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お金・お家のこと

土地の相続税が8割安くなる特例とは?相続税負担を軽減する小規模宅地の特例

土地の相続税が8割安くなる特例とは?相続税負担を軽減する小規模宅地の特例

家族が住む自宅や商売をしている店舗などを相続によって配偶者や子どもが承継する場合、相続税負担が重すぎると、住み続けることや事業を継続することが困難になってしまいます。そこで、相続人の相続税負担を軽減するために、これらの土地について「小規模宅地等の特例」を適用することができます。今回はこの特例について解説します。

監修者 SUPERVISOR
公認会計士/税理士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士 岸田 康雄

平成28年度経済産業省中小企業省「事業継承ガイドライン」委員、令和2年度日本公認会計士協会中小企業施作研究調査会「事業継承支援専門部会」委員、東京中小企業診断士委員会「事業継承支援研究会」代表幹事。
一橋大学大学院修了。中央青山監査法人にて会計監査及び財務デュー・デリジェンス業務に従事。その後、三菱UFJ銀行ウェルネスマネジメント営業部、みずほ証券投資銀行部M&Aアドバイザリーグループ、メリルリンチ日本証券プリンパル・インベストメント部不動産投資グループなどに在籍し、中小企業の事業継承から上場企業のM&Aまで、100件を超える事業継承とM&A業務を遂行した。現在は、相続税申告と相続・事業継承コンサルタント業務を提供している。

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小規模宅地等の特例に関する動画は、こちらをクリックしてご視聴ください

小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例

小規模宅地等の特例、すなわち小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例とは、被相続人や親族が住んでいたり、事業に使っていたりしていた土地の評価額から、一定の限度面積まで、評価額に一定割合を乗じた金額を減額する制度です。 この特例が適用される土地は、特定居住用宅地、特定事業用宅地、特定同族会社事業用宅地、貸付事業用宅地の4つに区分されます。
ちなみに、小規模宅地等の「等」とは、借地権を意味します。すなわち、土地と借地権のいずれであっても、特例を適用できます。

特定居住用宅地

特定居住用宅地とは、相続開始前に、被相続人や親族が住んでいた土地で、被相続人の親族が取得したものをいいます。
特定居住用宅地として特例を適用するための要件ですが、配偶者が取得した場合には、何も要件はありません。必ず適用できます。
しかし、被相続人と同居していた親族が取得した場合には、相続税の申告期限までその家屋に住み続け、土地を所有し続けることが要件となります。
また、配偶者や同居していた親族がいないケースであれば、家を持っていない親族が取得した場合にのみ、この特例を適用できます。このような親族のことを「家なき子」と呼ばれています。

「家なき子」が土地を取得して特例を適用するための要件

  • 過去3年間に自分や配偶者または3親等内の親族が所有していた家屋に住んだことがないこと
  • 相続開始時に自分が住んでいた家屋を過去に自分で所有していたことがないこと
  • 相続税の申告期限までその土地を所有し続けること

特定居住用宅地の減額の適用対象となる限度面積は330㎡、減額割合は80%です。

小規模宅地等の特例に関する動画は、こちらをクリックしてご視聴ください

特定事業用宅地等

特定事業用宅地とは、相続開始前に、被相続人や親族が事業を行うために使用していた土地で、被相続人の親族が取得したものをいいます。事業を行うと言っても、土地を賃貸する事業の場合は、貸付事業用宅地という別区分の特例となるため、特定事業用宅地という区分には該当しません。また、相続開始前3年以内に事業が開始された場合も、特定事業用宅地には該当せず、特例は適用できないものとされています。

特定事業用宅地として特例の適用するための要件

  • 相続税の申告期限まで土地を所有し続け事業を継続していること

特定事業用宅地の減額の適用対象となる限度面積は400㎡、減額割合は80%です。

特定同族会社事業用宅地等

特定同族会社事業用宅地とは、相続開始前に親族が支配している法人が事業を行うために使用していた土地で、被相続人の親族が取得したものをいいます。
ここで親族が支配している法人とは、被相続人と親族が発行済株式総数または出資総額の50%超を所有している法人をいいます。

特定同族会社事業用宅地として特例の適用するための要件

  • 土地を取得した親族が相続税の申告期限まで土地を所有し続け事業を継続していること
  • また その法人の役員として働いていること

特定同族会社事業用宅地等の減額の適用対象となる限度面積は400㎡、減額割合は80%です。

貸付事業用宅地等

貸付事業用宅地とは、相続開始前に被相続人やその親族が不動産賃貸事業するために使用していた土地で、被相続人の親族が取得したものをいいます。相続開始前3年以内に貸付事業が開始された場合は、貸付事業用宅地には該当せず、特例は適用できないものとされています。

貸付事業用宅地に特例を適用するための要件

  • 相続税の申告期限まで土地を保有し続け不動産賃貸事業を継続すること

貸付事業用宅地の減額の適用対象となる限度面積は200㎡、減額割合は50%です。

その他共通の適用要件

小規模宅地等の特例を適用するには、相続税申告書を提出することが要件となります。特例を適用した結果、課税価格が基礎控除額を下回ることとなり、相続税がゼロとなる場合でも、相続税の申告書を提出しなければいけません。
また、この特例の適用を受けるためには、相続税の申告期限までに土地の遺産分割が確定していなければなりません。遺産分割を確定できない場合、申告期限後3年以内に遺産分割が行われたならば、適用を受けることができます。

なお、適用対象となる土地が複数ある場合、4つの区分のうちどの特例の適用を選択するべきか、問題となることがあります。選択のやり方によって、課税価格が減額される大きさが異なるからです。当然ですが、大きく減額されるほうが税負担が軽くなるので有利です。

適用可能な土地が、特定居住用宅地と特定事業用宅地である場合、限度面積は特定居住用宅地が330㎡まで、特定事業用宅地が400㎡までとなりますが、2つの区分を完全併用できます。すなわち、限度面積は、合計した730㎡まで拡大します。
これに対して、いずれかに貸付事業用宅地を選択する場合には一定の調整計算が必要となり、完全併用することはできません。

それぞれの限度面積と減額割合について正確に覚えておきましょう

この記事のまとめ

  • 小規模宅地等の特例は、相続人の相続税負担を軽減する制度
  • 特例を適用すると、被相続人や親族が住んでいたり事業に使っていたりする土地の評価額から一定割合を減額できる
  • 特例は特定居住用宅地・特定事業用宅地・特定同族会社事業用宅地・貸付事業用宅地の4つの区分に分かれて適用される
  • 各区分ごとに減額の適用対象面積と割合が定められている
  • 特例を適用するには相続税申告書の提出と土地の遺産分割の確定が必要
  • 複数の特例が適用可能な場合、適用区分の選択によって減額の大きさが異なる
  • 特定居住用宅地と特定事業用宅地を併用することで限度面積が拡大するが、貸付事業用宅地を選択する場合は調整計算が必要

小規模宅地等の特例に関する動画は、こちらをクリックしてご視聴ください

今回は小規模宅地等の特例について解説しました。
特定居住用宅地、特定事業用宅地、特定同族会社事業用宅地、貸付事業用宅地、それぞれの限度
面積と減額割合について、正確に覚えておきましょう。

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