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【ひとたび編集部が選ぶエンディング映画10選 10】ダラス・バイヤーズクラブ〜生にしがみつくということ〜

【ひとたび編集部が選ぶエンディング映画10選 10】ダラス・バイヤーズクラブ〜生にしがみつくということ〜

もし急に”余命30日”と伝えられたら、あなたはどのような選択をしますか?ひとたびの「編集部が選ぶエンディング映画10選」では、エンディングを題材とした映画を紹介しています。最終回は、エイズで余命30日と伝えられた女好きで差別主義なカウボーイが、必死で生き延びようとする中で自身や周りの考え方を変えていく映画です。主演2人の圧倒的パフォーマンスが、映画史に衝撃を与えた名作です。

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第9回では「リメンバー・ミー」を紹介しました。こちらもぜひ合わせてご一読ください。

最終回となる第10回は2013年公開の「ダラス・バイヤーズクラブ」です。こちらの作品はHulu、U-NEXTで配信されていますので、気になった方はぜひご鑑賞ください。(本記事公開時点)

本作は第86回アカデミー賞で6部門にノミネートされ、主演男優賞、助演男優賞、メイク・ヘアスタイリング賞の3部門を受賞しています。特に圧巻なのは、主演男優賞を受賞したマシュー・マコノヒー。元々筋肉隆々のたくましい俳優でしたが、エイズ感染者を演じるために21kg減量するという役者魂を見せてくれました。作品の開始早々から痩せこけた姿が衝撃的でしたが、話が進むに連れてさらに痩せていき、そのアプローチには感服させられるでしょう。

助演男優賞を受賞したジャレッド・レトも同様に、エイズ感染者のトランスジェンダーを演じるにあたり14kgの減量をしました。元々はイケメン俳優として名が知れていただけに、その姿も衝撃的でした。しかし、それ以上に話し方や身体の使い方、視線の使い方などがトランスジェンダーそのものと高く評価され、公開当時からアカデミー賞間違いなしと批評家から絶対的な評価を受けており、その年の賞レースを独占しました。圧倒的な演技で説得力あるメッセージを打ち出した名作を今回は紹介したいと思います。

あらすじ

※本記事にはネタバレ内容を含みます。あらかじめご了承の上、お読みください。

1985年、アメリカのダラスで電気技師をしているカウボーイのロンは仕事中のミスで入院し、そこで「エイズによって余命30日である」と宣告されます。ロンはエイズをゲイだけがかかる病気だと思い込んでいたため、女好きな自分がそのような病気にかかることはないと激怒しました。しかしエイズについて調べるうちに、誰にでも起こりうる病気であることを理解します。

アメリカではエイズの治療薬が少ないため、ロンは海外で薬を探し始めます。そしてとある新薬を飲んで自らの体調が改善されたことを機に、未承認薬「ペプチドT」を密輸するようになります。さらにロンはその未承認薬をエイズ患者に販売するビジネスを思いつき、エイズ患者でトランスジェンダーのレイヨンとともに「ダラス・バイヤーズクラブ」を設立。元々は金儲けのことしか考えていませんでしたが、未承認薬のおかげで多くの人が救われていく姿を見て、ロンは人々のために動こうと気持ちが変わっていきます。

しかし政府は、ダラス・バイヤーズクラブの違法行為を見逃さず薬をすべて没収していきます。さらに経営難に堕ちていく中で、頼りのレイヨンが亡くなってしまいます。その出来事がロンの考え方に変化を与え、ロンは私財を投げ売って貧しい患者にも薬を無償で提供するようになりました。そのようなロンの姿に共感する人は多く、薬によって症状が改善されたゲイカップルが無償で事務所を提供するなど、ロンを支えてくれる人が増えていったのです。

ロンは製薬会社とFDA(アメリカ食品医薬品局)を相手取り、未承認薬に対する裁判を起こすも棄却されてしまいます。しかし、FDAが薬の国内使用を承認したことで多くのエイズ患者がペプチドTを使用可能になり、ロンも再びカウボーイとして復帰するまでに回復できたのです。

余命30日の男ロンは宣告を受けてから7年もの間、力強く生きたのでした。

みどころ

命にしがみつく行動力

ロンは大の女好きでカウボーイ。冒頭彼は女性を感情のままに抱いたり、ロデオで荒牛に必死にしがみついたりしています。その後のバーでの言動で、ロンは差別主義者で口が悪いことも分かります。開始5分でロンという人間が本能のままに生きているというのが見てとれるでしょう。

その後、エイズで余命30日と診断されますが、落ち込むことなく「どうにか生きるすべはないか」と自分なりに勉強をし、海外の未承認薬が効くことを聞きつけます。牧師やパイロット、ビジネスマンなどの格好をしながらメキシコや日本で密輸を始めて、一大ビジネスを築き上げます。

結果として政府から敵対視されるものの、「生きたい」という強い気持ちを持って奮闘するロンの行動力にはハッとさせられます。本能のままに生きようとした結果、どうしたら長く生きられるかを自分なりに調べ、専門医以上の知識を持ち、自分の体で効果を検証するなど、担当医でさえその知識に驚愕させられてしまうのです。

カウボーイが馬から振り落とされないように必死でしがみつくように、ロンも必死に命にしがみついているように感じられます。邪魔が入っても新たな道を探し、とにかく生きようとするその姿勢に誰もが胸を熱くするでしょう。

今の日本でも同じことが言えると思います。物価や税金が高くなり、もらえる年金の額が減って老後に不安を抱える人も多いのではないでしょうか。しかし、ただ待つだけでは何も改善されません。これからは政府に何かを期待するのではなく、起きている事実に対し知識をつけて自ら対処できる力を養うことが必要となっていきます。実際にロンはそのようにして道を開拓していきました。我々の今後の生活について大切なことを教えてくれる教訓的な作品でもあるのです。

立場が人を変える

ロンは、最初は金儲けのためにダラス・バイヤーズクラブを設立します。お金のない若者が助けを乞いにきても、ロンは罵倒するだけで相手にしませんでした。しかし、レイヨンを筆頭に人からの愛を感じることで、徐々にロンは金儲けのためではなく人のために突き進むようになりました。クラブの設立者として、多くの人に支持されたことで無意識に考え方が変化したのでしょう。

最初はただ自分が生きたかっただけのロンですが、次第に「苦しんでいる人たち全員が長生きできるように」と政府を相手取って裁判まで起こします。そういった点から、人は立場が変わると考えも変わるのだと実感させられました。

良い意味でも悪い意味でも、立場は人を簡単に変えてしまいます。ただ、ロンはその立場に甘えることなく自分の信じるまま突き進んだ結果、人の信頼を得ていくのです。このような生き様は学ぶべきものがあります。

ダラス・バイヤーズクラブは、未承認薬を会員に売ることで経営が成り立っています。しかし、ロンは未承認薬を承認するようにFDAにしつこく訴えるのです。もし、その未承認薬が承認されてしまえばダラス・バイヤーズクラブは潰れてしまうのに、彼はFDAに反抗し続けました。自分の利益を捨ててまで、多くの人の命を優先したのです。

魂を揺さぶる演技

先述したように、主役の2人はオスカーを受賞しました。それだけインパクトある演技だったのは間違いありません。元々演技力に定評のある2人でしたが、この作品を機に名実ともにハリウッドトップクラスの地位を築きました。

この作品ではデ・ニーロ・アプローチとも呼ばれるほどの肉体変化を見せ、役者魂を世界に見せつけました。デ・ニーロアプローチとは、ハリウッドの大スターであるロバート・デ・ニーロが行った、役に合わせて体重を大きく増減させるなどの徹底した役作りのことです。(デ・ニーロは1980年の「レイジング・ブル」で、27kg体重を増やし、アカデミー主演男優賞を獲得)主演2人は見た目の役作りにも全力を注ぎ、全身全霊で役を演じきりました。

ロンの生き様を学ぶために見るのもおすすめですが、役者人生を賭けて熱演しているキャストを見るだけでも多くのことを感じ取れるのではないでしょうか。

まとめ

主演2人の体当たりの役作りが先行して話題となった映画ですが、ロンの生き方や考え方を見ることによって、これからの自分はどう進むべきかが自然と見えてくる気がします。

また、ロデオカウボーイとしての生き様がエイズでも長く生きようとする生き様の伏線となっており、より映画に深い説得力をもたらすなど脚本自体の完成度も非常に高いです。

「ロンのように必死に生きてみたら、何か今後の視え方が変わるかもしれない」「失いたくない物には必死にしがみつく」「周りがダサいと思っても自分が本気なら、必死でしがみついて周りを見返す」そのような人生観に変えてくれる映画かもしれません。

作品情報

公開年

2013年

監督

ジャン=マルク・ヴァレ

キャスト

マシュー・マコノヒー
ジャレッド・レト
ジェニファー・ガーナー
スティーブ・ザーン
ダラス・ロバーツ

ダラス・バイヤーズクラブ
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