閉じる メニュー
特集

【市川望美さん特別インタビュー 】死をもっとポップに、終活を再定義する

【市川望美さん特別インタビュー 】死をもっとポップに、終活を再定義する

2026年4月11日からの6日間にわたり、渋谷ヒカリエにて「Deathフェス2026」が開催されました。誰もが直面するはずの「死」を、もっと自分ごととして語り合える場をつくろう——そんな思いから生まれた「Deathフェス」。今回は、一般社団法人デスフェス共同代表の市川望美さんに、3回目を迎えた本イベントの様子や前回開催からの変化についてお話を伺いました。

対話が生む新たな視点

——「Deathフェス2026」は大盛況ですね。

連日、にぎわっていますね。週末は、Deathフェスそのものを目的にミドル世代を中心に若い世代の来場者も多くみられましたが、週明け以降はテレビ取材や新聞の一面掲載の影響により、シニア層の来場者も増えています。遺影の撮影やエンディングドレスを購入される方もいらっしゃいました。

また、葬儀業界をはじめとする関係者の来場も増えています。名刺交換を通じて、今後の連携の可能性について意見を交わす場面も多く、来場者層の広がりがうかがえます。

——トークセッションやワークショップなど、参加者がメモを取る姿が印象的でした。

ワークショップは少人数制で実施されています。そのため、明確な目的を持って参加される方が多く、メモを取るなど、じっくり体験したいという方が多い印象です。一方、トークセッションは、より気軽に話を聞くことができる場となっています。

対話そのものを楽しむ方もいれば、幅広い情報をバランスよく吸収される方など、来場者の過ごし方はさまざまですね。

Deathフェス内トークセッション風景

——今回の開催では、新しい取り組みはありますか?

今年は、会場である渋谷ヒカリエの8階に入る事業者との連携企画も多く実現しました。Creative Lounge MOVは、昨年同様、会場提供でのご協力に加え、Deathフェスを楽しみにしてくださっている会員さんを紹介していただき、「Death-1」の審査員をお引き受けいただくことができました。Bunkamura Gallery 8/との連携企画「祈りの輪郭」では、8名のアーティストが“祈り”に着目した作品を展示し、Deathフェスでは祈りの対象物をつくるワークショップを開催していただきました。

また、トークセッション「食べる禅―行鉢(GyoHatsu)―」では、富山・最勝寺の住職より、「食べる禅」といわれる行鉢の作法や精神について学ぶ機会を、d47食堂との連携により開催しました。さらに、登壇者やデスフェスメンバーの「推しDeath本」を紹介する企画展示やトークイベントは、渋谷〇〇書店の協力のもとに開催しました。

——連携企画は、Deathフェス運営から持ちかけたものですか?

両方あります。Bunkamura Gallery 8/は、昨年も「Deathフェス」にちなんだ企画展を自主的に開催していただいていたようですが、終了後に「来年はぜひ一緒に取り組みたい」とお声がけをいただき、連携が実現しました。d47食堂さんには、私たちではやりきれない「食」で何かご一緒いただけないかとご相談させていただきましたし、渋谷〇〇書店さんにもこちらから企画を持ち掛けました。こうした動きにより、開催期間を通してフロア全体が「Deathフェス」を盛り上げてくださったのは、前回から大きく変わったところですね。

インタビューを受ける市川望美さん

——出展側からの反応はいかがでしょうか。

臓器移植の啓発活動を行う「ZOK1-11(ゾウキイレブン)」からは、昨年の「Deathフェス」をきっかけに臓器移植について知った来場者が今年も訪れ、「意思表示をしました」と伝えてくれたことが大きな喜びだったという声が寄せられています。

実際に、昨年以降、臓器移植の意思表示を行う方の割合も3割から4割を超えるなど、具体的な変化が見られているようです。継続して出展している団体や企業においては、こうした昨年からの手応えや変化を実感している様子がうかがえます。

また、葬送業界・エンディング周辺事業は、葬儀会社や問屋などを通してサービスや商品を提供する事業モデルが主流のため、直接顧客やユーザーとお話する機会は限られていますし、普段接している関心層は高齢者が多いのも特徴的な業界ですので、「直接」「若者を含む幅広い年代と」話せる機会をとても有意義だととらえてくださっています。日本尊厳死協会の担当者からは、会員の高齢化が進む中で、20代の若い世代と直接話すことができた点が非常に貴重な機会となった、との声も聞かれました。

——今回のイベントをどのように振り返りますか?

多くのメディアに取り上げていただき、社会的な注目の高まりを実感しています。韓国をはじめとする海外からの取材もあり、「死をポップに」という発想に関心を寄せていただきました。

また、今年は「五感でひらく『生と死』」というサブテーマのもと、嗅覚・聴覚を通じて体験する「AWAI」を開発したほか、僧侶とリモートで対話できる企画など、体験型のプログラムを多く実施しました。これらの企画は想像以上に好評で、これまで接点のなかった方々にも楽しんでいただけたと感じています。
そのほかにも、3年間の蓄積を通して、多様な参画者と「死というテーマをひらくこと」の意義を改めて認識するとともに、これまで十分に届いていなかった層へと広がる可能性も感じました。

——出展者にとっても、新たな気づきを得られる機会になっているのですね。

初日のセッションでは「マーケティング×死」をテーマに、AI時代における葬儀業界のあり方について議論が行われました。
本セッションでは、業界側だけでなく、利用者である市民も含めて、互いの固定観念を越えながら歩み寄っていく必要性が共有されていました。このように、来場者と直接意見を交わすことで新たな視点や気づきが生まれています。

持続可能性への転換

——次回以降の課題と考えていることはありますか?

初年度は42プログラム、昨年は72プログラム、そして今年は90プログラムと、回を重ねるごとに内容を拡充してきました。今年は、私たちで実現できる企画を最大限に盛り込んだ形となっており、これ以上の増加は難しい段階に来ていると感じています。

今後は量を増やすのではなく、内容を精査しながら、親子で参加できる企画や、世代を超えた関係性に焦点を当てたプログラム、さらには体験型の要素を取り入れることも必要だと考えています。

様々な展示品

——そのためには、何が必要だと考えていますか?

自分たちだけではなく、さまざまなパートナーと連携しながら可能性を広げていくことが重要だと思います。実際、今回は大学のファンドレイザーの方とともに、寄付講座や遺贈など、次世代へとつながる取り組みについて意見交換を行いました。

今後は、外部の方とどれだけ密度の高い取り組みを実現できるか、また事業として持続可能な形にしていけるかが課題ですね。

プロフィール

市川望美(いちかわ・のぞみ)
一般社団法人デスフェス共同代表
死をタブーにせず、人生や社会を問い直す文化共創プロジェクト「Deathフェス」を主催。2023年にプロジェクト始動、2024年に初開催。世代や立場を超えた対話と体験の場を創出。多様な死生観を分かち合い、新たな選択肢とつながりを育むプラットフォームを提供する。

SHARE この記事をSNSでシェアする