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特集

【井比宏育さん特別インタビュー】墓じまいは撤去ではなく新たな供養先の選択

【井比宏育さん特別インタビュー】墓じまいは撤去ではなく新たな供養先の選択

石材業界で30年以上にわたり施工現場に携わってきた井比宏育さんは、お墓の施工に明確な基準が整備されていない現状に課題を感じ、全国石材施工協会を設立しました。今回のインタビューでは、お墓の施工基準を整備することの重要性をはじめ、墓じまいにおける適切な廃材処理、安心してお墓を建てたり墓じまいを行ったりするための業者選びのポイントについて語っていただきました。

お墓の施工基準の明確化

——全国石材施工協会の活動内容と設立経緯を教えてください。

全国石材施工協会は、主にお墓の工事を手がける職人のための団体です。当協会は2015年に設立されました。当初は、関東中心の活動を考えていましたが、現在、全国的に展開しています。

私は、30年以上前に石材業界に入り、時代の変化とともに機械化が進み、施工方法が変化していく様子を見てきました。しかし、施工方法が変化する一方で、お墓の施工には、明確な基準が整備されていないことに気づきました。

会社前に建つ仁王像

——「明確な基準」がないとは、どういうことでしょうか?

お墓の施工は、建設業の中では「石工事業」にあたります。しかし、一般の住宅など、人が住む建物とは異なり、お墓には建築基準法が適用されません。そのため、お墓の施工は、石工職人の経験や感覚、個人の知識に頼って進められている部分がありました。

職人によって施工方法が異なるということは、地震に耐える強度にも差が出てくる可能性が出てきます。それは、エンドユーザーに不誠実な製品が届いている可能性にもつながります。そうした状況を見直すため、全国石材施工協会を立ち上げました。

——設立当初、業界ではどのように受け止められていましたか?

当初は冷ややかな反応もありました。しかし、大きな災害によって石造物が倒壊する光景を何度も目にしたことで、施工方法を見直す動きが広がっていきました。

地震の被災地で、お墓の修復作業を手掛けた際、そこにはいくつもの崩れたお墓がありました。崩れたお墓を見たご遺族の中に、安心して喜ぶ姿がありました。納骨室に安置されたご遺骨が無事だったためです。一方で骨壺が墓石に潰されてしまい、悲しむご遺族の姿もありました。このとき、石材の良質さをアピールする業者とエンドユーザーが求めるものの違いを実感しました。良質な国産石材でなくとも、エンドユーザーには、手を合わせる対象物に変わりはありません。

もちろん、昭和の時代に建てられたものが、長い年月を経て倒れることは、仕方のないことかもしれません。ただ、石造物は今も、そしてこれからも建てられていくものです。だからこそ、建築基準法などのような施工基準が必要だと思います。施工基準を整えることが、エンドユーザーにとって安心できるお墓につながり、その評価が業界への信用にもつながるはずです。

話す井比宏育さん

——お墓の施工において、どのような役割を果たしたいですか?

墓じまいに関しては、墓石は産業廃棄物になります。その産業廃棄物を適切に処理するのはお客様ではなく、石材店になります。実際には、元請け業者が下請け業者に依頼することがほとんとです。そうすると、下請け業者が適切に産業廃棄物を処理するための、許可証を取得する必要があります。それを業界に広めるのは、当協会の役割だと思っています。

施工内容を判断基準に

——近年の墓じまいの増加傾向をどのように考えていますか?

子どもが遠方に住んでいる、承継者がいない、高齢になりお墓参りが難しいなど、さまざまな理由から、お墓の維持を負担に感じる方が増えています。こうした社会環境の変化が、墓じまいの増加につながっていると考えています。

ただ、墓じまいは、単にお墓を「撤去する」ことではありません。ご遺骨の新たな供養先を選ぶ、いわば「お墓の引っ越し」です。近年では、納骨堂や合葬墓、樹木葬など、供養の選択肢も大きく広がってきました。こうした新たな選択肢が増えたことも、墓じまいをより身近なものにしている要因の一つだと考えています。

——墓じまいか、お墓の維持か、選択のポイントはありますか?

墓じまいの決断は、ご家族全員でよく話し合うことが大切だと思います。お子さんやお孫さんの中には「お墓を残してほしい」と考えている方がいたり、家族に相談せずに墓じまいをして後悔している方もいらっしゃいます。お子さんやお孫さんも含めて、ご家族でしっかりと相談したうえで決めるのがよいと思います。

話す井比宏育さん

——現在、墓じまいを考えている方へアドバイスをお願いします。

墓じまいをする場合も、お墓を新しく建てる場合も、金額だけではなく「どのような施工・処理を行っているのか」を確認することが大切だと思います。

現在は、相見積もりを取ることが一般的になっています。その際、どのような施工方法を採用しているのか、工事の内容まで確認するということです。たとえば、一式の金額よりも、基礎工事や耐震施工など、項目ごとに金額が提示されていると明確です。また、墓じまいの場合は、撤去した墓石等の処理方法が適切かを確認することも重要です。さらに、必要な資格を取得しているのかなども、業者を選ぶ大切な判断材料になるはずです。

施工内容を業者選びの判断基準の一つにすることで、安心してお墓を建てたり、墓じまいを行ったりすることができ、結果として、より良い供養につながるのではないでしょうか。

【プロフィール】

井比宏育(いび・ひろやす)
全国石材施工協会代表理事
「お墓参りという日本の伝統文化を守る」を掲げ、2015年に設立。石材施工の技術向上と基準化、業界の充実・発展を目指し、適切な施工や廃材処理などの課題に取り組む。埋葬の多様化や建墓数の減少に向き合い、信頼と安心を提供できる石材業界を目指す。

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