閉じる メニュー
葬儀のあと

プロが教える孤独死現場の清掃方法と、遺族が知っておくべき5つのこと

プロが教える孤独死現場の清掃方法と、遺族が知っておくべき5つのこと

孤独死という言葉を見聞きする機会が増えた現代社会。その現場に直面したご遺族や関係者にとって、清掃は心理的にも物理的にも大きな負担となります。この記事では、孤独死現場の清掃における具体的な手順や注意点、そしてご遺族の方々が知っておくべき大切なポイントを専門家の視点でお伝えします。この記事が、皆さまの不安を少しでも軽減し、適切な対処の一助となれば幸いです。

監修者 SUPERVISOR
特殊清掃 藤田 隆次

ブルークリーン株式会社 代表取締役
1992年 東京生まれ。奄美諸島出身の父とメキシコ人の母の間に生まれる。都立雪谷高校を卒業後、IT企業(東証グロース上場企業)やリフォーム業を経て起業。米国バイオリカバリー協会から認定を受けた、日本人唯一のバイオリカバリー技術者。

[資格&修了]
・米国バイオリカバリー協会 公認バイオリカバリー技術者
・全米防疫技術研究所(NIDS)マスターズコース修了認定
・公益社団法人日本ペストコントロール協会 1級技術者

1. 孤独死現場の清掃とは? その背景と特殊性

ブルークリーン株式会社の特殊清掃のイメージ
Photo by b-clean.jp

孤独死現場の清掃は、他の清掃作業とは明確に異なります。その特殊性には、いくつかのポイントがあります。

孤独死の社会的背景

高齢化が進む日本では、一人暮らしの高齢者が増加しており、それに伴い孤独死の件数も増加傾向にあります。内閣府の「高齢社会白書」によると、65歳以上の一人暮らし世帯数は2020年時点で約700万世帯に達しており、2030年にはさらに増加が予想されています。また、警察庁の統計では、孤独死による死亡例が年々増加しており、特に都市部で顕著です。このような背景から、孤独死現場の清掃は社会全体で向き合うべき課題となっています。

参考リンク:高齢者白書2024年度

臭気と汚染物の危険性

孤独死のご遺体が長時間発見されなかった場合、体液や血液が建物に浸透し、通常の清掃では対応が難しくなります。また、これらの汚染物は健康被害を引き起こす可能性もあるため、専門的な知識を持った業者による清掃作業が必要です。

周囲への影響

孤独死のご遺体から発生した汚染が放置されると、臭気や害虫の発生を通じて、隣接する部屋や建物全体に悪影響を及ぼすことがあります。特に集合住宅では、迅速な対応が求められます。

よくある誤解

「遺品整理を先に済ませたい」というご遺族からの相談が少なくありません。しかし、汚染物を適切に除去する作業を先に行わないと、清掃が十分に行えない場合があります。例えば、体液や血液が浸透した床材や壁材は、遺品整理を行った後にさらに被害範囲が広がることもあります。このようなケースでは、清掃が二度手間になり、結果的に費用や時間が余計にかかってしまう可能性があります。そのため、まずは特殊清掃が優先されるべきでしょう。

2. 孤独死現場清掃の流れと使用機材

孤独死現場清掃の流れと使用機材のイメージ
Photo by b-clean.jp

孤独死現場の清掃は以下のようなステップで行われます。

現場調査

孤独死現場の臭気の程度や汚染範囲、建物の状態を詳細に確認します。これにより、適切な作業計画を立てることができます。また、調査段階で建物全体への影響がないかをチェックすることも重要です。

エリアの分割

孤独死現場の作業区域を安全エリア、汚染軽減エリア、汚染が集中しているホットゾーンの3つに分け、安全性を確保します。特にホットゾーンでは厳重な感染症対策が求められます。

汚染物の除去と消毒

ホットゾーン内で孤独死のご遺体から発生した体液や血液などの汚染物を除去し、徹底的な消毒を行います。ここでは、専門的な機材や薬剤を使用し、建物の構造材に浸透した汚染物を取り除きます。

臭気対策と仕上げ

孤独死現場の臭気を取り除くために、湿度や室温の管理、業務用の空気清浄機や専門の洗浄剤を活用します。また、オゾン発生器に過度に依存せず、科学的な方法で臭気の根本原因にアプローチします。

モニタリングと引き渡し

作業終了後、孤独死現場の臭気や衛生状態を再確認し、依頼者へ現場を引き渡します。この段階では、清掃箇所の状況を写真や報告書で詳細に記録し、依頼者が安心できるよう説明します。

3. 孤独死現場清掃を行うメリット

孤独死現場清掃を行うメリットのイメージ
Photo by b-clean.jp

衛生環境の回復

孤独死のご遺体から発生した体液や汚染物質を徹底的に除去し、安全で清潔な空間を取り戻します。特に長期間放置された孤独死現場では、汚染が建物の深部にまで浸透している場合があるため、専門の技術と機材を有する清掃業者によって、目に見えない菌やウイルスを除去する作業が有効な手段となります。また、清掃業者によっては作業後の衛生管理におけるアフターサポートを受けることができます。

心理的負担の軽減

孤独死現場の清掃を専門業者に任せることで、ご遺族は相続手続きや遺品整理に集中できます。また、孤独死現場の清掃は汚染や臭気の激しい現場も多く、ご遺族が自ら作業を行うことが心理的にも身体的にも困難な場合が多いです。専門業者に依頼することで、故人との思い出を整理する時間に集中できる環境を整えられます。さらに、専門業者が提供する作業報告書や写真は、保険請求や法律上の手続きにも役立つため、安心感が得られます。

周囲への影響の最小化

腐敗臭や害虫の発生を抑え、孤独死現場の近隣住民への迷惑を防ぎます。特に集合住宅では、臭気や害虫が他の部屋に広がることで、近隣住民とのトラブルに発展することも少なくありません。専門業者が適切に対応することで、建物全体への影響を最小限に抑えることが可能です。また、清掃後には空気清浄機や除湿機を活用して、臭気や湿気を取り除き、住環境を早期に回復させるアフターサービスを提供する専門業者もあります。

4. ご遺族が知っておくべき5つのこと

孤独死現場の清掃についてご遺族が知っておくべき5つのことのイメージ

1. 事前準備

孤独死現場の清掃作業を進めるには、警察からの許可や鍵の引き渡しなどが必要です。例えば、事件性が疑われる場合は、警察の捜査が終わらなければ清掃に入れないこともあります。また、警察や不動産管理会社との連携が必要になるため、事前にスケジュール調整を行い、必要な手続きについて確認することが重要です。さらに、近隣住民への配慮も、トラブルを避けるために必要です。

2. 清掃作業にかかる日数

孤独死現場の汚染が軽度であれば清掃作業が1日で完了することもありますが、被害が大きい場合は数週間から1ヵ月程度かかることもあります。たとえば、孤独死のご遺体から発生した体液や血液が建物の深部に浸透している場合、汚染部分を撤去し、新たな建材を導入する必要があるケースもあります。また、清掃後に臭気が残っている場合は、追加の消臭作業が必要になることもあります。状況に応じてスケジュールを柔軟に調整する心構えが求められます。

3. 費用の確認

孤独死現場の清掃費用は作業内容により異なりますが、多くの場合、20万円から50万円が目安です。この費用には、汚染物の除去、消毒、消臭、さらには必要に応じた建材の撤去や交換が含まれます。ただし、安価な清掃業者の場合、適切な処理が行われず、結果として再依頼が必要になるケースも少なくありません。依頼前に見積もりの内訳をしっかり確認し、不明点があれば質問することをおすすめします。

4. 法律や規制の確認

孤独死現場の清掃には、法的な手続きが関わる場合があります。例えば、相続放棄を検討している場合、不動産や動産を動かす前に専門家への相談が必要です。また、原状回復のガイドラインや廃棄物処理法に基づいた適切な処理が求められます。不明点がある場合は、法律の専門家や信頼できる清掃業者に相談することでトラブルを回避できます。

5. 孤独死現場の清掃業者選びのポイント

信頼できる清掃業者を選ぶ際には、以下のポイントを押さえることが重要です。

孤独死現場の清掃業者選びのポイント

  • 実績や口コミ:過去の作業実績や口コミをチェックし、清掃業者の信頼性を見極めましょう。特にGoogleのレビューなどは参考になります。
  • 認定資格:例えば、感染症対策や消臭技術に関する資格を持っている清掃業者であれば、より安心して依頼できます。
  • 透明性のある見積もり:見積もりの内訳が明確で、追加費用が発生する可能性についても説明がある清掃業者を選びましょう。
  • 対応の丁寧さ:電話やメールでの問い合わせ時に、親切で丁寧に対応してくれる清掃業者であれば信頼しやすいです。

選ぶ清掃業者によって、孤独死現場の清掃作業の品質や結果が大きく異なるため、慎重に検討することをおすすめします。

5. 孤独死現場の清掃業者選びの注意点

孤独死現場の清掃業者選びの注意点のイメージ

品質の違いに注意

低品質な作業では問題が解決せず、再依頼が必要になることがあります。一度で適切に解決できる清掃業者を選ぶことが重要です。たとえば、オゾン発生器に過剰に依存するだけの作業では、一時的に臭気が改善されたように見えても、根本的な汚染が除去されていないケースがあります。高度な技術を有する清掃業者は、物理的な汚染除去と化学的な除菌を適切に組み合わせるため、臭いの再発リスクを大幅に減らせます。

また、作業後に実施した内容を作業報告書として提供してくれる清掃業者は信頼性が高い傾向にあります。この報告書には、使用した薬剤や機材、作業範囲、作業前後の状況などが記載されていることが一般的です。

対応の透明性

作業内容や使用する薬剤、費用について、詳細に説明してくれる清掃業者を選ぶことが安心につながります。たとえば、見積もりの段階で、具体的な作業工程を丁寧に説明してくれる清掃業者は、依頼者が安心して任せられます。特に、「どの部分にどのような費用がかかるのか」を明確にし、追加料金が発生する場合の条件を事前に伝える清掃業者は信頼性が高いと言えます。

さらに、初回の問い合わせ時点での対応も重要です。不明点や不安を丁寧に解消してくれる清掃業者は、顧客との信頼関係を築く意識が高い証拠です。

盗難防止の徹底

特殊清掃では、貴重品や遺品の管理が求められる場面が多々あります。信頼できる清掃業者は、作業中に遺品や貴重品が紛失しないような対策を講じています。たとえば、作業エリアの明確な区分けや、作業前後での状況写真の記録、依頼者への逐一の報告などが挙げられます。これにより、依頼者が安心して作業を任せられる環境が整います。

認定資格や専門性の確認

清掃業者が感染管理や消臭技術に関する認定資格を持っているかどうかを確認することも、選択の重要なポイントです。資格を持つ清掃業者は、作業工程や使用する薬剤について最新の知識を備えており、安全かつ効果的な清掃を提供できます。

6. まとめと適切な対応の重要性

孤独死現場の清掃についてのまとめと適切な対応の重要性

孤独死現場の清掃は、ご遺族や関係者にとって感情的にも負担が大きいものです。しかし、適切な清掃を行うことで、現場の衛生状態を保つだけでなく、心の整理を進めるきっかけにもなります。専門業者への依頼を検討する際は、この記事のポイントを参考にしていただければ幸いです。適切な対応が、ご遺族にとって安心と新たな一歩を提供するものとなるでしょう。

SHARE この記事をSNSでシェアする