれることがあります。たとえば「お母さんに口紅を塗ってあげたい」というご遺族の想いがあっても、納棺師の美しい作法によって、その気持ちが入りづらいと感じることもあるかもしれません。

大切な故人を初対面の人に任せることへの不安は当然のことと思います。そのため、ご遺族との信頼関係を築くことがとても大切だと実感しています。納棺師の厳かなイメージが強くなりすぎて、ご遺族が関わりにくくなっている現状を変えていきたいと考えています。

大切な想いに寄り添った葬儀の実現

宿原さん

——業界における、エンバーミングの役割を教えてください。

エンバーミングは、ご遺体の保全に重点を置いています。待機期間が長くなり、ご遺体の状態が著しく悪くなりそうな場合は、ご遺体の状態を美しく保つためにも大切な役割を果たします。私自身、母が亡くなった際にエンバーミングを行っています。

——お母さまのご逝去後、エンバーミングを行う判断はどのようにされたのでしょうか?

母が亡くなった後、病院で必要な処置を施していただき、自宅へ連れて帰りました。そのとき、母の顔色が変色し始めていることに気づきました。葬儀まで10日ほど空いていたのですが、その期間、ドライアイスだけで遺体の状態を保つのは難しいと判断しました。すぐに家族と話し合い、エンバーミングをお願いすることにしました。

——実際にエンバーミングを行って、いかがでしたか?

おかげさまで葬儀までの間、家族は母の顔を見ながら、最後の時間を過ごすことができました。あのとき、エンバーミングの判断が遅れていたら、母の顔は見られる状態ではなかったと思います。故人とご遺族の大切な時間を守るためにも、エンバーミングは必要な手段だと感じた瞬間でした。

——エンバーミングを行うかの判断は、葬儀社に求められる資質でもありますね。

葬儀社には、故人のご遺体の状態を見極めた上で、的確な判断が求められます。さらにエンバーミングには費用がかかるため、ご家族に対して、ていねいな説明も必要です。しかし、現実には、その重要性を適切に伝えられない葬儀社も少なくありません。

——きちんとした説明を行った上で、お客さまのニーズに応えることも重要でしょうか?

葬儀社が自社の方針を優先させるあまり、お客様のニーズを十分に把握していないと、ご遺族の意向が反映されず、大切な要望を取りこぼすことになりかねません。葬儀業界においても、お客さまの想いや販売心理の基礎を理解することは、より良い葬儀を実現するために欠かせない要素です。

それぞれの役割を理解した葬儀

宿原さん

私は、特にメイクに力を入れる必要はないと考えています。というのも、亡くなられた後に美しく整えても、時間が経つにつれて遺体の状態が変化し、再度ケアが必要になる場合があるためです。こうしたケアが、肌への負担になることもあります。そのため、講習会では死後の変化についても、写真を使ってていねいに説明するよう心がけています。

また、医療・介護分野の方々によるエンゼルケアに対し、ご遺族からの感謝の言葉が寄せられることも少なくありません。その感謝の言葉は、葬儀社スタッフや納棺師のもとに届くことが多いため、彼らから医療・介護分野の方々にもきちんとフィードバックが行われるようにしています。

——それぞれの役割を、業界全体で共有することが必要ですね。

納棺師や死化粧師、エンバーマーなど、それぞれの役割を理解して、お互いに協力してやっていくのが一番だと思います。また、少なくとも、葬儀を提供する側の選択肢として、エンバーミングやエンゼルケアのあり方を引き出しに入れておく必要があると思います。

プロフィール

宿原 寿美子(じゅくはら・すみこ)
株式会社キュア・エッセンス代表取締役
死化粧師。厚生労働省認定1級葬祭ディレクター。大手アパレルや化粧品の流通業界で、商品構成や管理、店舗指導に従事。その後、創業100年を超える家業の葬祭業を意識し、日本ヒューマンセレモニー専門学校へ1年間の社会人入学。卒業後、大手互助会などで葬祭業全般に携わり、日本ヒューマンセレモニー専門学校フューネラルディレクターコース・エンバーミングコースの講師となる。現在、学生や企業にて処置やメイクを指導する傍ら、葬祭の現場にて自ら処置やメイク等も実践中。

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